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雪柳と眠る

 雪柳の花を花瓶に生けた。花瓶を机に飾って、私は机にうつぶせて板チョコをかじりながら雪柳の花びらを見つめていた。細くうねった枝に白い花がまばらに咲いている。あんまり見入っていたせいか、いつの間にか私は小さな人になっていた。

 雪柳の枝が桜の枝くらいで、雪柳を生けた花瓶が太い桜の幹くらいに思えるほどの大きさになった。
 
 私はティッシュペーパーをボックスから苦労して抜き取り、机にちらばっていたチョコレートのかけらを拾い集め、ティッシュを花瓶のそばに敷いてチョコレートをほおばりながら花見をした。小さくなると雪柳の香りも嗅ぐことができるのだった。
 
 それからティッシュを十枚抜き取って、五枚は敷布団に五枚は掛け布団に残る一枚を小さく畳んで枕にして寝入った。夢の中では私は小さいのか大きいのかわからなかった。

 夢は私の考えたサイズなのだ。目が覚めると、私は大きくなって机のうえにまるまっていた。
 
 雪柳は相変わらずしずかに咲いている。


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