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チープリショート(まとめ)

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noteで紹介した私のショートストーリーをまとめました。 もしよろしければ、以前からのすべてを読み返してみてください。 ありがとうございます。
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記事一覧

『ワタシのご近所推し活』

『ワタシのご近所推し活』

ワタシには、週に4回は足を運ぶ近所のスーパーマーケットがある。

2階建てで、1階は食品を2階は日用雑貨などを扱っている。
ちょうどいい狭さのフロアの、ちょうどいい幅の陳列棚に置かれた洗濯用洗剤や飼い犬用のゴハンなどを2階で購入してから、
エスカレーターで1階へと向かう。
降りたところにある1台のカートを掴み、手持ちの部分が少しだけ歪んでいるカゴを真上から取り上げて装着する。
これが買い物の相棒だ

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『キミを好きな理由』

『キミを好きな理由』

すれちがう すれちがわないその時に
窓の外光る何かの声を聞く
ボクがここにいるこの理由を問う
意味はない意味はまったくないのです

星空に何かを望むわけじゃなく
月に何かをお願いするでもなく
ただ今日と明日とあさってがその
普通で普通にすごせますように

ああ このままでいいのに
ああ だけどこのままは嫌
ああ 今日と少しだけ違う
ああ 明日にならないかな

悲しみは小さい方がいい
楽しさは大きい

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『親という漢字はこんな感じ』

『親という漢字はこんな感じ』

親という漢字は、木の上に立って見ると書く。

もう赤ちゃんではないのに、
ものすごく近くでちょっかい出して
子どもの自主性を削いではいけないのだろう。

転ばぬ先の杖を差し出して差し出して差し出し過ぎて、
自分で後始末できなくなってしまうような、
大人にさせてはいけないのだろう。

自分で失敗したり経験したりする機会を失って
転んだ時に自力で立ち上がれないような、
人任せの人間にしてはいけないのだ

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『ひとり歩く』

『ひとり歩く』

唄っているその声に
導かれるように森を歩く
少し得意気に
ボクは歩くひとり歩く

どうしてそこへ行くのか
そこは楽しいのだろうか
考える暇も与えられず引きずられるように
正しいと信じて歩く

後ろは振り向かない
絶望と憎しみを知ってしまうから
もう仕方ない前を向いて歩くしかない
後ろに道などないんだから

はやし立てられるように
わけもわからず森を歩く
自信だけを胸に
ボクは歩くひとり歩く

どう

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『抱きしめる風』

『抱きしめる風』

ただ手を広げ 飛び上がりそうになるほど強く
草むらを駆け出して
頬に触る風の端っこを掴む

振り回したら、そのまま世界に行けそうな
行けそうな感覚を背中に背負って
驚いて笑うキミをそのままに

誰にも邪魔されない
誰の真似でもない自分の
心を風に乗せて唄うよ

まつ毛に付いた怖がりを
乱暴に手で拭ったら
ほら今までよりきれい 同じ景色も違って見える
懐かしい昔話を
洗い流して忘れて
新しい気分を気

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『文鳥のママ』

『文鳥のママ』

ある嵐の日。
文鳥のお家はどこかに吹き飛ばされて
3羽の子供たちだけがポツンと残されました。

そんな時。そんな時。
どこからともなく一匹の世話好きな猫がやってきました。
その猫は、たった1週間前に我が子を亡くしたばかりでした。

「どうしたんですか?助けてあげましょう」
震えて肩を寄せ合う3羽に話しかけました。

「だって、だってあなたは猫でしょう」
「猫は鳥を食べるのでしょう」
「そういう風に

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『明日を想う』

『明日を想う』

何を見ていた
何をしていた
躓くボクを 
抱きしめもせず

どこを歩いて
どこを走って
間違うボクを
呼び止めもせず

月に教えてもらった 心もとない道を
準備もしないままで ただ
信じて進むほかないんだ

どちらにしてもどちらでもない
明日を決める勇気などない
どちらにしてもどちらもない
