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  • 不協和音

    • 222本

    エンジニアとライターが始めた共同執筆プロジェクトです。エッセイを軸に、自分の感じたこと、考えたことを発信したり、同じテーマで互いに呼応したりする作品を作っています。

記事一覧

#012 KPIの達成率1500%(エッセイ)

部長の言葉。 KPIの進捗を見ながら、期末まで1カ月半もあるのに「もうムリでーす。あきらめまーす」と話していた。 わたしは、粘り強さというものを持ち合わせていない。 …

kuroda
1年前
2

#011 ギャグって何?(エッセイ)

次女、寝る前の一言。 もう布団に入って真っ暗な部屋で母に問う。 明日着る服を準備していた長女が「おもしろい一言っ!」と、遠くの方でごく正解なことを叫んでいる。 「…

kuroda
1年前
5

#010 もうちょっと寝転んでて(エッセイ)

夫の言葉。 風邪をひいてしまった。 熱はないがとにかく鼻がぐずぐずしている。 日曜の朝、子どもは昨日買った新しいおもちゃに夢中でとてもおとなしい。 とはいえ(ごろ…

kuroda
1年前
1

#009 まだバイバイも言ってないのに(エッセイ)

保育園の帰り道、次女の言葉。 散歩の時に拾った松ぼっくりを持ち帰ろうとしていたので、どうにか道中で手放させたかった。 手をつないで歩きつつ、リュックのポケットか…

kuroda
1年前
1

#008 お別れ次女ちゃんの4歳(エッセイ)

明日、次女は5歳になる。 4歳の次女とはもう2度と会えないので、抱っこしながら1年をたくさん振り返った。 文字を読めるようになった。名前を書けるようになった。背がぎ…

kuroda
1年前
3

#007 散歩(エッセイ)

The new habit I enjoy recently is walking around my home as a refreshing time. In many cases, I go out my home from 1.p.m to 2 p.m. Of course, I sometimes go t…

kuroda
1年前
2

#006 人が話しとんがに、切ってしもた(エッセイ)

高齢で難病を患っている母は、薬の影響もあり、いろんなことがうまくできなくなりつつある。特に、スマホの操作は難しいようだ。LINEの誤送などは当たり前で、もはや家族の…

kuroda
1年前
3

#005 ときめくのって難しい(エッセイ)

絵を探している友人の言葉。 曰く、家に合う絵が欲しいわけではなくて、心がときめいて未来に投資したくなる絵と出会いたいのだとか。 でも、なかなか見つからないらしい。…

kuroda
1年前
6

#004 行き先はお姉ちゃん(エッセイ)

ドラえもん屋さんに、巨大などこでもドアがあった。 横のタブレットに行き先を伝えてどこでもドアを開くと、Google Earthと連動したディスプレイに目的地が映し出される仕…

kuroda
1年前
2

#003 娘パンのおかんサンド(エッセイ)

洗面台の前に立って次女を抱っこしていたら、長女が背中に抱きついてきた。 長女曰く「娘パンのおかんサンドだよ」 わたしは一般的に言って背が高い方なので「具がデカい…

kuroda
1年前
6

#002 酒飲んで寝てしまえ(エッセイ)

風邪をひいた夫に対し、わたしの父の第一声。 別に、風邪に限らず夫に限らず、父はいつでも誰にでもよく言っている。娘の就職先がうまく決まらなかった時も、残業続きでヘ…

kuroda
1年前
3

#001 バカも好き。マヌケも大好き。(エッセイ)

大阪のなんば駅で見かけた言葉。 ガチャブランド「パンダの穴」のキャッチコピーだった。わたしはガチャが好きじゃないので知らなかったが、とても有名らしい。 バカもマ…

kuroda
1年前
2

使ってもないのにいたんでいるお薬手帳

魔窟みたいに物が詰まっているキャビネットから、すすすっとお薬手帳が転がり落ちてきた。 何気なくペラペラ見ていて気づく。 この2年、風邪をひいて耳鼻科に行っていない…

kuroda
2年前
1

11月が好きな理由

実家から車で30分ほど走ったところに、世界で一番美しいスターバックス、というスタバがある。 今もそのポジションなのかは知らないが、少なくともかつてはそう言われてい…

kuroda
2年前
3

おかんをちょっと黙らせて

長女も次女もすさまじくおしゃべりなので、休日の朝は「何でもいいから遠くにおって(おかんは眠い)」が第一声。 夜も「口閉じて、もう寝る時間!」と3回くらい言わないと…

kuroda
2年前
2

「やろう」だけじゃ信頼できない

ディズニーランドに行きたいね。鬼滅の刃のおもちゃ買おうね。お揃いのコート着ようね。 子どもとの会話には希望がたくさんある。要望も含め、そればっかりと言っても過言…

kuroda
2年前
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#012 KPIの達成率1500%(エッセイ)

