飄々図書室

毒にも薬にもならない読み物を書きます。ノンフィクションかもしれないしフィクションかもし…

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毒にも薬にもならない読み物を書きます。ノンフィクションかもしれないしフィクションかもしれないです。薬になれば嬉しいと思います。

記事一覧

2024年8月15日(木)〜29日(木)の日記(からあげ、激辛、あついなみだがぶわーーってこぼれおちたよ)

8月15日(木) 本日の日記 8月は毎日日記でも付けようと思って既に15日が過ぎてしまったのであり、本日から日記を付けていくものである。 8月16日(金) 床屋の植物 髪を切…

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通夜に行ってきた話(暗い話ではない|2024年7月11日の日記)

社長が亡くなった、とLINEが来たため、そのLINEをスクリーンショットして友人Aに送信した。友人Aというのはきわめてレスポンスが早く、通常は既読が付いてから15秒とか30秒…

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1か月前
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短文4篇(読書感想文『太宰治』を読んで|MMORPGを始めてやめた話|とんかつ屋のビール|eスポーツ)

読書感想文『太宰治』を読んでわたしは夏休みに『太宰治』を読みました。この本の表紙と背表紙には「走れメロス」という副題も付いていました。きっとこの物語の主人公であ…

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2か月前
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「飲みに行かない?」と彼女は言った。(2024年5月24日の日記)

「飲みに行かない?」と彼女は言った。手元に置いたばかりの仰向けのスマートフォンが光り、それはおそらく誰かからのメッセージを知らせるものであると思われたが、彼女が…

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3か月前
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『応答』の感想 #文学フリマ東京38

大玉代助氏 「僕たち」を抱きしめて さやわか論『応答』という名称の同人誌に収録されている最初の文章に相応しく、明確に何かに「応答」している文章である。その「何か…

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3か月前
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ずれ落ちる靴下、ドイツのリキュール、ただ唐揚げが食べたいだけなんだけどな(2024年4月15日の日記)

自転車に乗り、15分で駅に着いた。自宅から駅までは自転車で15分かかることがこれまでの経験でわかっていたので、つまりは正常に駅に到着したということだ。異変を見つけた…

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4か月前
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ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』第1部1〜2章(多弁な友人から電話がかかってきた感じの)

1おーう、おつかれー。いま大丈夫? 寝てた? あのさ、たいしたことじゃないんだけど、いや、たいしたことではあるんだけど、ニーチェってやつ知ってる? そうそう、で…

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5か月前
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約1週間禁酒日記

Q&AQ:いつからいつまで? A:2024年2月11日から、これを書いている現在進行系で。 Q:どうして? A:何だか体調が悪いような気がしたので。 Q:どうなった? A:体調は…

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6か月前
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ラーメン、服、ショッピングモールはしご旅(2023年1月22日の日記)

我が街の冬は西の山々からの強烈な風が吹き付け、足での歩行や自転車での走行がきわめて困難になることになっているのだが、その日は珍しく風が穏やかであった。天気予報ア…

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7か月前
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健康的な食生活──めかぶ、もずく酢、ヨーグルト、うどん、キムチ納豆、コーヒー豆

近頃の私の健康的な食生活は下記である。第1章ではめかぶを、第2章ではもずく酢を、第3章ではヨーグルトを、第4章ではうどんを、第5章ではキムチ納豆を、第6章ではコーヒー…

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8か月前
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クローバー型ジャンクション、羊と狼、ここではないどこか(2023年11月11日の帰路の日記)

私の30mほど前に一人の男性が、私の20mほど後ろに一人の女性が、私の0m地点に私が、それぞれ同じ方向に歩行していた。イベント会場を出て、一般的には公共交通機関で帰路に…

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9か月前
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目覚めのよい朝、腸内環境、「ばかやろう」おじさん(2023年8月23日の日記)

