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『文鳥のママ』


ある嵐の日。
文鳥のお家はどこかに吹き飛ばされて
3羽の子供たちだけがポツンと残されました。

そんな時。そんな時。
どこからともなく一匹の世話好きな猫がやってきました。
その猫は、たった1週間前に我が子を亡くしたばかりでした。

「どうしたんですか?助けてあげましょう」
震えて肩を寄せ合う3羽に話しかけました。

「だって、だってあなたは猫でしょう」
「猫は鳥を食べるのでしょう」
「そういう風に、ママとパパから聞いていました」
3羽は声を限りに言いました。

猫はびっくりして、周りを見回しました。
「そのママとパパはいなくなってしまったのですか?」

「お家と一緒に」
「お家と一緒に」
「どこかに行ってしまいました」
「ボクたちを守るために」
「嵐と家と、どこか遠くに行ってしまいました」
「ボクたちを守るために」

重なり合った木々の葉っぱの隙間から
キラキラ光る太陽の
サンシャワーが降り注ぎ
本当に嵐があったのかと思うほど
間抜けなほどに青い空

猫の右目から大きな雨が
大きな雨が降りました。

「よかったら、もしよかったらワタシの子供になりませんか?」

3羽は大きな口を開けて
「お願いします」
と言いました。

「もしよかったら、もしもよかったら家族になりましょう」

空は青くて
虹がかかって
風は愛の香りがしました。

「もしももしもよかったら、家族になりましょう」


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