弱い自分の手を取り さあ 生きてくだけ

何を見ていた
何をしていた
躓くボクを 
抱きしめもせず

どこを

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『ぼくがスーパーマンだったらよかったのに』

『ぼくがスーパーマンだったらよかったのに』

みんなかわいい
みんな必要
みんな愛される権利がある

だから、ぼくがスーパーマンだったらよかったのに

ある日、悲しい写真を見たよ
ある日、切ない動画を見たよ

今すぐ飛んで行ければいいのに
ぼくがスーパーマンだったらよかったのに

みんな大切
みんな大事
みんな生きる権利がある

だから、ぼくがスーパーマンだったらよかったのに

きっと強くてきっとお金持ちで
きっとやさしくて
きっとおおきくて

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『星とランデブー』

『星とランデブー』

もしかして、まだ悲しんでいるの?
ワタシはダイジョウブ。
毎日けっこう忙しいのよ。

雨が上がったらみんなで空に虹を塗りに行って
太陽の熱でお湯を沸かして
月のお顔を拭いてあげたり
星をお散歩に連れて行ってあげたり。
あっという間に時間が経つのよ。

でもね、
でもたまにあなたがワタシを思い出して泣いているのがわかると、
なんだかワタシも悲しい気分になるの。
悲しくなって会いたくなって
どうにもこ

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『ボクは君の花になりたいのだ』

『ボクは君の花になりたいのだ』

きっと君は無理だと言う。
でもボクは諦めないぞ。

泣いている時に笑わせたい。
落ち込んでいたら寄り添いたい。
たとえば、頼りなくても。

涙はね、心が頑張った証だから。
恋をして、でも思ったようにはいかなくて
それで流れる涙はきっと
新しい恋を応援してくれるよ。
そう、ボクみたいにね。

喧嘩をしたんだね。
心はすれ違うものだから、
最初は上手に編めていると思っていたけれど、
実は途中がこんがら

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『君に夢中』

『君に夢中』

本当はいつもゴハンをもっと食べたかった。
きっとワタシの体のことを想って
あなたはゴハンの量を減らしてくれているけれど。

最近テレビ画面に映った美味しそうな犬用のケーキ。
なんだかイチゴがたくさん乗っかって
ワタシの背より高く見えたわ。
食べたいわ。

今日の朝ごはんも昨日の朝ごはんと同じ。
もっと言うと、昨日の夜ごはんは朝ごはんと同じ。
わかっているわ。
あんまり食べ過ぎるときっと太ってしまう

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『キミと衝動』

『キミと衝動』

バレンタイン、告白がんばれの気持ちを込めて!

キミと衝動

喉の奥が痛くなるくらいに
キミに会いたいと思う
この体が砕けてもいいくらいに
キミと会いたいと思う

誰に何かを言われてやったわけじゃない
本能に従っただけ
崖の上に咲く花を採りに
衝動で動いただけ

どうしてダメなのさと問うよ
今すぐペガサスに飛び乗って空を駆けてもいい
どうしてダメなのさと聞くよ
何度でも何度でも何度でも何度でも

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『カンノンボサツちゃん』

『カンノンボサツちゃん』

愛しいと抱きしめてしまう

カンノンボサツちゃんは、毎日の日課として瞑想をします。
これはマストです。
必ず雀の声がする朝4時に起きてから1時間のひとり時間を過ごします。
Titititititi。
なかなか雀たちの音量が大きいです。

自分の中の自分に問いかける、自分との対話の時間。
なんだか早口言葉のようですが、そのようなことをする時間を過ごします。
これをすることで、自分の良い部分や悪い部分

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『けっこんの唄』

『けっこんの唄』

このまま止まないかと思った雨が、
いつのまにか空に帰っていく。
晴れとともに虹がかかる。
ひとりで歩く夕方の帰り道。
いつしか影がふたつに増えて、
月の灯り頬に揺れる。
少し不安なことも
少し悲しいことも、
少し違和感のあることも
少し大変なことも、
すべてが必要なことで
すべてがつながっていく。
たとえばとなりに君がいるから、
前よりも無理がきくようになり、
たとえば道端に咲く花も
とても愛おし

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