小岩井ハナ

写真家/映画、演劇、ライブ、書籍などのスチール/水曜どうでしょうの諸々のスチール/20…

小岩井ハナ

写真家/映画、演劇、ライブ、書籍などのスチール/水曜どうでしょうの諸々のスチール/2023年公開予定映画 荻上直子監督「波紋」 岸善幸監督「正欲」スチール撮影

記事一覧

そういうことでもいいのなら#02『天使になりたかった』

春というのはどうもきつい。 街ゆく人がまだ厚手のコートを羽織っていようとも、お構いなしに空や草木はどんどん春の仕様に変わっていく。 周りの役者や音楽家、絵描きた…

小岩井ハナ
2か月前
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そういうことでもいいのなら#01『東京の雪』

東京に雪が降った日に会った人たちのことはなんだかよく覚えている。 その時その時の雪の日にまで会いたかった人たちと、雪の日にまで会える関係性だった人たちと見た東京…

小岩井ハナ
3か月前
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写真集「終焉と萌芽」の売上を「トルコ・シリア地震救援金」に送金しましたの報告

今更の報告となりますが、3月11日に発行しました写真集「終焉と萌芽」の印刷代を差し引いた全ての売上を日本赤十字社の「トルコ・シリア地震救援金」に送金しました。 ご…

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それからの話〜坊主派手シャツ放送作家と大学中退被災者〜

3月1日になった途端、誰しもがあの日を語らなければならないといったような独特の空気が漂い始める。春の息吹と共に社会がざわめくような不穏さだ。 この時期になるといや…

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おばあちゃんの「昔ながらのコロッケ」が認知症でカレーコロッケに変わった話

年末、実家のある宮城に数日間帰省した。 と言っても帰省ラッシュが始まる前にはやぶさに乗り込み、年を越す前にはこまちで東京へ戻ってきたので世間が思う「年末の帰省ラ…

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あの時逃げ出せなかった僕は、8月32日を生きている。

目を覚ます。ヒグラシの声が聞こえる。 外はもう薄暗くて、庭の草木の緑は深い色になっていた。 出しっぱなしの水色のホースが玄関前の芝生の上で項垂れている。 それらが…

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高円誌#03 一本道

「このTシャツ生乾きなんですけど、臭くないすか?大丈夫すかね?」 待ち合わせに10分ほど遅刻した男が高円寺駅のNewDaysの前で何故か照れ笑いをしている。 初対面であるに…

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高円誌#02 Just Like a Boy

遮光カーテンだってのにカーテンレールから光がこんなにも漏れるのだからあまり意味がないように思う。 大学一年の時に買った長めのこの青いカーテンは引っ越すたびに裾を…

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高円誌#01 高円寺に来たことがあるかい

あの白い鉄塔、13本あるんだって。やっくんがそう言ってた。 いつか北口ロータリーの噴水に金魚が放されたことがあったんだけど、あれ、実は鯉だったらしいよ。 社長って…

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小岩井ハナ写真展「どうしてこんなに寂しいんだろう」についてのお知らせ

新型コロナウイルス感染者数の増加と緊急事態宣言要請に伴う 小岩井ハナ写真展「どうしてこんなに寂しいんだろう」開催中止、オンライン写真展移行のお知らせ 1月15日から…

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そういうことでもいいのなら#02『天使になりたかった』

そういうことでもいいのなら#02『天使になりたかった』

春というのはどうもきつい。

街ゆく人がまだ厚手のコートを羽織っていようとも、お構いなしに空や草木はどんどん春の仕様に変わっていく。

周りの役者や音楽家、絵描きたちもちょうど同じ頃にうつ病のような症状を訴え始めるので、きっと私に限ったことではないのだと思う。

それは陽が少し長くなった頃だろうか。

それは暑がりなあなたの寝相が悪くなり始める頃だろうか。

一月の後半くらいから、毎年必ず体調を崩

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そういうことでもいいのなら#01『東京の雪』

そういうことでもいいのなら#01『東京の雪』

東京に雪が降った日に会った人たちのことはなんだかよく覚えている。

その時その時の雪の日にまで会いたかった人たちと、雪の日にまで会える関係性だった人たちと見た東京の僅かな雪景色は妙に忘れがたいものになってしまった。

昨日今日と友人知人らが載せている「誰かとの雪の散歩」の写真がどれも素敵で愛おしさで胸がぎゅっと締め付けられる。

交通状況が悪い雪の日にまで会える関係というのはなんだか特別で、そんな

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写真集「終焉と萌芽」の売上を「トルコ・シリア地震救援金」に送金しましたの報告

