さくまチープリ
noteで紹介した私のショートストーリーをまとめました。 もしよろしければ、以前からのすべてを読み返してみてください。 ありがとうございます。
赤富士さんの旅行の続編、赤富士さんとサーファー犬です。 同じところから動くことのできない旅好きの赤富士さんのために、 仲良しの太陽さんや動物たちが旅行の気分を味合わせてあげるという 友情物語です。ぜひお楽しみください。
子どもが主人公でありながら、ミステリーサスペンスという 少し冒険的な作品にしてみました。 みなさま、良かったら一緒に森に迷い込んでみませんか?
唄っているその声に 導かれるように森を歩く 少し得意気に ボクは歩くひとり歩く どうしてそこへ行くのか そこは楽しいのだろうか 考える暇も与えられず引きずられるように 正しいと信じて歩く 後ろは振り向かない 絶望と憎しみを知ってしまうから もう仕方ない前を向いて歩くしかない 後ろに道などないんだから はやし立てられるように わけもわからず森を歩く 自信だけを胸に ボクは歩くひとり歩く どうしてそこへ行くのか 輝いているだろうか 考える暇も与えられず引きずられるように
最終練習 アリガトウとサヨナラとうぇるかむ ついに来たミドリの命日ライブの日。 昨日までの雨は上がり、洗われた空気がすがすがしく鼻から入ってくる。 あの日もこんな日だった。 小学6年生の時の学芸会。 ワタシは確か主人公の敵役で、ドキドキなんてものではなかった。 たかだか学芸会なのだが、きちんとそれぞれ役のオーディションがあり、 引っ込み思案のワタシは歌を歌わなければならないその役に突然挑戦して周囲を驚かせた。 チャレンジは見事に成功し、誰もいない真っ暗な舞台で一人歌唱する
第16練習 ミドリと憑依と大作戦 相棒の『アギオ』の弦を付け替える作業も板についてきて、NEWTUBEの動画に頼らなくても上手くできるようになった。 とんでもない大冒険。 3曲を引っ提げて、バンドとして素人の主婦が初ライブを行うのだ。 勤め先のパン屋の店長は、ワタシよりも興奮気味にライブのポスターをデカデカと店先のガラス窓に貼ってくれた。 あと1カ月に迫り、毎日のギター練習に精を出す日々が続き、寝不足と指の痙攣と手首の筋肉痛で少し疲れが出始めている。 やはりこの疲れが取れず
第15練習 昔のワタシと大人のワタシ マキオのギターレッスンも、カラオケボックスのギターレッスンも 続いている。 ミドリの存在については、周知のオバケということでみんなで共有して、仲間として認識することで落ち着いた。 メッチョに理解してもらうことには苦労したけれど、ワタシたちの様子を見て何とか頑張って納得してもらった。 だいぶかなり、頑張ってだけれど。 あと変わったことと言えば、たまにマキオがカラオケボックスに一緒にやってくるようになったことぐらいだろうか。 マキオから見て
第14練習 秘密とワタシと前髪命 衝撃的なマキオの霊能体質の発見に、我々はひどく動揺した。 少し間が空いてから、089号室はそれまでの和やかな雰囲気から一瞬にして恐怖のどん底に叩き込まれることになった(ワタシとミドリ以外)。 「なになになになになになになに!」 マキオは腰を抜かしたままでミドリの方をまだ見ている。 ミドリは自分の顔を指さして、「視えてるんだ?」とマキオに尋ねている。 「ちょっと待って。いないの?この子、いないの?」 みんなに聞こうとしたようだけれど、ワタシ以
ただ手を広げ 飛び上がりそうになるほど強く 草むらを駆け出して 頬に触る風の端っこを掴む 振り回したら、そのまま世界に行けそうな 行けそうな感覚を背中に背負って 驚いて笑うキミをそのままに 誰にも邪魔されない 誰の真似でもない自分の 心を風に乗せて唄うよ まつ毛に付いた怖がりを 乱暴に手で拭ったら ほら今までよりきれい 同じ景色も違って見える 懐かしい昔話を 洗い流して忘れて 新しい気分を気分を抱きしめてく もし嘘をついて自分を自分で泣かせたら きっと新しい道にたどり
ある嵐の日。 文鳥のお家はどこかに吹き飛ばされて 3羽の子供たちだけがポツンと残されました。 そんな時。そんな時。 どこからともなく一匹の世話好きな猫がやってきました。 その猫は、たった1週間前に我が子を亡くしたばかりでした。 「どうしたんですか?助けてあげましょう」 震えて肩を寄せ合う3羽に話しかけました。 「だって、だってあなたは猫でしょう」 「猫は鳥を食べるのでしょう」 「そういう風に、ママとパパから聞いていました」 3羽は声を限りに言いました。 猫はびっくりし