午前6時に目覚め、きわめて目覚めのよいことにすぐに気がついた。私は元より寝起きが悪く、特にアルバイトのために早起きをしなければならない毎週日曜日は目覚めてからも…

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10か月前
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「桜楽めこるがVTuberをやめる」(第二回イロカワ文学賞応募作)

 桜楽めこるがVTuberをやめる。俺はめこるを殺すことにした。  俺にとってめこるは唯一の光だ。めこるに出会って約二年、その思いは今でも変わらない。誰にも負けない時…

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11か月前
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『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』読書感想

『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』(宇都宮直子、 小学館新書、2022年)を読んだ。  エピソードの一つとして、担当のホストに「死ね」と言われて自…

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歯痛日記2023年初夏

某月某日 朝起きると、歯が痛いのに気付いた。右下の最奥歯がかなり痛く、おそらくは痛みで目が覚めたのだと思われた。私は毎朝起床したらそうしているようにAKRacingのチ…

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2023年上半期に読んでおもしろかった本の感想(読んだ順)

『銭湯』福田節郎第4回ことばと文学賞受賞作。待ち合わせ場所に待ち合わせた人が来なくて、代わりに来た知らない人と酒を飲み始め、次々と集まって来る知らない人たちと酒…

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2024年8月15日(木)〜29日(木)の日記(からあげ、激辛、あついなみだがぶわーーってこぼれおちたよ)

2024年8月15日(木)〜29日(木)の日記(からあげ、激辛、あついなみだがぶわーーってこぼれおちたよ)

8月15日(木) 本日の日記

8月は毎日日記でも付けようと思って既に15日が過ぎてしまったのであり、本日から日記を付けていくものである。

8月16日(金) 床屋の植物

髪を切りに行っているヘアーサロンに大きな植物がたくさん置いてある。私の身長をゆうに超える背丈のバナナの葉みたいな植物を指して、「この植物すごいっすね」と私は髪を切るお兄さんに言った。お兄さんは髪がボッサボサの時もあれば、逆に丸

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通夜に行ってきた話(暗い話ではない|2024年7月11日の日記)

通夜に行ってきた話(暗い話ではない|2024年7月11日の日記)

社長が亡くなった、とLINEが来たため、そのLINEをスクリーンショットして友人Aに送信した。友人Aというのはきわめてレスポンスが早く、通常は既読が付いてから15秒とか30秒とかで返信が来ることになっているが、この度は5分ほどして「まじか、まだ若かったよね」との返信があった。程なくして「俺、お通夜だけ行こうと思う」と追ってメッセージが来、そこで私は、人が亡くなった際にはお通夜というイベントが催され

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短文4篇(読書感想文『太宰治』を読んで|MMORPGを始めてやめた話|とんかつ屋のビール|eスポーツ)

短文4篇(読書感想文『太宰治』を読んで|MMORPGを始めてやめた話|とんかつ屋のビール|eスポーツ)

読書感想文『太宰治』を読んでわたしは夏休みに『太宰治』を読みました。この本の表紙と背表紙には「走れメロス」という副題も付いていました。きっとこの物語の主人公である太宰治さんがメロスを応援する強い気持ち、それが表紙に念写されたのでしょう。誰が書いた話なのかはわかりません。作者不詳の民話のようなものなのでしょうか。

いきなりメロスは怒っていました。わたしが最近怒ったのは、お母さんが冷蔵庫のアイスを食

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「飲みに行かない?」と彼女は言った。(2024年5月24日の日記)

「飲みに行かない?」と彼女は言った。(2024年5月24日の日記)

「飲みに行かない?」と彼女は言った。手元に置いたばかりの仰向けのスマートフォンが光り、それはおそらく誰かからのメッセージを知らせるものであると思われたが、彼女がそれに反応してスマートフォンを手に取ることはなかった。「殴ってくんない? 記憶を消したい」と彼女は言った。私は人を殴ったことはないし、殴りたいと思ったこともないし、今後も殴ることはないと思われ、その旨を伝えた。「だよね」と彼女は言った。

