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70年代の音楽シーンを辿る旅 Ver.2 (HM/HR視点から) / ブルーズの英国流解釈〜レッド・ツェッペリンの衝撃〜そしてディープ・パープルの様式美へ

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1970年代も喪失から始まった

1970年代は、80年代や90年代がそうであったように、あまりにも大きな喪失から始まります。

ジミ・ヘンドリクス

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ストーンズのリーダーだったブライアン・ジョーンズ、ドアーズのボーカルでリーダーのジム・モリスン

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あらゆる女性アーチストの原型とも言えるジャニス・ジョップリンも70年代を待たず世を去ります。

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サイモン&ガーファンクルも、そしてあのビートルズも、、、、、解散を迎えます。

こんな、70年代の喪失の代わりに、とある、2つのアーチスト群がきらびやかに登場します。この2つの潮流はビートルズをチャートから蹴落として新たな時代の幕上げを宣言するわけです。

1970年代に現れた2つの潮流

70年代の始まりには、後に80年代に隆盛を極めるハードロック/ヘヴィメタル(HM/HR)の原型が登場します。

1)、ブルーズを主体としたいわば古典的な音楽を英国流に進歩させたアーチスト群。

メタルファンにはお馴染み、コージー・パウエルがドラムです。

2)、クラシック音楽やジャズを主体とした音楽を演奏技術と音楽理論で構築させて進歩させたいわば前衛的ともいえるアーチスト群です。これは、プログレッシブ・ロックとも呼ばれます。

単純にかっこいいです。音楽好きなら必聴。気にいると思います。

プログレは⬇︎にて紹介しています。


ブルーズ主体のロックの流れ / 60年代からの流れ〜ジミ・ヘンドリクスから始まった

60年代末、モンタレーポップフェスティバルや、ウッドストックでその名をとどろかせていたジミ・ヘンドリクス。

彼は、黒人ゆえか、または奏でる音の特異性からか、米国では認められておらず、1966年に渡英することになります。

英国でバンドを結成し、シングルを出し、その圧倒的な米国のブルーズを主体としたグルーヴ感と、そのギタープレイの熱量、そして延々と続くダイナミックなインプロヴィゼーション(即興演奏)、、これが、当時、ロンドンに巣くっていたスノッブな若者をノックアウトします。(60年代のコンテンツで詳述します。)

その若者たちが、エリック・クラプトンであり、ジェフ・ベックであり、ストーンズの面々(ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツ)だったりするわけです。

そしてここには、ライブをしなくなってスタジオで音の編集をし始めていた頃のビートルズのメンバーや、ジミー・ペイジの姿もありました。

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(通称3大ギタリスト:ジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック →日本のみで通用する呼称です)

この出会いが衝撃的すぎたのか、彼らはこぞって、米国ブルーズ主体の音楽を自己流に(つまり出生地である英国流に)解釈し、演奏をし始めます。

恐らくビートルズがその音の感じを変えていった要因の一つだったかもしれません。主要因はライブしなくなって、音に凝り始めたからではありますが。わかりやすく言うとベストアルバム赤盤、青盤の違いというか。『ラバーソウル』と『リボルバー』の違いと言うか。

エリック・クラプトンのアメリカブルーズへの本格的な旅はこのあたりから始まります(アメリカで出会ったデュアン・オールマンというギタリストと永遠の名曲「いとしのレイラ」をつくります。)

ジェフ・ベックが路線を変えていくきっかけになったのかもしれません。

ストーンズが、モッズヘアから本格的なロックバンドに変わっていくのもこのあたりからでしょうか。

そして、ついにあのバンドが動き出します。

そうレッド・ツェッペリンです。

ブルーズ主体のロックの流れ / 「Led Zeperin I」 レッド・ツェッペリン



ボーカル:ロバート・プラント
ギター:ジミー・ペイジ
ドラム:ジョン・ボーナム
ベース:ジョン・ポール・ジョーンズ

1st アルバムから「Dazed and confused」

1969年1月にファーストアルバムが発表されました。(当時はサイクルが早いので、同じ年の10月にはセカンドアルバムが発表されるのですが。このセカンドアルバムが、ビートルズの「アビーロード」をチャートの一位から蹴落とす訳です)

事前のレコーディングテープがアメリカですぐに話題になり、瞬く間にセカンドアルバムは全米1位になる快挙となります。

この背景には、おそらく、アメリカでロックムーブメントが起きていて受け入れられる下地が整っていたことにあるとは思います。

彼らの特徴と独自性

✳️フォーク、トラッド路線から、爆音ロックまでの幅ひろい楽曲と嗜好性

もともとジミー・ペイジやロバート・プラントはフォーク、トラッドを好んでいたようです。が、のちにジョン・ボーナムというすさまじい轟音ドラマーが加入するに至り、路線を爆音ロックに変更。でも、フォークトラッド風味は随所に残り、アルバムに彩りを与えています。

初期のフォーク・トラッドの帰結点が「Stairway to Heaven」です(4枚目のアルバムに収録)

✳️各メンバーの力量
すさまじいボーカルのパワーと熱量、すさまじいドラムの音と手数、すさまじいギター・特にギターの特徴的なリフ、、、といった、それぞれがその分野でも、超ど級の実力者であったことが挙げられます。

