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失われた能力は補われる

ずいぶん以前のコラムで触れましたが、当社には「クレーム対応に関する方針」というものがあります。

そこで謳っている基本姿勢としては、「お客様はいつも正しい」ということ。

決して、お客様の主張が全て正しいというわけではなく、「私たちの言動の何らかが、お客様にご不快な思いを与えてしまった」という点に関して、お客様が傷つかれたという事実は「まさしくそのとおりである(正しい)」という捉え方をしています。

ですから、クレーム対応の目的はというと「私たちが傷つけてしまったお客様の心を癒すこと」となります。

そうした基本姿勢はありつつも、中には理不尽なクレームもあります。

理不尽なクレームの判断は、社長である私がしていくこととなりますが、こうした場合には相手は「お客様ではない」という方向に舵を切って対応していきますので、基本姿勢には当てはまらなくなります。

過去の経験から言いますと、大抵の場合は私たちが間違っていることの方が多いですが、やはり中には「お客様ではない」という判断をせざるをえないケースもありました。

今回、触れますのはそうした対応の中で何となく感じたことについて。

理不尽な主張については様々な内容のものがありますが、感情的になられているお相手というのは意外と対応がしやすい場合が多いです。

と言うのも、「相手に対しての共感」がほぼ芽生えませんから、「会社」対「理不尽なクレーマー」という分かりやすい対立構造が成立するからです。

相手がお客様ではないという判断が下されれば、あとは従業員と会社を守るために断固とした姿勢にて対応していくだけです。

ところが、たまにこの「相手に対しての共感」を芽生えさせてしまい、クレーム対応していたスタッフが「自分たちの方が間違っているのではないか」と気持ちが揺らいでしまい、断固とした姿勢が取りづらくなってしまうケースが生じることがあります。

振り返ってみますと、こうしたケースのお相手には共通点があるような気がします。

それは、意識はしっかりとされているにもかかわらず、身体に重度の障害をおわれている方に多いという特徴です。

視力を失った人は、聴覚など他の感覚が鋭敏になるという話を聞きます。

手を失った人は、足をまるで手のように器用に使えるようになるというケースもあります。

生きていく上で、活動に際して必要な他の能力を突出させることで、欠けてしまった機能を補っていくというのは何も人間に限った話ではありません。

そして、世の中には全く動けないにも関わらず、おひとり暮らしをされている方が大勢いらっしゃいます。

それでは「ひとりでは行動できない人」は、その代わりにどのような能力が突出するのでしょうか。

これはあくまでも個人的な見解でしかありませんが、そうした人は「言葉で他者を動かす能力」が突出するのだと思っています。

事実、動けないのにひとり暮らしを継続されていく中では、日々多くの人たちが関わっていきます。

これもひとつの特徴ですが、こうした中には、自分の人生をその人のために捧げているのではないかと思えるような、ある種の信者みたいな人が必ずと言っていいほどいらっしゃいます。

我々のような介護事業者が関わる場合もありますし、こうした信者のような方がスタッフとして働いている場合もあります。

そして、スタッフの転職に伴って、生活を支えてきたお相手も一緒にサービス事業者を変えるというのは、この業界では結構あることです。

また驚くことに、お客様の方がサービス事業者を変えるからということで、そのために信者であるスタッフの方がわざわざ新たなサービス提供先の方へ転職していくなんていうケースも中には発生しています。

会社との契約とは別に、言い方が悪いですが「教祖と信者」のように、見えないある種の主従契約のような関係性が成立してしまっているのです。

教祖という表現をしましたが、まさにある種の洗脳に近いのだと思っています。

言葉巧みに自分に必要なことを伝え、それを受けた相手はおそらく本人も気づかないうちに行動させられている。

見えない言葉の糸に絡めとられて、その人の思いを形にしていくために共存していく立場へと知らず知らずのうちになっていく。

これは、良い悪いの話なのではなくて、やはりある種の能力なのだろうなと思っています。

ともあれ、動ける方であろうと動けない方であろうと、お客様であればきちんと向き合ったクレーム対応を致しますが、そうでないお相手であれば、あの手この手の搦め手によって洗脳されたスタッフを含めてしっかりと守っていくのが会社だと考えています。

今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。

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