福市恵子

フリーランス ゲーム翻訳者(英→日)。翻訳作品は、UNDERTALE、DELTARUN…

福市恵子

フリーランス ゲーム翻訳者(英→日)。翻訳作品は、UNDERTALE、DELTARUNE、HADES、Return of the Obra Dinn、198X、Slime Rancher、Enter the Gungeon、My Friend Pedroなど。

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  • Too Ray, Zoo Ray

    ツレヅレナルママニ。

  • らくがき

    "らく描き”と、"らく書き”。

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固定された記事

担当したお仕事

これまでに担当したお仕事を全部まとめてある場所がどこにもなかったので、プロフィール固定記事としてリストアップしました。 言及許可をいただいているもののみ掲載して…

福市恵子
2年前
21

かなしみ五七五

ボケてみた ツッコミはやく ねえ だれか また割った 食器は基本 消耗品 かなしいと 思えてるうちは まだ平気

福市恵子
1年前
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架空都市伝説

3月3日の午前3時33分、新代田の駅の近くにある羽代橋に立って線路を見ていると、誰かが耳にフーッと息を吹きかけてくる。 まわりを見ても、誰もいない。 それから33分間、…

福市恵子
1年前
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仕事の素材が遅れているので、いまのうちになかなか行けない癒しスポット訪れる。 #新宿は平日の昼間しか行けない #人混みムリ人間

福市恵子
1年前
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住宅街の散歩が好き。色も形も大きさもバラバラな、たくさんの家、家、家。そのひとつひとつの中で、それぞれに違った壮大な物語が進行している。本棚にならんだ本みたいに、手にとって読めたら…読んでも読んでも読み尽くせない!
考えただけで楽しくなる。

福市恵子
1年前

今日も仕事前に、歩いて[好きな町]へ。お気に入りのパンと、カレーをテイクアウトして帰る。
たったそれだけのこと、地面をたどった先に、[好きな町]があるということが、心をちゃんとあるべき場所に落ち着けてくれる。

福市恵子
1年前
4

出会わなければよかった出会いなんてない。

今なら、まだ間に合う。今を逃せば、二度とない。それでも私は、動けない。そのあとに確実に訪れる痛みへの恐怖が、私の足をすくませる。 その痛みごと受け入れて、ただい…

福市恵子
1年前
6

フクイチ、3歳時の「創作物」

最近ポツポツ投稿している「らく”書き”」のほうは、大半の制作年月日がさっぱりわからない。なんだかよくわからない紙切れのはじっこに、適当に書き殴ってあったものもあ…

福市恵子
1年前
6

1年前の「らく描き」と、いつ書いたのかわからない「らく書き」

よろしければ、こちらもどうぞ。

福市恵子
1年前
4

ボクたちはみんな、ボンジョヴィの胸毛で大人になれた。

その日、下北沢のど真ん中で私は、30年弱の時をさかのぼろうとした。 比喩的に、ではなく、本当に。30年弱前の自分の前にシュタッ! と現れて、思いっきりハグしてやりた…

福市恵子
1年前
10

傷つくのが怖い私たちは。

ただまっすぐに言えば、好き。でも、それだけではすまされない翳りを含んでいる。 なぜ手放しに、ただ好きだと言えないのか。 その理由は、彼らの「回転の速さ」に起因して…

福市恵子
1年前
12

1年ぐらい前の「らく描き」と、2年ぐらい前の「らく書き」

最終列車の去ったホームで 見えない光を待っている 何かをつなぎとめようとするように あたたかな場所で朝を待つより 遠くの街を想っている このままずっと 深く冷たい…

福市恵子
1年前
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福市恵子ができるまで。(中三編)

ゲームを翻訳して暮らす福市恵子(設定年齢19歳)は、どのような過程をへてできあがったのか、という話をしている。 前回は、厨二属性極振りで生きていたリアル中学二年生…

福市恵子
2年前
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福市恵子ができるまで。

ゲームの翻訳、という仕事をして、暮らしている。 この暮らしを始めて、どうやら今年で18年目に突入するらしい。 なんということでしょう。設定年齢19歳なのに。 ぼやぼや…

福市恵子
2年前
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“Despite everything, it's still you”

今から約5年前、私は、ある1本のゲームを翻訳した。 それは、その後の私の人生を、大きく変えることになる出来事だった。 ローカライズ作業が進行中だった当時のことを振…

福市恵子
2年前
50

大好きなものが、消えていくこと。

下北沢の、ごちゃーっとしたところが好きだ。 その下北沢の、ごちゃーっとしたところが、どんどん消えはじめて久しい。 数週間ぶりにカレーをテイクアウトしに出かけたら…

福市恵子
2年前
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担当したお仕事

担当したお仕事

これまでに担当したお仕事を全部まとめてある場所がどこにもなかったので、プロフィール固定記事としてリストアップしました。
言及許可をいただいているもののみ掲載しております。
※ カッコ内は(開発元/リリース日/ローカライズエージェント)

-『チコリー 色とりどりの物語』翻訳・実機テスト(Greg Lobanov 他/2023年5月30日/ハチノヨン)

-『RAKUEN』『サイトウさん』翻訳・実機

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かなしみ五七五

かなしみ五七五

ボケてみた
ツッコミはやく
ねえ だれか

また割った
食器は基本
消耗品

かなしいと
思えてるうちは
まだ平気

架空都市伝説

架空都市伝説

3月3日の午前3時33分、新代田の駅の近くにある羽代橋に立って線路を見ていると、誰かが耳にフーッと息を吹きかけてくる。
まわりを見ても、誰もいない。

それから33分間、同じ場所にずっと立っていると、今度は耳元で、

「おまえは、ひとり」

と、声がする。

生まれてからこの時点までに33人以上の人間を傷つけた者は、その声を聞いて33秒後に存在が消える。

人数のカウントには、無自覚に傷つけた人も

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住宅街の散歩が好き。色も形も大きさもバラバラな、たくさんの家、家、家。そのひとつひとつの中で、それぞれに違った壮大な物語が進行している。本棚にならんだ本みたいに、手にとって読めたら…読んでも読んでも読み尽くせない!
考えただけで楽しくなる。

