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【次世代の振り飛車】右四間飛車と袖飛車の可能性を考える

将棋界の上位陣の対戦、第80期名人戦・順位戦A級、B級1組で振り飛車が勝てていない。3局とも、序盤から振り飛車が指しづらそうにしていて、見えない不利感が後半に具体的な差となって現れることが多い。

三間飛車が敗戦:▲菅井八段ー△糸谷八段
三間飛車が敗戦:▲久保九段 − △佐々木(勇)七段
 中飛車が敗戦:▲千田七段 − △久保九段

個人的には、飛車を振る一手を金駒にかける一手と交換したとき、後者の方が価値が高いと考えている。居飛車サイドからすれば、急戦では中飛車に対して銀を速めに繰り出して圧迫したり、持久戦では三間飛車よりも堅い松尾流穴熊が組めたりといったメリットがある。堅さで対抗しようとしても、振り飛車穴熊は飛車を振る1手の遅れがそもそもあって余計に完成が遅れるし、金駒を玉側へ寄せてガチガチになるまでに戦いが始まることが殆どだ。振り飛車党の方はこの何とも言えない手遅れ感をうすうす感じているはずだ。飛車を振る1手がもったいないとなればいよいよ「振り飛車は終わった」とささやかれたとしても仕方がない。

向かい飛車、三間飛車、四間飛車、中飛車では余り勝てなくなるかもしれないが、まだ右四間飛車と袖飛車が残っている。厳密には振り飛車にカテゴライズされないこの2つだが、戦法としては理に適っている。理由は飛車と角の利きの交点にある。先手番居飛車では飛車・角の交点は2二にあるが、袖飛車では3三、右四間飛車では4四と敵陣の要所で交わっており、そこに銀桂を参加させて破壊力のある攻撃ができるためだ。

とりわけ、右四間飛車は攻防バランスが良く、矢倉や角換わり、対抗形でも使えるオールラウンドな戦法だ。専門に取り扱った棋書も何冊か出版されている

一方、袖飛車は最初から目指すというよりも相手の出方を見て袖飛車にするイメージが強い。3三には角桂が最初から利いており、いずれ金駒も守るとなれば簡単に突破することはできない。だが、目標物があれば話は別だ。例えば、対抗形のような3三角と上がって角頭を攻められる場合や(舟囲いのような)3二玉型など相手の作戦次第では限定的に有効と言えるだろう。ゆえに、現状は「なんでも袖飛車」が良い作戦であるかどうかは分からない。

袖飛車は両のコビンが弱点であり、また右桂が跳ねづらいためかプロ・アマ関係なく好んで指している人を自分は見たことが無い。袖飛車は将棋においてはまだ未開拓の戦法であり、専門棋書も80年代以降出版されていない。一部での紹介に留まるなら奇襲戦法として書かれていることが多い。一戦法として確立させるにはある程度の研究が必要だろう。人が指さない戦法だからこそ、自分だけ研究をすれば盤面を支配できるはずなのだ。

果たして、序盤の研究が進んで右四間飛車と袖飛車が次世代の振り飛車となる未来はやってくるのだろうか。

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