#012 KPIの達成率1500%(エッセイ)

部長の言葉。

KPIの進捗を見ながら、期末まで1カ月半もあるのに「もうムリでーす。あきらめまーす」と話していた。
わたしは、粘り強さというものを持ち合わせていない。

部長曰く、草の根活動が限界なら他の手段を使うまでだ、とのこと。いくつかのサービスを紹介してくれた。

成果指標と行動指標を組み合わせたKPIのうち、行動指標の方はたぶん一発で達成できますよ、と。
ビハインドの数値に対して20倍、K

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#011 ギャグって何?(エッセイ)

#011 ギャグって何?(エッセイ)

次女、寝る前の一言。

もう布団に入って真っ暗な部屋で母に問う。
明日着る服を準備していた長女が「おもしろい一言っ!」と、遠くの方でごく正解なことを叫んでいる。
「へーっ」と、自分で訊いといて1mmも興味ないですとでも言うようなそっけない返事をして、次女は寝ることにした。

ギャグって何ってストレートに問われると、答えるのむずかしい。
ギャグセンスという言葉を使うし、何かしらのシチュエーションに対

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#010 もうちょっと寝転んでて(エッセイ)

#010 もうちょっと寝転んでて(エッセイ)

夫の言葉。

風邪をひいてしまった。
熱はないがとにかく鼻がぐずぐずしている。

日曜の朝、子どもは昨日買った新しいおもちゃに夢中でとてもおとなしい。
とはいえ(ごろごろしてばかりもいられん…)と思い、洗濯をしようとしたら夫に言われた。
体調を労わってくれているのかと思ったら「俺、これから洗面台使うから」と、付け加わった。

要するに「そこどいて」をマイルドに言っただけ。

なんかムカついたので、

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#009 まだバイバイも言ってないのに(エッセイ)

#009 まだバイバイも言ってないのに(エッセイ)

保育園の帰り道、次女の言葉。

散歩の時に拾った松ぼっくりを持ち帰ろうとしていたので、どうにか道中で手放させたかった。
手をつないで歩きつつ、リュックのポケットから大事そうに出してきた。
それを誰と見つけたか、いかにその小さい松ぼっくりがかわいいのか、次女は熱弁していた。

しかし、家に持ち込むのは避けたい。

結局「松ぼっくりさんは外で育ったんだから外の方がいいよ」とか「家に入ったら、しなしなに

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#008 お別れ次女ちゃんの4歳(エッセイ)

#008 お別れ次女ちゃんの4歳(エッセイ)

明日、次女は5歳になる。

4歳の次女とはもう2度と会えないので、抱っこしながら1年をたくさん振り返った。
文字を読めるようになった。名前を書けるようになった。背がぎゅーんと伸びた。リモコンを自力で操作してテレビを観られるようになった。たくさん歌を覚えた。

すさまじい成長を遂げている。
私は、4歳の次女が大好きだった。毎日怒って怒って怒ってばかりだけど。

彼女は尋常ならざるおしゃべりさんだが、

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#007 散歩(エッセイ)

#007 散歩(エッセイ)

The new habit I enjoy recently is walking around my home as a refreshing time. In many cases, I go out my home from 1.p.m to 2 p.m.

Of course, I sometimes go to the supermarket to buy the snacks for

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#006 人が話しとんがに、切ってしもた(エッセイ)

#006 人が話しとんがに、切ってしもた(エッセイ)

高齢で難病を患っている母は、薬の影響もあり、いろんなことがうまくできなくなりつつある。特に、スマホの操作は難しいようだ。LINEの誤送などは当たり前で、もはや家族の誰も特に反応しない。

電話もおぼつかない。さっき、母と話していたのだが「お母さん風呂に入ってくる」と言ったので、わたしは次の言葉か、電話が切れるのをしばらく無言で待っていた。

すると、母がタイトルの言葉をつぶやいた。横にいる姉に向け

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#005 ときめくのって難しい(エッセイ)

#005 ときめくのって難しい(エッセイ)

絵を探している友人の言葉。
曰く、家に合う絵が欲しいわけではなくて、心がときめいて未来に投資したくなる絵と出会いたいのだとか。
でも、なかなか見つからないらしい。

その彼にも言ったが、それは恋人や配偶者ではなく「好きな人」を探すようなもので、難易度は非常に高いと思う。
前者なら、適切な手段と意志によって見つけられる可能性があるが、後者は思いがけず琴線に触れないといけないのだから、予測できない。