第13練習 ギターとマキオと恋心 「ねえねえ、コメコちゃん。私たち2人の関係の話、途中だったよね」 ギターのレッスンが終わった後、恒例のお茶会でチーコさんが話し出した。 マキオを見る。相変わらず素知らぬ顔で紅茶を飲んでいる。 自分の話なのに、興味がないのか? 「実はね。この子は私の夫の子なの」 ということは、親子。でも年が近すぎる。 顔も似ていないような?どうなのだろう。 「はは。そうね。年が近いし顔が似ていないと思うわよね。私は初婚だけれど、夫は再婚で。この子のママはこ
何を見ていた 何をしていた 躓くボクを 抱きしめもせず どこを歩いて どこを走って 間違うボクを 呼び止めもせず 月に教えてもらった 心もとない道を 準備もしないままで ただ 信じて進むほかないんだ どちらにしてもどちらでもない 明日を決める勇気などない どちらにしてもどちらもない 弱い自分の手を取り さあ 生きてくだけ 何を見ていた 何をしていた 躓くボクを 抱きしめもせず どこを歩いて どこを走って 間違うボクを 呼び止めもせず どちらにしてもどちらでもな
第12練習 不倫とギターと成長期 結果から言うと、ワタシたち夫婦は別れなかった。 あれから3日経って、憔悴しきったパパが帰って来た。 「本当に申し訳なかったです。ごめんなさい」 閻魔様の形相で、おんぷが土下座するパパを蹴り上げそうになったので慌てて止めた。 「彼女とは、別れた」そうだ。 あの夜ワタシとおんぷの姿を見て、今まで胸の奥にあったけれど敢えて見ていなかった彼女の罪悪感とパパの罪悪感が頂点に達したのだそうだ。 「今すぐ許してもらえるとは思っていません。けれど、もう一
この度ご縁があって、千代田区神田神保町「avocafe」にて 7月1日から2か月間もの間個展をさせていただくことになりました。 新旧取り混ぜて、さまざまな絵を飾ります。 お気に召しましたら、そのまま購入してお持ち帰りすることができます。 グッズも少しだけですが販売しますので、もしお近くにお越しの際には お立ち寄りください! アボカドだらけの美味しいお料理と、陽気でカラフルな絵が 皆さまを元気にするべくお待ちしています♪ さくまチープリ
突然ですが、ワタシはMrs.GREENAPPLEの『norn』という曲が大好きです。 カラオケで唄いたいのですが、全編スウェーデン語のため叶わず。 この曲が好きすぎて絵本まで書いてしまいました。 というわけで、勝手に日本語の歌詞を創作で付けてみました。 どうぞ怒らないでください。 ※メロディーは『norn』でお願いします。 (1番) ほら浮かぶよ 空には どこかに届くはず 遠い雲 広げてもなお小さな手 誰かとつなぐための小さな手 もし さみしくて 悲しくなったなら
第11練習 ギターと男と女と娘 曲を演奏し終えた。 一瞬だけ間があって、さざ波のような拍手が起こった。 マキオも横で拍手をしてくれている。 この日以上に自己肯定感が高まった日は今まであっただろうか。 ワタシ良かったね、ワタシ。 今こそ自分を生まれた時にされたように抱きしめてあげたいと思えた瞬間だった。 照明が1回明るくなり、ワタシは椅子から立ち上がった。丁寧にお辞儀をする。 再度拍手の音量が大きくなった。 素晴らしいコンサートホールで、盛大なスタンディングオベーションを受
本当はいつもゴハンをもっと食べたかった。 きっとワタシの体のことを想って あなたはゴハンの量を減らしてくれているけれど。 最近テレビ画面に映った美味しそうな犬用のケーキ。 なんだかイチゴがたくさん乗っかって ワタシの背より高く見えたわ。 食べたいわ。 今日の朝ごはんも昨日の朝ごはんと同じ。 もっと言うと、昨日の夜ごはんは朝ごはんと同じ。 わかっているわ。 あんまり食べ過ぎるときっと太ってしまう。 散歩にたくさん行かなくちゃね。 あなたと散歩に行かなくちゃね。 そしてその
きっと君は無理だと言う。 でもボクは諦めないぞ。 泣いている時に笑わせたい。 落ち込んでいたら寄り添いたい。 たとえば、頼りなくても。 涙はね、心が頑張った証だから。 恋をして、でも思ったようにはいかなくて それで流れる涙はきっと 新しい恋を応援してくれるよ。 そう、ボクみたいにね。 喧嘩をしたんだね。 心はすれ違うものだから、 最初は上手に編めていると思っていたけれど、 実は途中がこんがらがっていたり、 隣りの目に編み間違えてしまっていたり。 気づいた時には、結構編み
もしかして、まだ悲しんでいるの? ワタシはダイジョウブ。 毎日けっこう忙しいのよ。 雨が上がったらみんなで空に虹を塗りに行って 太陽の熱でお湯を沸かして 月のお顔を拭いてあげたり 星をお散歩に連れて行ってあげたり。 あっという間に時間が経つのよ。 でもね、 でもたまにあなたがワタシを思い出して泣いているのがわかると、 なんだかワタシも悲しい気分になるの。 悲しくなって会いたくなって どうにもこうにも泣けてくるの。 だからそんなに悲しまないで。 ワタシは元気よ。 そちらに