えるも

変な小説を書いています。 将棋大好き永遠の級位者。元の名前は、あなぐまです。 首都高…

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変な小説を書いています。 将棋大好き永遠の級位者。元の名前は、あなぐまです。 首都高ジャンクションに住みたい。

マガジン

  • 日常

    エッセイだよ

  • ハッピーアイスクリーム

    まあまあ長め、小説ハッピーアイスクリーム

  • 小太郎と町子さんと私

    くらい話はなしだぜ。

  • 長めのお話

    note的にはちょい長めですが、一般的には短い小説

  • 短いお話

記事一覧

【小説】ハッピーアイスクリーム・②

 喫茶まりものドアを開ける前にシバタが腕時計を見ると、ちょうどデジタル画面が変わって5時35分になった。  この店は駅から離れた住宅街にあるせいかいつも空いてお…

えるも
39分前

痩せた未来にタイムワープとかできないですかね?

さいきん、ふくらはぎを揉んでるんですけども、ぜんぜん足が桜島大根です。今日で16時間断食二日目なんですけども、まったく痩せません。調べてみたら、結果が出るのに一…

えるも
17時間前
5

【小説】 ハッピーアイスクリーム・①

 誰かに肩を叩かれたような気がして、窓際の後ろから二番目の席で眠っていた葛飾塔子は机に投げ出していた半身を起こした。  世界史教師は第一次世界大戦のころにスペイ…

えるも
17時間前
3

謎言語でかんがえている。

 千葉県生まれで、一瞬東京に住んでいたこともあるけれども、ほとんど千葉県住まいの自分なのだが、何か小難しいことを思考しようとして、なぜだか頭の中も発する言語も意…

えるも
12日前
11

社長と天使の傘 町子さんと小太郎

「傘は雨降りの、それも家の中にいては見失いそうな小雨降る日に買わなければならないという条例が出たって知ってましたか?」  大山たけこが、そんなことを言ったのは、…

えるも
12日前
13

悪魔のピアノ

 先生の家には玄関を入ってすぐ左に部屋があって、いつもは大体閉まっている扉が、ときどき中をのぞいてごらんとばかりの細さでこっちを見ていることがあった。  そこに…

えるも
13日前
10

見られる日記 町子さんと小太郎

 私の日記を盗み読みしている人がいるようなので、その人に向けて嘘の日記を書くことにした。    某月某日 やけに姿勢の良い人と見合いをしたが、私はくねくねした人が…

えるも
2週間前
6

夢の顔

 小川康平は、彼がいつも通勤に使っている乗換駅にいる夢を見ていた。光の加減から午後二時ころではないかと思うが、ホームには人がほとんどいない。ベンチに一組の男と女…

えるも
3週間前
12

これから行く町 怪談ウエイトレス 

 昼休みの公園は、たいていほとんどのベンチがふさがっているから、噴水の前の、いちばん好きな場所が空いていたのはラッキーだった。  サンドイッチとおにぎりを食べ終…

えるも
3週間前
10

いやだな、と思う人はいると思う。

さいきんずうっと、わーって思って、いろんなことが頭のなかグルグルしてて、これは前に「あなぐま」ってアカウントで書いてたけど唐突にnote辞めちまったときと同じ症状で…

えるも
3週間前
13

【小説】 声 (後編)

 マンションに戻ると、エレベーターに故障中の貼り紙がついていたのでスズキは五階までゆっくり足を交互に振り上げてきつさを考えないように歩いていたが、上りきった瞬間…

えるも
3週間前
6

【小説】 声 (前編)

 うちの会社の休憩室には四十いくつはありそうな大型のテレビがあるのだけれど、昼にそのテレビがついているところを見たことは一度もなくて、食べているときに何かが見…

えるも
3週間前
5

にじにこうえん

それじゃあ、「こうえん」で「にじ」にあいましょう。 と、あの人が言った。 たのしみです。 久しぶりの、待ち合わせなのだ。 きをつけてあるいて。 あのひとは、やさ…

