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小説【月並な話】

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-本が好きなあなたへ。少し毒のある物語を- 140字以内の掌編作品たち。 『読みたい』はこちらで!
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#恋

🌛月並な話 Vol.27 【三番線】

🌛月並な話 Vol.27 【三番線】

三番線
同じ時間。いつもの駅。 今日から新学期。この車両に彼は乗ってくるだろうか。
私はブレザーだけど、彼は学ランがとても似合う「ドアが閉まりまーす」
ドンと衝撃でイアフォンが外れた。
「すみません!」
学ランの彼を背中に感じる。鼓動が早くなる。
はめ直したイアフォンからは大好きな曲が流れていた。

🌛月並みな話 vol.26 【ジェリーフィッシュ】

🌛月並みな話 vol.26 【ジェリーフィッシュ】

ジェリーフィッシュ
目の前には、たくさんのミズクラゲが浮かんでいた。透明なジェリーに鮮やかな照明が反射する。
「綺麗ですね」彼はそう言ったきり。
私たちはずっと水槽を見ている。
突然シャッターをきる音がした。
「やっとこっち向いた」彼は照れくさそうに言う。笑顔を青い光が照らす。
水槽の前、初めて手をつないだ。

🌛月並みな話 vol.25 【ゴリラペンギンとネコキリン】

🌛月並みな話 vol.25 【ゴリラペンギンとネコキリン】

ゴリラペンギンとネコキリン
「ゴリペンと呼んでください!見た目はゴリラ。
歩き方はペンギンです!」

第一印象はなんだか怖い。
けど本当は優しくて頼りになって可愛いゴリペン。
林檎を一緒に食べた。
青魚は得意じゃないみたい。

「ネコキリンと呼んでください!目は猫。
体系はキリンです!」

「呼びづら」といってゴリペンは笑った。

🌛月並みな話 vol.24 【金魚】

🌛月並みな話 vol.24 【金魚】

金魚
彼とのベッドから這い出して
金魚に餌をあげるのが日課だった。
パクパクと口を動かす真っ赤な生き物。
彼が引っ越すまであと3日。
彼女との同棲が決まったらしい。
いつものように床をコロコロする。
金魚に会えなくて寂しい? 
彼は微笑むだけで何も答えてはくれない。
それでもいいか。彼が餌をくれる間は。

🌛月並な話 vol.18 【告白】

🌛月並な話 vol.18 【告白】

告白
「恭子さん。僕は君のことが・・・」
・・・何してる。ちゃんと言え。
告白する為だけに俺は、筏で大海原を渡り、素手で3000mの山を登り、鰐のいる川を全裸で泳ぎきり、毒蜘蛛の潜むジャングルを進むこと2週間。
もう小1時間、君を待たせている。
「恭子さん、す・・・す・・・寿司だと何がスキ?」

🌛月並な話 vol.7 【秘め事】

🌛月並な話 vol.7 【秘め事】

秘め事
赤いリボンと銀色スプーン。
それが幼い僕らの合言葉だった。
街が眠りについた後。
君の部屋の窓を小さく二回ノックする。
赤いリボンと銀色スプーン。小さな秘め事。
君が外の僕へ手を差し出す。その手を掴む。
音を立てぬよう、慎重に。
部屋は甘い匂いがする。
月明かりが君の顔を照らし、僕は少し笑った。

🌛月並な話 vol.5 【赤い糸】

🌛月並な話 vol.5 【赤い糸】

赤い糸
小指に結ばれた赤い糸を辿ったら
毛むくじゃらのおじさんに出会った。
「おじさんが運命の人かよ」ってげんなりしたら
相手も不服そうな顔をしていたので殴ってやりたくなった。
よかったらとおじさんがチョコをくれた。
寒い夜にはおじさんの毛むくじゃらが暖かいかもなって私は思った。

🌛月並な話 vol.1 【前髪を切りすぎた日】

🌛月並な話 vol.1 【前髪を切りすぎた日】

前髪を切りすぎた日。
前髪を切りすぎた日。
ただ煙草から伸びる煙を見てるのが好きだった。
ふぅ、と深く息を吐く。
ヤニで黄ばんだ壁が私を見ていた。
昼と夜の間。
外で遊ぶ子供達の声がうるさい。
気持ちが整理できない。
きっと前髪を切りすぎたからだと思う。
前髪を切りすぎた日。
貴方はこの部屋から出て行った。