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【将棋】渡辺名人による贅沢なAIを活用した研究方法の解説

youtube ではプロ・アマ問わず将棋の解説や実戦動画を投稿している。しかしながら、多くのそれはアマ有段者・高段者向けに偏っていて、棋力ピラミッド上位の極少数の需要を満たすだけに留まる。投稿者の説明をかみ砕き、理解するにはどうしてもある程度の棋力が必要になるから仕方がない面もあるだろう。個人的な印象を言えば、この現状は将棋の初心者・初級者に対して排他的・閉鎖的であって、これから入門しようとしている人を心理的に遠ざけている一因(見えない壁)になっているような気がしている。

【引用】渡辺明名人の将棋講座【現代トップ棋士の研究とは】
(チャンネル名:戸辺チャンネル)

そんな中、渡辺名人による贅沢な定跡講座が投稿されていた。見てみると、確かに将棋の定跡の中身に関してはアマ有段者・高段者レベルではあった。が、実際は現代のプロ棋士のAIを活用した研究は具体的にどういったことをしているのかを説明するための題材としてこの図を選んだという意味合いが強かった。要点は次の2つで、これらの意味は初心者でも理解できると思う。

1.AIは評価値を示すだけで、優劣を判定した理由を教えてくれない
2.その理由を人が論理的に説明づける作業が「研究」だが、かなり難解

(研究にAIを用いている棋士限定だが)何気ない序盤の1手はAIを利用した膨大な研究の裏付けがあって指されている。だからこそ、指された手の本質的な意味を初見で理解するのは極めて難しい。素人には「ふーん、普通の手だな」としか映らないものの、そこにはちゃんとした理由が存在しているのだ。

研究の1手を指した何十手も未来の局面で、従来結論付けられていた勝敗がひっくり返っていることにようやく対戦者は気づかされるものの、時すでに遅しの状態だ。プロの序盤はちょっとした小競り合いはするけれども、派手な戦いはしない。一見すると地味な(その時は意味がイマイチ分からない)手の応酬に見えるのだけれども、その実は勝敗に直結するような伏線手を繰り出している。研究などまるでしていない素人はその意味を正しく汲み取ることができず、その図だけを見てフィーリングで好き勝手に解釈する。棋力と準備の面で開始前から大差だとこれほどの違いがでる。

他チャンネルでは腐るほどやられているような将棋の解説をゴリゴリにするのではなく、AIを活用した現代将棋の研究方法をテーマに現名人が(!)語るというのがとても新鮮だった。また、初心者でも「へぇ」と思えるような内容に仕上がっていたのが好印象で、贅沢を言うみたいだが機会があればまた新たなテーマについて語って欲しいなと思えた。

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