あやみ@20代で自死遺族

28歳で夫が自死。その後、私自身が躁うつ病発症。 まる5年経ったいま、その時の記憶と今…

あやみ@20代で自死遺族

28歳で夫が自死。その後、私自身が躁うつ病発症。 まる5年経ったいま、その時の記憶と今の気持ちを記録していきます。苦しみだけではなく、今を大切に思う気持ちや希望も書いていきたい。 苦しみの淵にいた、あの時の私に宛てて。

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固定された記事

#000ある日、いきなり死にかけた

夫が亡くなったのは、2018年11月のことだった。享年28歳。 薄々は悪化していく異変に気づいていたものの、「私の気を引きたいだけ」と深く考えないようにしていたのは事実…

#009 コトバは沁み入るものだから

このエッセイをここまで読んでくれている人たちは、どんな方達なんだろうと、今、書きながら考えています。 noteのおすすめでたまたま出てきましたか? それとも興味を持っ…

#008 音が消えた

消防車とパトカーが私のマンションの前に停まっている。救急車のサイレン音が聞こえて、また前に停まる。 私の耳が、その時に音を捉えられなくなった。目の前の景色からの…

#007 カフェ

悪いことが起こったその日は胸騒ぎがした。そんな話を聞いたことがある人も多いと思う。本当だった。 あの日。夫の母、つまりは義母から電話が入っていたことから私の胸騒…

#006 11月4日

2018年11月4日。最後の結婚記念日。 鳥取にある田後港に釣り旅行にいった。私たちの共通の趣味が釣りだったこともあり、記念日は釣りに行っていることが多かった。この田後…

#005 悪者のいない地獄

1回目の自殺未遂から、夫の病状は大きく波を打つことになる。1週間のうちで元気な日は、釣りにいきたいと出掛けていったり、夜中に友達と遊んだりする。元気のない日は、…

#004 少し明るいおはなしをしたい

ここまで続けて読んでくれた方たちに、きっとしんどい思いをさせてしまっているのではないかと思いました。 しんどい中、ここまで読んでくれてありがとうございます。 この…

#003「時が経てば」は半分ホントで、半分ウソ。

今回、苦しい思い出を吐き捨てるために、筆を取ったわけではない。 ただ、本当に、あの時の先の見えない暗闇に入っていく感覚は、思い出すと狂いそうになるくらいの不安だ…

#002綻びはじめたのは。(後)

「中程度うつエピソード」 夫が初診で言われた診断名だ。初診できちんとした診断がつくわけではない。そのことが、今だったら少しわかる。夫が本当にうつ病であったかどう…

#001綻びはじめたのは。(前)

あとから思い返してみると、夫の病気の変調が見え始めたのは、2018年の1月後半からだったように思う。今でもずっと私自身が忘れられず、夫の病気のトリガーになったと思わ…

#000ある日、いきなり死にかけた

#000ある日、いきなり死にかけた

夫が亡くなったのは、2018年11月のことだった。享年28歳。
薄々は悪化していく異変に気づいていたものの、「私の気を引きたいだけ」と深く考えないようにしていたのは事実だった。
2018年の4月から夫は会社を休職した。通院を続けるものの、夫の精神状態がひどく乱れるようになり、私自身も精神的疲労でまいっていき、「このままだと共倒れする!」と焦った私が離婚を切り出した2日後、夫は自宅で首を吊り亡くなっ

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#009 コトバは沁み入るものだから

#009 コトバは沁み入るものだから

このエッセイをここまで読んでくれている人たちは、どんな方達なんだろうと、今、書きながら考えています。
noteのおすすめでたまたま出てきましたか?
それとも興味を持ってくれて、読み進めてくれているのでしょうか?
私と同じように、自死遺族の方が読んでくれることがあればと思いながら書いています。ここまで、ずっとつらい内容でしたね。

正直、初めてエッセイを書いてみて、とても難しいし、思い出を掘り起こす

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#008 音が消えた

#008 音が消えた

消防車とパトカーが私のマンションの前に停まっている。救急車のサイレン音が聞こえて、また前に停まる。
私の耳が、その時に音を捉えられなくなった。目の前の景色からの音がフッと消えた瞬間、直感的に夫は死んだのだろうと確信した。まだマンションまで辿り着かない、マンションの向かいの道路で、ひとりで確信してしまったのだ。

