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ルソー『社会契約論』を読む

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過去に執筆した記事のうち、『社会契約論』の紹介をした記事がまとめてあります。
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#政治

ルソー『社会契約論』を読む(14)

ルソー『社会契約論』を読む(14)

 さて、今回からは第四篇。『社会契約論』もいよいよラストスパートです。さっそく読んでいきましょう。

一般意志は破壊できない ここで言われる意志、それは「一般意志」です。この点はもう大丈夫でしょう。ここまでルソーを読んできた人なら、わかるはずです。

 一般意志だけが支配する国家。そこでは、国家のあらゆる原動力は活気に満ちて単純で、国家の格率は明快であり、光り輝いています。そこに利害の対立や矛盾は

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ルソー『社会契約論』を読む(11)

ルソー『社会契約論』を読む(11)

 今回は、第三篇第八章から。以前紹介したことがある引用から始めます。

「絶対的」ではありえない 政府は、これが最善の政府だ、というような形態は実は存在しない、と言うことがここで言われています。

 しかし、前回の記事で、民主政、貴族政、君主政の三つのうち、選挙による貴族政が「最良だ」と言っていたではないか、と思われる方もいるかもしれません。鋭い。でも、まだ甘い。ルソーは、「良い」とか「悪い」とい

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ルソー『社会契約論』を読む(号外)
ルソーにおける「執行権」の概念とその所在

ルソー『社会契約論』を読む(号外) ルソーにおける「執行権」の概念とその所在

以前書いた記事の中で、とあるコメントをいただきました。そのコメントは、「ルソーにおいて「執行権」という概念はあるのか?」という内容。

 こうして私の書いた記事にコメントを頂けるだなんて・・・と嬉しく思っています。と同時に、いただいたコメントが上記のような「質問」でしたので、今回はその質問に対して、私の知りうる限りでお答えする、という回にしたいと思います。

 いつも記事を読んでくださっている方々

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ルソー『社会契約論』を読む(7)

ルソー『社会契約論』を読む(7)

 今回の記事では、第二篇第八章以降を扱います。この第八章、次の第九章、そしてさらに第十章は、いずれも「人民について」という同じ章立てで構成されています。まず、ルソーはこんな風に言います。

人民についてというのも、建築家と同様、法律を制定する際にも、それ自体として申し分ない完璧な法律を編纂することから始めるのではなく、あらかじめそれを与えようとしている人民が、それを支えるに相応しいかどうか吟味する

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ルソー『社会契約論』を読む(5)

ルソー『社会契約論』を読む(5)

 前回の記事では、以下の2点が明らかにされました。

今回は、この二つをふまえてさらに明らかになることを、まずはじめに紹介することから始めます。

一般意志は常に正しい しかし、ここにはある問題があります。その問題とは、たとえ一般意志が常に正しいとしても、人民の議決が常に同じように公正であるということにはならない、という問題です。なぜ、このような矛盾が起こるのでしょうか。それは、「人はつねに自分の

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