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『応答』の感想 #文学フリマ東京38

『応答』の感想 #文学フリマ東京38

大玉代助氏 「僕たち」を抱きしめて さやわか論『応答』という名称の同人誌に収録されている最初の文章に相応しく、明確に何かに「応答」している文章である。その「何か」というのは、本文によれば、「現在」にである。現在に応答するためにまず参照されるのが、「早稲田大学負けヒロイン研究会『Blue Rose』vol.3「特集:10年代」」と「米原将磨『批評なんて呼ばれて』」である。前者が10年代特集と謳いなが

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ずれ落ちる靴下、ドイツのリキュール、ただ唐揚げが食べたいだけなんだけどな(2024年4月15日の日記)

ずれ落ちる靴下、ドイツのリキュール、ただ唐揚げが食べたいだけなんだけどな(2024年4月15日の日記)

自転車に乗り、15分で駅に着いた。自宅から駅までは自転車で15分かかることがこれまでの経験でわかっていたので、つまりは正常に駅に到着したということだ。異変を見つけたら引き返さなければならないから、正常に到着できてよかった。駅に来たのは駅にある商業施設で靴下を購入するためであった。

去る2024年1月6日、私はAmazon.co.jpにおいて、10足で1,512円の靴下を購入した。長さがくるぶし下

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ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』第1部1〜2章(多弁な友人から電話がかかってきた感じの)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』第1部1〜2章(多弁な友人から電話がかかってきた感じの)

1おーう、おつかれー。いま大丈夫? 寝てた? あのさ、たいしたことじゃないんだけど、いや、たいしたことではあるんだけど、ニーチェってやつ知ってる? そうそう、でさ、俺すげーことに気付いたんだけどさ、えいようかいきってあんじゃん? え? 永劫回帰? あーそれそれ。それなんだけど、わけわかんなくね? 俺ニーチェの本100冊くらい読んで考えたんだけどさ、それでも全然わかんなくて、たぶん誰もわかんないんじ

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約1週間禁酒日記

約1週間禁酒日記

Q&AQ:いつからいつまで?
A:2024年2月11日から、これを書いている現在進行系で。

Q:どうして?
A:何だか体調が悪いような気がしたので。

Q:どうなった?
A:体調は明らかによくなった。日中にぼんやりすることもどんよりした気分になることもなくなった。布団を干したり、部屋の片付けをしたり、前向きな何かをするようになった。それと決断が速くなったようにも思う。

Q:あとは?
A:体重が

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ラーメン、服、ショッピングモールはしご旅(2023年1月22日の日記)

ラーメン、服、ショッピングモールはしご旅(2023年1月22日の日記)

我が街の冬は西の山々からの強烈な風が吹き付け、足での歩行や自転車での走行がきわめて困難になることになっているのだが、その日は珍しく風が穏やかであった。天気予報アプリによれば1〜2m/sの風との事だ。いつもは5〜8m/sくらいなので、ほとんど無風と言っていい。

新たにオープンしたラーメン屋に行こうと思った。あの人気のラーメン屋がついに我が県にオープン、という触れ込みを耳にしていた。13時。私は自転

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健康的な食生活──めかぶ、もずく酢、ヨーグルト、うどん、キムチ納豆、コーヒー豆

健康的な食生活──めかぶ、もずく酢、ヨーグルト、うどん、キムチ納豆、コーヒー豆

近頃の私の健康的な食生活は下記である。第1章ではめかぶを、第2章ではもずく酢を、第3章ではヨーグルトを、第4章ではうどんを、第5章ではキムチ納豆を、第6章ではコーヒー豆を、それぞれ紹介していく。人の体はその人が食べたものでできていると言われているが、もしそれが本当だとしたら──。早速見ていこう。