えるも
1か月前
11

ほんのり怖いから、相当怖いまでの小説

 怪奇小説オムニバスと名がつく本の目次を見ると、半分近くが既読、という怖い話オタクです。とはいえさして詳しくもないので、少しだけレアなやつを選んでみました。怖さ…

えるも
1か月前
11

雪柳と眠る

 雪柳の花を花瓶に生けた。花瓶を机に飾って、私は机にうつぶせて板チョコをかじりながら雪柳の花びらを見つめていた。細くうねった枝に白い花がまばらに咲いている。あん…

えるも
1か月前
10

雲が壊れる

 気づくと私は土の中で体がばらけているのだった。  どうやら死んでしまったようだった。死んでばらけて葬られたらしく頭蓋骨のうえに子宮がのせられ、胃袋のとなりに右…

えるも
1か月前
9
【小説】ハッピーアイスクリーム・②

【小説】ハッピーアイスクリーム・②

 喫茶まりものドアを開ける前にシバタが腕時計を見ると、ちょうどデジタル画面が変わって5時35分になった。
 この店は駅から離れた住宅街にあるせいかいつも空いており、好き勝手に座ってくれというシステムなので、ドアに近い二人掛けのテーブルを選んだ。ひとつ離れた席では、女子高生が教科書を広げつつあまり集中していない様子で飲み物を飲んでいる。たしかここでバイトをしている子だ。シバタも何度かコーヒーを運んで

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痩せた未来にタイムワープとかできないですかね?

痩せた未来にタイムワープとかできないですかね?

さいきん、ふくらはぎを揉んでるんですけども、ぜんぜん足が桜島大根です。今日で16時間断食二日目なんですけども、まったく痩せません。調べてみたら、結果が出るのに一月かかるそうですがな。
気が遠くなって気絶します。

ところで皆さん、バナナダイエットって、覚えていますか?
覚えていますか、愛、とかいうアニメが昔あったな。

カービィダンスとか、タニタ食堂とか、B型自分の説明書とか。

どれもこれも、自

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【小説】 ハッピーアイスクリーム・①

【小説】 ハッピーアイスクリーム・①

 誰かに肩を叩かれたような気がして、窓際の後ろから二番目の席で眠っていた葛飾塔子は机に投げ出していた半身を起こした。
 世界史教師は第一次世界大戦のころにスペイン風邪が大流行したという話をしている。
 開け放たれた窓に顔を向けると、変に間延びした高い声が聞こえてきたが、何と言っているのかはわからない。葛飾は寝起きでこわばった身体を伸ばして窓の外を覗き込んだ。校庭の体育はたぶんテニスだと思うが、誰か

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謎言語でかんがえている。

謎言語でかんがえている。

 千葉県生まれで、一瞬東京に住んでいたこともあるけれども、ほとんど千葉県住まいの自分なのだが、何か小難しいことを思考しようとして、なぜだか頭の中も発する言語も意味不明の関西弁になってしまう時がある。

 たまたま好きな作家さんのほとんどが、大阪あたりの人で作中にも関西弁が出てくることが関係しているのだろうか?あー、大阪行ってたこ焼き食いたい。

 そもそも芸人さんがこれだけテレビに出ているからには

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社長と天使の傘 町子さんと小太郎

社長と天使の傘 町子さんと小太郎

「傘は雨降りの、それも家の中にいては見失いそうな小雨降る日に買わなければならないという条例が出たって知ってましたか?」
 大山たけこが、そんなことを言ったのは、さんさんと太陽が降り注いでいるかというとそれは成層圏あたりまでで地上はぜんぜん曇っている木曜日朝一番のお茶時間のことだった。

「なにそれ、俺そんなの知らないけど」
 最近、早足で歩く人々の合間を猛烈にゆっくり歩くことで、逆に誰にも絶対にぶ

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悪魔のピアノ

悪魔のピアノ

 先生の家には玄関を入ってすぐ左に部屋があって、いつもは大体閉まっている扉が、ときどき中をのぞいてごらんとばかりの細さでこっちを見ていることがあった。
 そこにはダンボールとか洋服を入れるケースとか、とにかくいろんなものがごたごた積み上げられていて、なんだかリラックスできそうにない部屋だなと、僕は勝手な感想を持ったのだった。

 それがこの前のレッスンのとき、またしても扉が開いていて、奥の壁に絵が

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見られる日記 町子さんと小太郎

見られる日記 町子さんと小太郎

 私の日記を盗み読みしている人がいるようなので、その人に向けて嘘の日記を書くことにした。
 
 某月某日 やけに姿勢の良い人と見合いをしたが、私はくねくねした人が好きなのだ。

 これは先週の木曜日に書いた日記だ。わざと誰でもとれる場所に放置した。開け放った窓際とか、鍵のかかっていないポストの中とか、庭に植えてあるいちじくの木の枝にかけておいたら、さっそく、町でそれらしき人に出くわした。その人は話

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夢の顔

夢の顔

 小川康平は、彼がいつも通勤に使っている乗換駅にいる夢を見ていた。光の加減から午後二時ころではないかと思うが、ホームには人がほとんどいない。ベンチに一組の男と女が座っている。具合が悪くなった女性を男が助けたところのようだったが、小川が二人の前を通り過ぎると、男は彼を見てなぜか怯えたような顔をした。そこで目が覚めた。
 
