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ある日の記録

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日常の中でたまに起きる、忘れたくない一日のこと
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#コラム

子どもみたいな、大人の夏休み

子どもみたいな、大人の夏休み

この間の週末、とてもいい日を過ごせた。海外から友達が出張で日本に来ていて、久しぶりに会えることになったのだ。その友達の友達、そのまた友達も集まって、みんなでちょっとだけ遠出をしてきた。

大人になると、こういう時の「はじめまして」をすんなりと楽しめる。下の名前と、どんなつながりの友達かだけ紹介し合って、あとは適当に後から話していく。大好きな友達の友達とそのまた友達は、やっぱり素敵な人ばかりだった。

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空をたたむ

空をたたむ

干しておいた大量の洗濯物をたたもうと、ハンガーからスカートやらシャツやらをスルスルとはずして、布団の上に山盛りに重ねていく。

何となく、もうここでたたもうと思い適当に座ったら、ちょうど窓を正面に見据える向きになった。

さあたたむぞ、と薄手のシャツを1つ取り上げて目の前に広げてかざすと、シャツの向こうに青空が透けて見えた。視線を少しずらすと、窓越しの広い空がシャツと私の両手をかたどる。流れる白い

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いってらっしゃいの握手

いってらっしゃいの握手

朝、玄関の方へ歩きだす彼に向かって、名前を呼びかけ、右手を差し出す。

「はいはい」

もう慣れた彼は、そう言いながら戻ってきて、右手を差し出してくれる。

「何なの、いつものこれ」

と笑う彼と、しっかり握手をする。そして、へらへらしながら「いってらっしゃい」と彼を見送る。

私が握手を求める理由を、彼は知らない。

昔ある本で読んだフレーズが、ずっと心に残っている。

主人公にとって大

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虹と、やさしさと

虹と、やさしさと

「見て、あっち、すごい空。」

母が指さす方を見ると、ただならぬ雰囲気の黒い雲が遠くの空を覆っている。

「怖い、怖い。降ってくるかな。」

最寄り駅まで、車で10分もかからない。しばらく走ると、また母が言う。

「あ、虹。」

運転席の母の向こうを見ると、青い空と白い雲を背景に、虹の足の部分だけがすっと空から地上へ降りてきていた。いや、地上から空へ伸びているのだろうか。その先は雲の中へと続いてい

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「フリ」をしてると積み重なって自分に染みつく。悪い方向でもいい方向でも。

「フリ」をしてると積み重なって自分に染みつく。悪い方向でもいい方向でも。

新卒で会社員になり4年以上経った頃、趣味を通じて友達ができた。当時、クライミングにハマり、仕事帰りに週1~2回通っていたジムで徐々に顔なじみが増え、そのうち何人かとは土日も一緒にジムめぐりをするようになった。みんな年齢も職業も出身もばらばらだけど、壁を登っている間は子どもに戻ったようにワクワクして、本当に楽しかった。

その中に、海外から来て日本で働いている子もいた。背が高くて優しくてお茶目な年下

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ピーナツと「お父さん」

ピーナツと「お父さん」

あれは小学校何年生の時だっただろう。

家族で車に乗ってどこかへ出かけていた。父が運転していて、母が助手席に座り、私たち3姉妹は後ろの席できゃっきゃしていた。

移動中、おやつに柿の種をぽりぽり食べていた。今では柿2、3個にピーナツ1個の割合でバランスよく食べるけど、子どものころは柿のほうばかり食べていた。残ったピーナツを持てあまし、何の気なしに、父に「いる?」と聞くと、父は「うん」と答え、こう言

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