写真集「終焉と萌芽」の売上を「トルコ・シリア地震救援金」に送金しましたの報告

今更の報告となりますが、3月11日に発行しました写真集「終焉と萌芽」の印刷代を差し引いた全ての売上を日本赤十字社の「トルコ・シリア地震救援金」に送金しました。

ご購入いただいた皆様、ありがとうございました。

予てより、支援を目的に作品を販売したり表現活動をする事に若干の違和感があったため売上を寄付することは伏せた状態で今回の写真集を販売しました。
(写真集を購入して下さった方にのみ、購入後にそ

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それからの話〜坊主派手シャツ放送作家と大学中退被災者〜

それからの話〜坊主派手シャツ放送作家と大学中退被災者〜

3月1日になった途端、誰しもがあの日を語らなければならないといったような独特の空気が漂い始める。春の息吹と共に社会がざわめくような不穏さだ。

この時期になるといやが応にも2011年の東日本大震災のことが思い出されるし、思い出さないわけにもいかないといったような圧力も感じる。

新聞、テレビ、ラジオ、ネットニュース、SNS、どんな媒体でも様々な「あの日」「あの時」が語られ、いくら震災にトラウマを抱

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おばあちゃんの「昔ながらのコロッケ」が認知症でカレーコロッケに変わった話

おばあちゃんの「昔ながらのコロッケ」が認知症でカレーコロッケに変わった話

年末、実家のある宮城に数日間帰省した。
と言っても帰省ラッシュが始まる前にはやぶさに乗り込み、年を越す前にはこまちで東京へ戻ってきたので世間が思う「年末の帰省ラッシュ」からはほんの少しずれているのかもしれない。

「うちはいつでも正月みたいなもんだから年末年始にこだわらず都合がいい時に帰ってきたらいいよ」という両親からの連絡があったものの、80代の祖父母にあと何度会えるのだろうかと考えると、なんと

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あの時逃げ出せなかった僕は、8月32日を生きている。

あの時逃げ出せなかった僕は、8月32日を生きている。

目を覚ます。ヒグラシの声が聞こえる。
外はもう薄暗くて、庭の草木の緑は深い色になっていた。
出しっぱなしの水色のホースが玄関前の芝生の上で項垂れている。
それらが見渡せる仏間が僕は好きだった。
仏間は家の中で一番風通しが良い場所だった。
襖を開けっぱなしにして縁側の向こうの庭をぼんやり眺めたり、そこで漫画を読んだり絵を描いたりして夏休みを過ごす事が多かった。

何より、仏壇の上にかけられたご先祖さ

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高円誌#03 一本道

高円誌#03 一本道

「このTシャツ生乾きなんですけど、臭くないすか?大丈夫すかね?」
待ち合わせに10分ほど遅刻した男が高円寺駅のNewDaysの前で何故か照れ笑いをしている。
初対面であるにも関わらず遅刻したことも、挨拶も早々に生乾きのTシャツの匂いを遠慮がちに「嗅ぎますか?」と嗅がせて来ようとすることにもあまり驚きはしなかった。だってここは高円寺だから。

それよりも片手を首の後ろに当ててぽりぽりと掻きながら照れ

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高円誌#02 Just Like a Boy

高円誌#02 Just Like a Boy

遮光カーテンだってのにカーテンレールから光がこんなにも漏れるのだからあまり意味がないように思う。
大学一年の時に買った長めのこの青いカーテンは引っ越すたびに裾を安全ピンなんかでとめて長さを調節して使い続けている。
眠れずに何度このカーテンの隙間から漏れ出る朝陽を眺めたことだろう。

夜眠れない代わりに朝眠れるという話でもない。
同様に夜眠れないのなら夜活動すればいい、という前向きな話でもない。

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高円誌#01 高円寺に来たことがあるかい

高円誌#01 高円寺に来たことがあるかい

あの白い鉄塔、13本あるんだって。やっくんがそう言ってた。

いつか北口ロータリーの噴水に金魚が放されたことがあったんだけど、あれ、実は鯉だったらしいよ。

社長ってあだ名のホームレスは3回刑務所に入っているし、顔がバラバラおじさんは今日も元気に歌っている。

島田はいつも笑ってくれるけど自分の話はなかなかしてくれないし、りえちゃんは少しくらい悲しくても笑っている。

タブチのカレーの皿はスケボー

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小岩井ハナ写真展「どうしてこんなに寂しいんだろう」についてのお知らせ

小岩井ハナ写真展「どうしてこんなに寂しいんだろう」についてのお知らせ

新型コロナウイルス感染者数の増加と緊急事態宣言要請に伴う
小岩井ハナ写真展「どうしてこんなに寂しいんだろう」開催中止、オンライン写真展移行のお知らせ

1月15日から19日に開催を予定しておりました
小岩井ハナ写真展「どうしてこんなに寂しいんだろう」の会場での開催を中止し、ネットでご覧いただけるオンライン写真展に移行することを決定いたしました。

お越しいただく予定を立ててくださっていた皆さま、直

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