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空をたたむ

干しておいた大量の洗濯物をたたもうと、ハンガーからスカートやらシャツやらをスルスルとはずして、布団の上に山盛りに重ねていく。

何となく、もうここでたたもうと思い適当に座ったら、ちょうど窓を正面に見据える向きになった。

さあたたむぞ、と薄手のシャツを1つ取り上げて目の前に広げてかざすと、シャツの向こうに青空が透けて見えた。視線を少しずらすと、窓越しの広い空がシャツと私の両手をかたどる。流れる白い雲も、雲の隙間からこぼれる光の具合も、なんだかいい感じだ。

「洗濯物をたたむ」という日常のささやかな作業をしている間にも、世界には絶えず贅沢な景色が展開しているのだ。ほんの少し顔を上げたことで、そのことを久しぶりに思い出せた。

そんな贅沢すぎる背景になんだか楽しくなって、次々と洗濯物に手を伸ばす。1つ1つ、顔の前でパッと広げてかざしてから、空ごと包み込むようにふんわりたたんでいく。

いつもは少し面倒に感じる作業が、気づいたらあっという間に終わっていた。

洗濯物をたたむときは、また窓に向かって、空を感じながらたたもう。

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