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【読書感想文】村上春樹「風の歌を聴け」

こんばんは!
「あの有名作品」で感想文、小栗義樹です!

本日は水曜日ですね!というわけで読書感想文を書かせて頂きます。
僕が好きな本、読んだ本を題材に感想文を書くという試みです。この感想文を通して、題材となった本に興味を持っていただけたら、書いている僕からするととても嬉しく思います。

本日の題材はコチラです

村上春樹「風の歌を聴け」

です。

冒頭「あの有名作品」と書きましたが「あの」って言葉は面白いですよね。僕からすると「あの」という言葉には「市民権」とか「普遍性」といった意味があるように感じます。つまり「あの」という言葉はつけるだけで、定番作品という言葉を有名という意味を損なわずに伝えることが出来る、非常に便利で特別な言葉だと思うのです。

そうなると、当然「あの有名作品」という言葉を作品に付与する場合、慎重かつ厳密な審査が必要になるわけですが、この作品の場合は「伝説の産声」というバリューがある時点で、あの有名作品という称号を付与してもいいと、多くの方が納得して下さるのではないでしょうか?

風の歌を聴けは、村上春樹さんのデビュー作品です。

小説は、短編こそ作家の力が発揮されるなんて言葉を聞いたことがありますが、そんな作家が小説で伝えていきたいメインとなるテーマ・テーゼはデビュー作に宿っていると思います。

風の歌を聴けという小説のあらすじを簡単に説明すると、夏に地元に帰省した主人公の僕が友人と共に毎日ビールを飲んだくれるというものです。こうやって書くとつまらなさそうですが、本当にこれだけです。

逆に、これだけの舞台設定で「特別な力」や「奇妙な運命」などの非日常感もなく、めちゃくちゃ興味深くて面白い話をこしらえることが出来るから、村上春樹さんはすごい作家なのだと思います。

この作品は、徹底的に大衆に向けて作られた作品だと思います。まず主人公の立ち位置が凄いです。このお話には、主人公の「僕」の他に「鼠」という主人公の友人が出てくるのですが、読んでみて、鼠の方が主人公っぽいなと思う場面が多々あります。

明らかに、この鼠という人間の方が「自分の意志で何か行動を起こす」「自分の考えや意見などをはっきり言う」といった主人公気質な一面を持っていて、どちらかというとお話を進めてくれるであろう問題が降りかかりそうなのは、この鼠という人間の方なのです。

では、主人公の「僕」は何をしているのか?

この主人公は、そんな鼠や他に登場する主要な人物を「ただ眺めている」だけなんです。これは後の村上春樹さんの作品にも多様される構成だなって思います。グレートギャツビィによく似ていますよね。

だからこそ、主人公の目線で展開されるお話を読んでいるといつの間にか共感できるシーンがいくつか出てきます。当然、毎日の飲んだくれ生活の中にも、お話を進める上でのちょっとした不思議みたいなものはあるわけですが、その不思議に主人公が直面、あるいはその不思議を主人公が解説(と言えばいのでしょうか?笑)したりした時の主人公のちょっとした変化・気づきに納得してしまうのです。

また、風の歌を聴けは文章の書き方もオシャレです。目まぐるしい場面転換や、お話に必要なお話を参考資料かのごとく物語にぶっこんでいくスタイルは、今でこそ当たり前かもしれませんけど、村上春樹さん以前の日本の文学作品にはあんまり見られませんでした。つまり、この書き方を日本でメジャーなものにしたのは村上春樹さんと言えるわけです。

アメリカ文学の影響を受けているというのが有名ですが、音楽で言えばニューウェイブに近い手法だと思います。この作品が出た頃は、YMOなどのミュージシャンが流行っていたので、そういうカルチャーの波がこれから来ることを予感させる感じが節々に散りばめられているのも、見どころの1つなのではないかなぁと思います。

風の歌を聴けの中にぶち込まれている、ハートフィールドという物語上の作家が書いた火星の井戸。ここにはタイムスリップや異世界もののノリが含まれていて、読んでてとても面白いなぁと思いました。

他にも感じたことは沢山あるのですが、この作品には村上春樹さんが過去に受けてきた影響や後に描かれる村上春樹作品に通ずる様々な要素が盛り込まれているという点に絞って、感想を述べてみました。

この作品は比較的短い作品ですが、まだまだ語れる点が沢山あります。いずれまた、別の視点から感想文を書きたいなと、そんな風に思える作品です。

機会があればぜひ読んでみてほしいなと思います。

というわけで、本日はこの辺で失礼いたします。
また明日の記事でお会いしましょう!
さようなら~

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