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JUNK FILM by TOEIを楽しく観る方法vol:09 「徳川セックス禁止令 色情大名」

「人が人を愛する自由はどんな権力者でも奪う事はできない」という命題でシナリオを書け!とシナリオ教室で課題を出されたとして、「江戸時代のお殿様が領民にセックス禁止令を出す」のはどうでしょう?!と提出したらどうなるのでしょう・・・。きっと0点を頂戴することでしょう。

しかし、そんなシナリオで100点満点の面白さを実現したのがこの「徳川セックス禁止令 色情大名」なのです。1972、鈴木則文監督。なんといってもキャスティングが素晴らしい。女嫌いで童貞の殿様に、「温泉みみず芸者」で「竿師段平」なるキャラを嬉々として演じてた、どういう角度から見ても女色を好んでそうな名和宏さん!田舎にイヤイヤ嫁いで来た誇り高いおぼこ姫を、しょっちゅう裸で暴れまわっていた杉本美樹さん!いつもは明るいエッチなおばさんを演じている三原葉子さんも山城新伍兄ィに開発されるまではやたら禁欲的な堅物を演じてます。全員普段とのギャップが凄すぎて笑える。

しかし、姫を閨房で征服することはイヤイヤ心中している徳川への意趣返し、みたいな理屈もでてきて深い(・・・浅いかな笑)。当時もそうやって女嫌いな殿様を焚きつけた家臣もいたかも、という気にもなってくる。しかし、江戸時代の徳川家(内でも色々あったんだろうし)と各藩の殿様の微妙な関係でよく何百年も平和を保てたもんだと感心する。どの藩でもセックス禁止令は発令されていないし笑。そして本作の「じい」役の殿山泰司さんの一生懸命やってるんだかそうでないんだかよく分からない熱演も最高です。

そんな女嫌いの名和さんをどうにかする役として白羽の矢が渡辺文雄さんに!彼も東映本筋のヤクザ映画では型通りの悪役を演じてましたが、フランス語での長セリフもあり「徳川女刑罰史」に続いて実にイキイキして(変態ですが)います。そして、則文監督の趣味なのかキリスト教を冒涜するようなシーンをサラッとやってます。転びバテレンっていうイキな設定もありますが、監督にはキリスト教に何か含むところあるのか、と勘繰ってしまいます。

そして、渡辺文雄さんが献上する(正にモノ扱いな箱入りで・・・)サンドラ・ジュリアン!今、冷静になって観てみると抜群の容姿ってわけじゃないかもですが、その美人感はさすが!ここで、やっと雄々しい事が大好きな名和さん(飽くまで役柄上の事ですので念のため)に男女の営みとはどんなに楽しいかを教えてくれます。・・・って、とこで終わればハッピーエンドとも言えなくもないですが、その後セックスの良さに気付いた名和さんは「しからば、下賤の者は一体どうしてるの?」と抱かなくてよい疑問を抱きます。テンポよく「下賤の者」が快楽を貪っている(他にやる事なさそうな感じも秀逸)のを見せつけられた名和さん・・・「オレはこんな楽しいことをこんなに長い間我慢(自分が知らなかっただけですが)していたのか!」って事で等々領民や家臣たちにセックス禁止令を発令!・・・やっぱ人間って「アイツだけ得してズルい!」ってのが一番良くない感情なんですね。。。

いやー、アホらしいような人間をよく観察しているようなこのシナリオ。さすが「時代劇の東映」のレガシーが活きてて、役者陣の名&迷演も効果を上げてて最高のエンターテインメントに仕上がっています。ポルノ映画なんて・・・という偏見を持った御仁にこそ観ていただきたい!いつからでしょうか、映画とはシリアスなものである!感動第一!いかに観客に涙を流させるか!みたいな感じになっていったのは・・・。まあとにかく、「人が変だけど面白い映画を愛する自由はどんな権力者でも奪う事はできない!」って事で今年もよろしくお願いします!


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