俳優殿山泰司が住んでいたアパートの跡は鈴降稲荷の隣と聞いて訪ねてみた。アパートはビルに建て替わったようだが路地の奥に稲荷の祠は現存した。一ツ木通りと高台の屋敷町とをつなぐ坂の途中は赤坂という酒池のフチに当たる場所だ。赤裸々な欲を芸に仕上げた稀な俳優を偲んで稲荷に手を合わせた。
重い桎梏を背負つてしまつた そんな時、地球は輕い ボウイのやうに 売り払つてもいゝぐらゐ 銀河の幼子オサナゴ、母の手を離れ- やつて行けないなんて 考へは棄つる! 〈冬木瓜を一つ胸に自分參観日 くにを〉 トノタイさんが惚けについて 語つてゐらして なんだかね、眼から水©都築郷士