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2021年8月の記事一覧

我が家の守り神

我が家の守り神

お日様が長めの夏休みをとっていたから

帳尻合わせの残暑 蒸し風呂のような熱帯夜

ぬるま湯に浸かろうと風呂場に向かうと

洗濯機の白壁に張り付いたのは家守殿

突然の蛍光灯に右往左往

物陰にすすすとお隠れになる

我が家を守っていただくお方ゆえ

ずっと家内にいていただいても構わぬが

洗濯機の中にお隠れになると

渦潮に巻かれる恐れがござる

くれぐれもご注意召されませ

星の種ー8月の星々ー

星の種ー8月の星々ー

昔、北の森には、毎年夏の終わりに、たくさんの星が降った。

人々は星を集めて豊かな黒土の畑に蒔いた。

その種はたちまち芽吹き 

すくすくと育ち鮮やかな花を咲かせると

たくさんの小さな実をつけた。

すすきを揺らす風がそよと吹く頃 

その実は風に乗って勢いよく空に舞い上がり

そのまま輝く星になった。

背伸びし過ぎたスティックセニョール

背伸びし過ぎたスティックセニョール

秋冬野菜に向けてあれこれ走る秋立つ頃

畑の土を養生し植える種苗も万端準備

そこに来たのは時忘れの冷えと長雨

芽吹いたばかりの若い双葉が

太陽恋しと光を求め右へ左へ背伸びする

絵に描いたような徒長苗

これじゃしっかり育たない

好天を待って播き直しだがここから先は季節が早い

収穫時期から逆算すれば残り時間は長くない

降れよ晴よと恐縮ながら

今しばらくは日差し溢れる毎日を

我がはら

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秋のガーデンプレート

秋のガーデンプレート

大汗をかきながら鍬を振り

畑の土の夏休みを準備して

木陰で次の育苗を始めた途端

季節外れの長雨と異常な低温

よろず自然相手のものごとは

思い通りには進まない

どんなに力を込めようと

天気と泣く子にゃ敵わない

気を取り直して深呼吸

ブルーシートを部屋に敷き

畠の名札をリフレッシュ

泥を落としてきれいに拭いて

掠れた夏野菜の名前の上に

新しいペンキを重ね塗り

元気な黄色のプ

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赤紫蘇の軽食セット

赤紫蘇の軽食セット

お待たせいたしました。

こちらが、夏限定・赤紫蘇の軽食セットでございます。

簡単にメニューをご説明させていただきますね。

まずはこちらのおにぎり。

のりの代わりに塩漬けした赤紫蘇で巻いてございます。

いい塩梅になっておりますので、具はなしです。

添えてありますのは、自家製の柴漬けです。

浅漬けにした胡瓜と茄と茗荷を固く絞って赤紫蘇とあわせ

お酢とお酒を少々加えて漬け込んであります。

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畑の土の夏休み

畑の土の夏休み

茹だるような暑さが続く八月の畑

夏野菜たちも盛りを過ぎて終盤戦

命の水を切らさぬための水撒きと

次の季節への準備に大汗をかく

収穫が済みひと仕事終えた畝たちは

今年の実りに感謝しつつ残渣を撤去

腐葉土を漉き込みながら

よく耕して空気を入れて

たっぷり水を撒いたなら

黒いカバーでピッタリ密封

灼熱の太陽を集めた蒸し風呂で

草の根や地中の虫たちを追払う

そのまましばらく夏休み

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こっちへ来なはれ。

こっちへ来なはれ。

西に傾く炎天の太陽

陽射しの力はまだ強く

大地の熱は冷めぬまま

遥か彼方に立ちのぼる

大きな大きな入道雲

生き物のように湧き上がり

涼しげな濃い紫の影を拡げる

おーい、そこのきみー

そんなところで見てないで

さっさとこっちへおいでなさい

畑の野菜も学校の花壇の草花も

みんなで君を待ってるよー

狙われた縞模様

狙われた縞模様

それは、収穫適期まであと数日に迫っていた。

苗を植えてから2ヶ月半、小さな実をつけてから1ヶ月余

場所も時間もかかるけど、夏一番に収穫が楽しみな君。

日ごとに縞模様がくっきりと浮かんできて

叩けばコンコンと水分たっぷりの音を響かせて

あともう少しと楽しみにしていたのに。

ああ、それなのに、それなのに。

無常にも、それは空中からの刺客に襲われて

外壁を破られ、ぱっくりと傷口を開いてい

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