ファーストアルバムの完成度の高さ

オリジナル曲はあまりなく、古い、、、かつ広く伝播していたアメリカン・ブルーズの英国流解釈が随所に見られます。

ハードロックナンバー「Communication Breakdown」

ロバートとジミーが偏愛していたトラッド・フォークをベースにした壮絶なボーカルと、壮絶なドラミングの「Babe I'm Gonna Leave You」

ゴスペル調の、じんわりくるバラード「Your Time is Gonna Come」

グルーヴ感あふれる組曲風の「How Many More Times」。跳ねて、唸るギターリフが秀逸。

アルバム一曲目を飾った「Good times Bad times」

などなど聞きどころが多いです。ファーストにして傑作です。

そして、この数か月後にはセカンドアルバムを発表、前述のとおり、ビートルズの『アビーロード』をチャートの座から引きずりおろして、時代の変革を宣言します。

まさに、「Your Time is Gonna Come」です。

レッドツェッペリンのブルーズ由来のハードロックの遺伝子が帰結したのが70年代ロックの原型を由来としたガンズ&ローゼズです。

そして2000年代以降も、マリリン・マンソンらに遺伝子が受け継がれていきます。

Deep Purple と Led Zeppelin

HM/HRを語るとき、話題になるのがこの二つのバンド。今度はDeep Purpleに焦点を当ててみます。

Led Zeppelin:米国のブルーズがベース
Deep Purple:欧州のクラシックがベース

と、そもそもの出自が異なっています。レッドツェッペリンがなんとなく取っ付きにくく、ディープパープルはすんなり入れたんですが音楽的由来の違いが要因です。

ブルーズは、あくが強いのですよね。

さてDeep Purpleは元々、メロウなロックだったのが『In Rock』というアルバムからハードロック化。(ボーカルに、イアン・ギラン加入)。

このアルバムのころは、まだブルーズ由来のハードロックの影響があるんですが、(一部「Child in Time」が後に通ずる様式美的展開を持っていました)、、次第に、クラシックの影響を楽曲に反映してくことになります。


その帰結点が「Highway Star」です。

この曲の、典型的ハードロック然とした雰囲気と、典型的ハードロックのギターソロ、オルガンソロ、そしてボーカルのシャウト、、そして、全体を包む湿り気を感じさせる音色。。。このあたりが、いわゆる様式美の起点とも言えます。


(実際は、前述の「Child in Time」が起点なのかもしれませんが、完成を見たのは「Highway Star」かなと)

ヘヴィメタルの構成要素:様式美(哀愁、泣きのギター)

そして、このDeep Purple由来の哀愁、湿り気が様式美と呼ばれるようになっていき、のちのHM/HRのうち、HM(ヘヴィメタル)の重大な構成要素の一つとなります。重要な要素はキーボード。そして、クラシックをベースとしたメロディ構成。特にギターソロのメロディアスな音色が特徴でした。

このDeep Purpleの様式美は、UFOや、Judas Priest、Thin Lizzy、DPを脱退したリッチー・ブラックモアのレインボーらにも見られ、Gary Mooreは「Parisienne Walkways」で哀愁のギターの第一人者となります。これもすべて様式美。


特にUFOのギタリストのマイケル・シェンカーとギター職人ゲイリー・ムーアのギターは「泣きのギターとも呼ばれます」

この流れは、のちのメタルの隆盛を経て、スーパー速弾きギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンのネオクラシカルというジャンルを生み出し、日本では、X Japanが登場、この系譜に連なっていくわけです。

Xについてはこちら。


様式美と、アメリカンブルーズのクロスオーバー

この様式美とアメリカンブルーズの英国流解釈を兼ね備えたバンドがホワイトスネイクでした。70年代後半以降、ムーディーな声や適度な(暑苦しくない)グルーヴ感、キーボードの効果的な活用から、このバンドも人気を博していきます。


ヘヴィメタルの構成要素:ヘヴィ

ブラックサバスも、当初はアメリカンブルーズ直結の音だったんですが、このバンドがすごいのは初期からその影響は音にはさほど、感じられず、重厚なベース&ドラムが音の背後を支え、そこにあまりにも象徴的で、印象的なリフを奏でるギターが重なり、最終的にボーカル、オジー・オズボーンのあの声で勝負ありでした。

このバンドは、黒魔術や悪魔系などダークなイメージで、かつそのような重い曲をどんどん演奏していたため、ヘヴィメタルというジャンルのヘヴィをつかさどることになります。

このバンドの遺伝子が、90年代前半に突然変異して、ニルヴァーナからのグランジブームを生み出していくことになります。


ヘヴィメタルの構成要素:ファッション+ツインリード

そしてこのバンドも表舞台に出てきます。ジューダス・プリーストです。

彼らは、いわゆるレザーと鋲のついたメタルファッションの第一人者でもあり、のちにアイアンメイデンやハロウィン、メタリカ、メガデスに受け継がれる流麗なツインリードを持ち合わせていました。


アメリカンブルーズ主体のハードロックを下地として、様式美が生まれ、こういった要素を組み込みながら、徐々にHM/HRというジャンルが形成されていきます。

そしてこのまま、HM/HRの時代がくるか・・と思いきや、そうはいかず、70年代も後半になると、状況は変わってくるのでした。

これはまた次回に。

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