今日も仕事前に、歩いて[好きな町]へ。お気に入りのパンと、カレーをテイクアウトして帰る。
たったそれだけのこと、地面をたどった先に、[好きな町]があるということが、心をちゃんとあるべき場所に落ち着けてくれる。

出会わなければよかった出会いなんてない。

出会わなければよかった出会いなんてない。

今なら、まだ間に合う。今を逃せば、二度とない。それでも私は、動けない。そのあとに確実に訪れる痛みへの恐怖が、私の足をすくませる。
その痛みごと受け入れて、ただいっときの幸福を永遠にいつくしんで生きてゆく強さが、自分にあったら……



















そのサンドイッチの店にひそかに思いをよせるようになって、もうどれぐらいになるだろう。出会いはたし

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フクイチ、3歳時の「創作物」

フクイチ、3歳時の「創作物」

最近ポツポツ投稿している「らく”書き”」のほうは、大半の制作年月日がさっぱりわからない。なんだかよくわからない紙切れのはじっこに、適当に書き殴ってあったものもある。先日投稿した「夢の屍うんたら」なんて、もはや何を思って書いたのかすら覚えていない。

しかし今回のにいたっては、書いた覚えすらない。というか、書いてない。
3歳ごろ(?)の私が突然口走ったものを、母があわてて書き止めたもの……らしい。

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ボクたちはみんな、ボンジョヴィの胸毛で大人になれた。

ボクたちはみんな、ボンジョヴィの胸毛で大人になれた。

その日、下北沢のど真ん中で私は、30年弱の時をさかのぼろうとした。
比喩的に、ではなく、本当に。30年弱前の自分の前にシュタッ! と現れて、思いっきりハグしてやりたかった。

もちろん、そんなことは、この世に「電話レンジ(仮)」があってもムリだ。あの装置の仕組みでは、過去の自分自身に会うことはできない。それ以前に、過去の自分と鉢合わせするととてもマズいことになると、クリストファー・ロイドも言ってい

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傷つくのが怖い私たちは。

傷つくのが怖い私たちは。

ただまっすぐに言えば、好き。でも、それだけではすまされない翳りを含んでいる。
なぜ手放しに、ただ好きだと言えないのか。
その理由は、彼らの「回転の速さ」に起因している。




私がコンビニのアイスに抱く想いは複雑だ。
先日も、こんなことがあった。
買い物帰りに入った近所のセブン。ひときわ目を引くその子は、アイスクリームの並ぶショーケースの中にいた。

「フランボワーズマカロンアイス」。お値段

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1年ぐらい前の「らく描き」と、2年ぐらい前の「らく書き」

1年ぐらい前の「らく描き」と、2年ぐらい前の「らく書き」



最終列車の去ったホームで
見えない光を待っている
何かをつなぎとめようとするように

あたたかな場所で朝を待つより
遠くの街を想っている
このままずっと 深く冷たい夜のなかで

すべてが逆を示してて
月も 人も 時の流れも
きっと心もわかってて
それもいいと 濁りをのみくだす

心をつぶして夜空にまいたら
嘘でも星が見えるだろうか
心を殺して吐息に混ぜたら
あなたの瞳は輝くだろうか

(202

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福市恵子ができるまで。(中三編)

福市恵子ができるまで。(中三編)

ゲームを翻訳して暮らす福市恵子(設定年齢19歳)は、どのような過程をへてできあがったのか、という話をしている。

前回は、厨二属性極振りで生きていたリアル中学二年生までのお話をした。
続きとなる今回は中学三年生からの話になるが、その直前、中二の一月に、ある事件が起きた。
私がそもそも英語にハマるきっかけとなったバンド「X」から、ベーシストにして私の将来の結婚相手(in my 妄想)だったTAIJI

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福市恵子ができるまで。

福市恵子ができるまで。

ゲームの翻訳、という仕事をして、暮らしている。
この暮らしを始めて、どうやら今年で18年目に突入するらしい。
なんということでしょう。設定年齢19歳なのに。
ぼやぼやしてると、生まれる前から仕事してたことになってしまう。
「前世での分も入れてます」という言い分も通らない。われわれの前世にデジタルゲームを翻訳するなんていう仕事がなかったことは、みんなにバレている。
なんとかしないとマズい。

とはい

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“Despite everything, it's still you”

“Despite everything, it's still you”

今から約5年前、私は、ある1本のゲームを翻訳した。
それは、その後の私の人生を、大きく変えることになる出来事だった。

ローカライズ作業が進行中だった当時のことを振り返ってみると、どうにも現実感がない。自分がやったことだとわかっているけれど、なんとなく、別の世界の自分がやったことのような…… いや、単に5年も前のことだから、記憶が薄れているだけ? ……うん、たぶんそうですね。

でも、そのあと起こ

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大好きなものが、消えていくこと。

大好きなものが、消えていくこと。

下北沢の、ごちゃーっとしたところが好きだ。
その下北沢の、ごちゃーっとしたところが、どんどん消えはじめて久しい。

数週間ぶりにカレーをテイクアウトしに出かけたら、ごちゃっと具合がいちばん好きだった一角も、ついに「工事中の区画のまわりに立てられるあの白い仕切り板」で、スッキリキッチリ囲われてしまっていた。

町は、どんどん変わっていく。
私がどれだけ熱苦しく「大好きだ!」と一方的な想いを主張したと

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