1. めかぶめかぶという食べ物がかなり好きだが、めかぶという食べ物がかなり好きなことをすっかり失念し

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クローバー型ジャンクション、羊と狼、ここではないどこか(2023年11月11日の帰路の日記)

クローバー型ジャンクション、羊と狼、ここではないどこか(2023年11月11日の帰路の日記)

私の30mほど前に一人の男性が、私の20mほど後ろに一人の女性が、私の0m地点に私が、それぞれ同じ方向に歩行していた。イベント会場を出て、一般的には公共交通機関で帰路に着くことになっているが、私は何だか歩きたい気分だったのでぶらぶらと徒歩でなんとなく都心の方向に歩行しており、当該男性と当該女性が私と同じ考えだったかはわからないが、とにかくイベント会場を出て公共交通機関を利用することなくぶらぶらと歩

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目覚めのよい朝、腸内環境、「ばかやろう」おじさん(2023年8月23日の日記)

目覚めのよい朝、腸内環境、「ばかやろう」おじさん(2023年8月23日の日記)

午前6時に目覚め、きわめて目覚めのよいことにすぐに気がついた。私は元より寝起きが悪く、特にアルバイトのために早起きをしなければならない毎週日曜日は目覚めてからも「起きたくないよー! バイト行きたくないよー!」と絶叫しながら支度をすることになっていた。バイトが嫌なわけではなく、ただただ眠いのである。しかし、なんだ今日は。なんだこの目覚めのよさは。私は布団の中で「早く起きたい! 早くバイトに行きたい!

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「桜楽めこるがVTuberをやめる」(第二回イロカワ文学賞応募作)

「桜楽めこるがVTuberをやめる」(第二回イロカワ文学賞応募作)

 桜楽めこるがVTuberをやめる。俺はめこるを殺すことにした。

 俺にとってめこるは唯一の光だ。めこるに出会って約二年、その思いは今でも変わらない。誰にも負けない時間をめこるに費やしてきた。桃色で肩よりも少し長めの髪。向かって左の耳の上後方辺りにはまるまるっと髪がお団子状になったものがあるが、物理的にどうすればああなるのか、男の俺にはよくわからない。まあ、二次元のキャラだし、それがトレードマー

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『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』読書感想

『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』読書感想

『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』(宇都宮直子、 小学館新書、2022年)を読んだ。

 エピソードの一つとして、担当のホストに「死ね」と言われて自殺未遂をしてしまう女性の顛末が描かれていた。そのホストは新宿歌舞伎町でもトップレベルのホストクラブの人気ホストであった。

 ホストクラブにおける接客マニュアルみたいなものを見かけたことがある。 ゴリッゴリの拝金主義で、いかに客から

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歯痛日記2023年初夏

歯痛日記2023年初夏

某月某日
朝起きると、歯が痛いのに気付いた。右下の最奥歯がかなり痛く、おそらくは痛みで目が覚めたのだと思われた。私は毎朝起床したらそうしているようにAKRacingのチェアに座り、いつもだったらコーヒーを淹れるところを、その日は動かずに座ったまま歯痛に集中した。痛みをあるがままに感じ、それがどのような痛みか、それは本当に痛みと呼べるものか、その痛みに対してどのように対処すべきかを丹念に分析した結果

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2023年上半期に読んでおもしろかった本の感想(読んだ順)

2023年上半期に読んでおもしろかった本の感想(読んだ順)

『銭湯』福田節郎第4回ことばと文学賞受賞作。待ち合わせ場所に待ち合わせた人が来なくて、代わりに来た知らない人と酒を飲み始め、次々と集まって来る知らない人たちと酒を飲み続ける二日間の話。事件らしい事件は特に起こらず、ずっとだらだらと酒を飲んでいる。特にメッセージ性があるわけでもないけれど、本文から引用すれば「そうやっていつまでもいつまでもいつまでもいつまでも、大事なことと、大事な人と面と向かわないで

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