すぐにマンションに向かって、エントランスにいた警察官に声をかけた時に、上から義母の大き

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#007 カフェ

#007 カフェ

悪いことが起こったその日は胸騒ぎがした。そんな話を聞いたことがある人も多いと思う。本当だった。
あの日。夫の母、つまりは義母から電話が入っていたことから私の胸騒ぎが始まった。確かに胸騒ぎがする事柄なので当たり前だが、この頃は特に頻繁にやり取りをしていたので、特におかしいことではないのだが、異常なほどの焦りと胸騒ぎを感じて電話を掛け直し、要件を聞いた。

夫が昨日から実家に帰っておらず、今日も連絡が

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#006 11月4日

#006 11月4日

2018年11月4日。最後の結婚記念日。
鳥取にある田後港に釣り旅行にいった。私たちの共通の趣味が釣りだったこともあり、記念日は釣りに行っていることが多かった。この田後港に行くのも3回目で、遠征場所としては馴染みがあって、2人の思い出の場所のひとつ。鳥取生まれの人にもあまり知られていない、私たちの小さな大切な場所。

夫が突然言い出したのだ。「記念日は鳥取に行きたい。」
その頃、私は新しい部署には

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#005 悪者のいない地獄

#005 悪者のいない地獄

1回目の自殺未遂から、夫の病状は大きく波を打つことになる。1週間のうちで元気な日は、釣りにいきたいと出掛けていったり、夜中に友達と遊んだりする。元気のない日は、食事もほとんど摂らず、家でぼーっとしていることも多い。
そんな中で一度目の自殺未遂以降、大きく変わったことがあった。
私への攻撃だ。しかも、非常に激しかった。他の人からそのような話は全く聞いたことがないので、おそらく私だけだったのだろう。

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#004 少し明るいおはなしをしたい

#004 少し明るいおはなしをしたい

ここまで続けて読んでくれた方たちに、きっとしんどい思いをさせてしまっているのではないかと思いました。
しんどい中、ここまで読んでくれてありがとうございます。
このあとも、しばらくは苦しい場面は続くのですが、そのあとは山あり谷ありながら、今の穏やかで、落ち着いた、彩りのある生活のお話に続いていきます。

「少し明るいおはなし」と題うってみたものの、何が明るいのかと、どうしても躊躇してしまうのです。

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#003「時が経てば」は半分ホントで、半分ウソ。

#003「時が経てば」は半分ホントで、半分ウソ。

今回、苦しい思い出を吐き捨てるために、筆を取ったわけではない。
ただ、本当に、あの時の先の見えない暗闇に入っていく感覚は、思い出すと狂いそうになるくらいの不安だった。もしかしたら、今、この散文を読んでくれている人の中にも、大切な人が病気になり、同じように辛い経験をした人がいるかもしれない。自分自身が大病になり、どうしようもなく暗闇に落ちてしまった経験の人もいるかもしれない。

夫が亡くなってすぐの

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#002綻びはじめたのは。(後)

#002綻びはじめたのは。(後)

「中程度うつエピソード」
夫が初診で言われた診断名だ。初診できちんとした診断がつくわけではない。そのことが、今だったら少しわかる。夫が本当にうつ病であったかどうかはわからない。ただ、その時は、医療機関に繋がったこと自体に少し安心したのを覚えている。私も夫と同じく福祉関係の相談業務に携わっていた。だからこそ、医療機関に繋がらないことの難しさを知っていたからこそ、医療機関に繋がったこと、そして診断書を

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#001綻びはじめたのは。(前)

#001綻びはじめたのは。(前)

あとから思い返してみると、夫の病気の変調が見え始めたのは、2018年の1月後半からだったように思う。今でもずっと私自身が忘れられず、夫の病気のトリガーになったと思わずにはいられない出来事が起こった直後だ。

2018年の1月上旬に、私自身に「脳下垂体腺腫」が見つかった。長年の生理不順。というよりも、すでに無月経の状態であったために婦人科を受診した。あるホルモンの値が異常値を示していたため、大学病院

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