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#004 行き先はお姉ちゃん(エッセイ)

#004 行き先はお姉ちゃん(エッセイ)

ドラえもん屋さんに、巨大などこでもドアがあった。
横のタブレットに行き先を伝えてどこでもドアを開くと、Google Earthと連動したディスプレイに目的地が映し出される仕組み。

次女の順番になり、勢いよくタブレットに向かう。
そして「お姉ちゃん!」と言った。
焦ったチャットボットが「本当に…?」と確認してきたが、もちろん次女は「はい!」と答えた。

行き先見つけられなくてごめん、とチャットボッ

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#003 娘パンのおかんサンド(エッセイ)

#003 娘パンのおかんサンド(エッセイ)

洗面台の前に立って次女を抱っこしていたら、長女が背中に抱きついてきた。

長女曰く「娘パンのおかんサンドだよ」
わたしは一般的に言って背が高い方なので「具がデカいな」とのこと。

ライ麦パンのハムチーズサンド。
娘パンのおかんサンド。
たっぷりキャベツのカツサンド。
ツナサンド、ジャムサンド、フルーツサンド。
娘パンのおかんサンド。
(美味しそうではないが、語呂はいい)

「お母さんサンド」でも「

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#002 酒飲んで寝てしまえ(エッセイ)

#002 酒飲んで寝てしまえ(エッセイ)

風邪をひいた夫に対し、わたしの父の第一声。

別に、風邪に限らず夫に限らず、父はいつでも誰にでもよく言っている。娘の就職先がうまく決まらなかった時も、残業続きでヘロヘロになっている時にも。

つまり、適当な決まり文句なのだ。

この言葉に具体性はない。信憑性もない。そんなものは最初から存在してなくて、発せられた時点でこの言葉はもう終わっている。
時にそれは「とりあえず休め」であり「落ち込むな」であ

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#001 バカも好き。マヌケも大好き。(エッセイ)

#001 バカも好き。マヌケも大好き。(エッセイ)

大阪のなんば駅で見かけた言葉。
ガチャブランド「パンダの穴」のキャッチコピーだった。わたしはガチャが好きじゃないので知らなかったが、とても有名らしい。

バカもマヌケもネガティブワードだが、どっちも好き(片方なんて大好き)と受け入れられたら、人生が楽しくなったり世界が明るく見えたりするんだろうか。

幸か不幸か、どちらのワードも、言ったことも言われたこともほとんどない。つまり縁がない。

なのに、

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使ってもないのにいたんでいるお薬手帳

使ってもないのにいたんでいるお薬手帳

魔窟みたいに物が詰まっているキャビネットから、すすすっとお薬手帳が転がり落ちてきた。
何気なくペラペラ見ていて気づく。

この2年、風邪をひいて耳鼻科に行っていない。

厳密には、新型コロナの感染拡大が深刻さを急加速させていた2020年3月に、まさかのインフルエンザに罹患して1度内科を受診していた。
もう春になったぞという時期になってからの、あえてのインフルエンザ…

例年、季節の変わり目はいつも

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11月が好きな理由

実家から車で30分ほど走ったところに、世界で一番美しいスターバックス、というスタバがある。
今もそのポジションなのかは知らないが、少なくともかつてはそう言われていた。

11月のとても穏やかな天気の日、そのスタバがある公園は、それはそれは気持ち良い空気に満ちていた。
平日の午後、買ってきたコーヒーを父と母に渡すと、時間は止まってるのに風は吹いているような不思議な空気のなか、わたしは無言で公園内を歩

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おかんをちょっと黙らせて

おかんをちょっと黙らせて

長女も次女もすさまじくおしゃべりなので、休日の朝は「何でもいいから遠くにおって(おかんは眠い)」が第一声。
夜も「口閉じて、もう寝る時間!」と3回くらい言わないといけない。

疲れる。

たいがい夕方くらいには限界が来て「おかん、ちょっとお返事休むね」とことわってから、しばらく何を言われても返事しない時間がある。
「わかった!」と言いつつ、それでもかまわず話し続ける彼女たちのメンタル強すぎ。

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「やろう」だけじゃ信頼できない

「やろう」だけじゃ信頼できない

ディズニーランドに行きたいね。鬼滅の刃のおもちゃ買おうね。お揃いのコート着ようね。

子どもとの会話には希望がたくさんある。要望も含め、そればっかりと言っても過言ではない。

やりたいことの意志表示は、全然悪いことじゃない。いつかできたらいいなと思う気持ちと、実現可能性は、必ずしもいつも同じ天秤には乗っけていないし。親は「やりたいね、やろうね」と相槌を打ちまくる。

だけど、子どもは手厳しい。

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