 次の日の夢でも同じ駅にいた。改札を抜けると、昨日の二人がエレベーターの前に並

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これから行く町 怪談ウエイトレス 

これから行く町 怪談ウエイトレス 

 昼休みの公園は、たいていほとんどのベンチがふさがっているから、噴水の前の、いちばん好きな場所が空いていたのはラッキーだった。

 サンドイッチとおにぎりを食べ終えた野木は、鞄を開けて思わず、あれっと声を出してしまった。

 読みかけの本が入っていない。

 朝、家を出る前に机から手に取ったのは覚えているが、鞄に入れたかどうかまで思い出せない。電車の中で読もうと思っていたのだけれど、今朝はいつもよ

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いやだな、と思う人はいると思う。

いやだな、と思う人はいると思う。

さいきんずうっと、わーって思って、いろんなことが頭のなかグルグルしてて、これは前に「あなぐま」ってアカウントで書いてたけど唐突にnote辞めちまったときと同じ症状で、このままだとまたnote辞めることになりそうだがそれはすごく嫌だ、

noteって、8ヶ月も赤字なのだとかさっき知って、そんな気はしていた、だって広告無しでどうやってんだ?と思っていたら有料記事が収入源だそうだ、私には無理だたまにお金

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【小説】 声 (後編)

【小説】 声 (後編)

 マンションに戻ると、エレベーターに故障中の貼り紙がついていたのでスズキは五階までゆっくり足を交互に振り上げてきつさを考えないように歩いていたが、上りきった瞬間、春野さんがそこにいたような気がしたのは、酸素が不足していたせいかもしれない。だって、そんなわけはないから。スズキはずっと前に好きだったひこにゃんのキーホルダーがついた鍵を玄関の鍵穴にさしこんだ。マンションといっても、狭めの八畳に一口コンロ

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【小説】 声 (前編)

【小説】 声 (前編)

 うちの会社の休憩室には四十いくつはありそうな大型のテレビがあるのだけれど、昼にそのテレビがついているところを見たことは一度もなくて、食べているときに何かが見たければ、みんなスマホかタブレットを見るし、食べ終わったあともスマホかタブレットを見るか、本を読んでいるか寝ているかのどれかだ。もちろん、外にランチに行く人もいる。
  あの大きなテレビは、ながく続いた昼の番組が終わったあたりから誰も見なく

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にじにこうえん

にじにこうえん

それじゃあ、「こうえん」で「にじ」にあいましょう。

と、あの人が言った。

たのしみです。

久しぶりの、待ち合わせなのだ。

きをつけてあるいて。

あのひとは、やさしいようなはぐらかすような答え。

ありがとう。
 
「こうえん」は高くて遠いから、

ふらふらしていると落っこちてしまいそうだ。

おまけに、広くて遠いので、あの人がなかなか見つからない。

「虹」に待ち合わせと言っていたっけ。

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ほんのり怖いから、相当怖いまでの小説

ほんのり怖いから、相当怖いまでの小説

 怪奇小説オムニバスと名がつく本の目次を見ると、半分近くが既読、という怖い話オタクです。とはいえさして詳しくもないので、少しだけレアなやつを選んでみました。怖さは順不同。

『旅行時計』 W・F・ハーヴィ 国書刊行会 怪奇小説の世紀1より
 
 叔母の友人から、留守宅に旅行時計を取りに行って欲しいと頼まれた主人公。留守宅、というところからしてほんのり怖いけれども、そのあと怖さのせまってくるときのオ

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雪柳と眠る

雪柳と眠る

 雪柳の花を花瓶に生けた。花瓶を机に飾って、私は机にうつぶせて板チョコをかじりながら雪柳の花びらを見つめていた。細くうねった枝に白い花がまばらに咲いている。あんまり見入っていたせいか、いつの間にか私は小さな人になっていた。

 雪柳の枝が桜の枝くらいで、雪柳を生けた花瓶が太い桜の幹くらいに思えるほどの大きさになった。
 
 私はティッシュペーパーをボックスから苦労して抜き取り、机にちらばっていたチ

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雲が壊れる

雲が壊れる

 気づくと私は土の中で体がばらけているのだった。

 どうやら死んでしまったようだった。死んでばらけて葬られたらしく頭蓋骨のうえに子宮がのせられ、胃袋のとなりに右足が、右足の下に心臓が置いてあるという具合。

 自分の再生を願った人がいれば、こんなふうにばらばらにするはずがない。しきたりでは、生きていたときのままに。

 土がはだけて空が見えている。雨が降っているのに、空はあかるい。

 ひと眠り

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