えるも

変な小説を書いています。 将棋大好き永遠の級位者。元の名前は、あなぐまです。 首都高…

えるも

変な小説を書いています。 将棋大好き永遠の級位者。元の名前は、あなぐまです。 首都高ジャンクションに住みたい。

マガジン

  • 日常

    エッセイだよ

  • 小太郎と町子さんと私

    くらい話はなしだぜ。

  • 長めのお話

    note的にはちょい長めですが、一般的には短い小説

  • 短いお話

  • 怪談ウエイトレス

    なぜか一人でいると、みょうな話をされるウエイトレスのはなし。

最近の記事

謎言語でかんがえている。

 千葉県生まれで、一瞬東京に住んでいたこともあるけれども、ほとんど千葉県住まいの自分なのだが、何か小難しいことを思考しようとして、なぜだか頭の中も発する言語も意味不明の関西弁になってしまう時がある。  たまたま好きな作家さんのほとんどが、大阪あたりの人で作中にも関西弁が出てくることが関係しているのだろうか?あー、大阪行ってたこ焼き食いたい。  そもそも芸人さんがこれだけテレビに出ているからには、どうしたって「そうなんや〜」などと似非関西弁が自然に口をついてしまうよね?

    • 社長と天使の傘 町子さんと小太郎

      「傘は雨降りの、それも家の中にいては見失いそうな小雨降る日に買わなければならないという条例が出たって知ってましたか?」  大山たけこが、そんなことを言ったのは、さんさんと太陽が降り注いでいるかというとそれは成層圏あたりまでで地上はぜんぜん曇っている木曜日朝一番のお茶時間のことだった。 「なにそれ、俺そんなの知らないけど」  最近、早足で歩く人々の合間を猛烈にゆっくり歩くことで、逆に誰にも絶対にぶつからない技を生み出したという松岡が、限りなく薄そうなルイボスティーを飲み干した

      • 悪魔のピアノ

         先生の家には玄関を入ってすぐ左に部屋があって、いつもは大体閉まっている扉が、ときどき中をのぞいてごらんとばかりの細さでこっちを見ていることがあった。  そこにはダンボールとか洋服を入れるケースとか、とにかくいろんなものがごたごた積み上げられていて、なんだかリラックスできそうにない部屋だなと、僕は勝手な感想を持ったのだった。  それがこの前のレッスンのとき、またしても扉が開いていて、奥の壁に絵がかかっているのを見つけた。中が暗くてはっきりとはわからなかったけど、全体的に黒っ

        • 見られる日記 町子さんと小太郎

           私の日記を盗み読みしている人がいるようなので、その人に向けて嘘の日記を書くことにした。    某月某日 やけに姿勢の良い人と見合いをしたが、私はくねくねした人が好きなのだ。  これは先週の木曜日に書いた日記だ。わざと誰でもとれる場所に放置した。開け放った窓際とか、鍵のかかっていないポストの中とか、庭に植えてあるいちじくの木の枝にかけておいたら、さっそく、町でそれらしき人に出くわした。その人は話している間中、首と手首をくねくねと回していたのだ。これは犯人に違いないと思った私

        謎言語でかんがえている。

        マガジン

        • 日常
          16本
        • 小太郎と町子さんと私
          7本
        • 長めのお話
          25本
        • 短いお話
          50本
        • 怪談ウエイトレス
          10本
        • 繰り返し読みたい本。
          7本

        記事

          夢の顔

           小川康平は、彼がいつも通勤に使っている乗換駅にいる夢を見ていた。光の加減から午後二時ころではないかと思うが、ホームには人がほとんどいない。ベンチに一組の男と女が座っている。具合が悪くなった女性を男が助けたところのようだったが、小川が二人の前を通り過ぎると、男は彼を見てなぜか怯えたような顔をした。そこで目が覚めた。    次の日の夢でも同じ駅にいた。改札を抜けると、昨日の二人がエレベーターの前に並んで立っている。女はすっかり元気になったらしく、男と親しげに話していた。小川があ

          これから行く町 怪談ウエイトレス 

           昼休みの公園は、たいていほとんどのベンチがふさがっているから、噴水の前の、いちばん好きな場所が空いていたのはラッキーだった。  サンドイッチとおにぎりを食べ終えた野木は、鞄を開けて思わず、あれっと声を出してしまった。  読みかけの本が入っていない。  朝、家を出る前に机から手に取ったのは覚えているが、鞄に入れたかどうかまで思い出せない。電車の中で読もうと思っていたのだけれど、今朝はいつもより混んでいて身動きも取れなかった。  仕方がない。野木は本をあきらめて、かわりに

          これから行く町 怪談ウエイトレス 

          いやだな、と思う人はいると思う。

          さいきんずうっと、わーって思って、いろんなことが頭のなかグルグルしてて、これは前に「あなぐま」ってアカウントで書いてたけど唐突にnote辞めちまったときと同じ症状で、このままだとまたnote辞めることになりそうだがそれはすごく嫌だ、 noteって、8ヶ月も赤字なのだとかさっき知って、そんな気はしていた、だって広告無しでどうやってんだ?と思っていたら有料記事が収入源だそうだ、私には無理だたまにお金あったら読みたいのに、って思う人がいるけど、 生きてるうちに今書いてる小説ぜっ

          いやだな、と思う人はいると思う。

          【小説】 声 (後編)

           マンションに戻ると、エレベーターに故障中の貼り紙がついていたのでスズキは五階までゆっくり足を交互に振り上げてきつさを考えないように歩いていたが、上りきった瞬間、春野さんがそこにいたような気がしたのは、酸素が不足していたせいかもしれない。だって、そんなわけはないから。スズキはずっと前に好きだったひこにゃんのキーホルダーがついた鍵を玄関の鍵穴にさしこんだ。マンションといっても、狭めの八畳に一口コンロしかないキッチンのついたおもちゃのような部屋だが、未だにそこに自分が日々存在する

          【小説】 声 (後編)

          【小説】 声 (前編)

           うちの会社の休憩室には四十いくつはありそうな大型のテレビがあるのだけれど、昼にそのテレビがついているところを見たことは一度もなくて、食べているときに何かが見たければ、みんなスマホかタブレットを見るし、食べ終わったあともスマホかタブレットを見るか、本を読んでいるか寝ているかのどれかだ。もちろん、外にランチに行く人もいる。   あの大きなテレビは、ながく続いた昼の番組が終わったあたりから誰も見なくなったんだよとは、スズキより五年先に入社した内海さんが言っていた。  今年初め

          【小説】 声 (前編)

          にじにこうえん

          それじゃあ、「こうえん」で「にじ」にあいましょう。 と、あの人が言った。 たのしみです。 久しぶりの、待ち合わせなのだ。 きをつけてあるいて。 あのひとは、やさしいようなはぐらかすような答え。 ありがとう。   「こうえん」は高くて遠いから、 ふらふらしていると落っこちてしまいそうだ。 おまけに、広くて遠いので、あの人がなかなか見つからない。 「虹」に待ち合わせと言っていたっけ。 いったい、どの色に立っていたらいいのかしら。 二児の子供がいるお母さんが公

          にじにこうえん

          ほんのり怖いから、相当怖いまでの小説

           怪奇小説オムニバスと名がつく本の目次を見ると、半分近くが既読、という怖い話オタクです。とはいえさして詳しくもないので、少しだけレアなやつを選んでみました。怖さは順不同。 『旅行時計』 W・F・ハーヴィ 国書刊行会 怪奇小説の世紀1より    叔母の友人から、留守宅に旅行時計を取りに行って欲しいと頼まれた主人公。留守宅、というところからしてほんのり怖いけれども、そのあと怖さのせまってくるときのオノマトペがもう…出だしはのんびり、あとはあっさりしてるけれど、怖いよう。 『B

          ほんのり怖いから、相当怖いまでの小説

          雪柳と眠る

           雪柳の花を花瓶に生けた。花瓶を机に飾って、私は机にうつぶせて板チョコをかじりながら雪柳の花びらを見つめていた。細くうねった枝に白い花がまばらに咲いている。あんまり見入っていたせいか、いつの間にか私は小さな人になっていた。  雪柳の枝が桜の枝くらいで、雪柳を生けた花瓶が太い桜の幹くらいに思えるほどの大きさになった。    私はティッシュペーパーをボックスから苦労して抜き取り、机にちらばっていたチョコレートのかけらを拾い集め、ティッシュを花瓶のそばに敷いてチョコレートをほおば

          雪柳と眠る

          雲が壊れる

           気づくと私は土の中で体がばらけているのだった。  どうやら死んでしまったようだった。死んでばらけて葬られたらしく頭蓋骨のうえに子宮がのせられ、胃袋のとなりに右足が、右足の下に心臓が置いてあるという具合。  自分の再生を願った人がいれば、こんなふうにばらばらにするはずがない。しきたりでは、生きていたときのままに。  土がはだけて空が見えている。雨が降っているのに、空はあかるい。  ひと眠りしたがすぐに目を覚ました。いい加減、寝飽きた頭だ。頭蓋骨の下に胃袋や子宮を納めた

          雲が壊れる

          名を呼ぶ

          「すずきさん」  群集のなかで、名前を呼ばれた。振り返って私の名を呼んだ人を探したけれど、人波のなかでこちらを見ている人は誰もいなかった。休日の街は人であふれている。前にも後ろにも両隣にも人が歩いてるし、ガラス張りのカフェを見ても、空席はひとつもない。  おそらく、私ではない「すずき」を呼んだ人がいたのだなと思い、私は再び歩き出した。ありふれた名前を持っていると、こういうことは珍しくない。  帽子を被ろうと長袖を着ようと、太陽は私の隙間を見つけ出して忍びこんでくる。まるで監

          名を呼ぶ

          あの人は、誰なのか?

           果たしてその人は女なのか男なのか問題を提示する方法に、いつも立ち止まっている。  小説(らしきもの)を書いているとき、自分はいつも、できるだけ早く主人公や登場人物の名前と、女なのか男なのかを示したいと思っているのだけれども、性別については、いったいどうするのが正解なのかと毎回悩む。    年々その悩みは複雑さを増してきているのに、実際の文章にはほとんど進化がない。  性別を表すのに、昔は「これ、こしあんじゃなくて粒あんだったわ」みたいな、その昔女性らしいと言われていた

          あの人は、誰なのか?

          「怖い本を読んでいる手」怪談ウエイトレス

          「怖い本が苦手なんですよ」  メニューを見ながらそのお客さんは言った。その表情が、さして怖そうでもなくのんびりとしていた。年のころ三十後半というところの女の人で短い髪に、やたらぼわぼわした服を着ている。 「だのに、怖い話を聞くのは好きなんです。人づてにこの店の話を聞いて来たんです」 「そうでしたか」  野木が一人で喫茶まりもの店番をしていると、決まってこんな客が現れる。そして、やたら甘いものを注文して、少し怖かったり少し奇妙な話をしていくのだ。でもなんとなく、この人は違う気

          「怖い本を読んでいる手」怪談ウエイトレス