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図書館

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図書館全般についての記事をまとめています。
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#図書館

「20分で3品」司書

「20分で3品」司書

よく料理で、「揚げ○○の××あんかけ」みたいな手のかかるレシピに挑戦したり、「フォアグラのトリュフソース添え」みたいな高級食材を使いたがる人がいます。

でも家庭で求められるのはそんなことではなく、「冷蔵庫にある賞味期限が迫っている食材を組み合わせて20分で3品作れ、しかもちゃんとおいしい」ことだったりしますね。おなかをすかせた家族を待たせないことのほうがたいせつです。

図書館でも同じようなこと

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おなじ本?ちがう本?:図書館における「書誌の同定」というお仕事

おなじ本?ちがう本?:図書館における「書誌の同定」というお仕事

図書館では「これとこれは同じ本なのか」という判断を迫られる場面がけっこうあります。
「これとこれ」は本と本のこともありますが、多いのは書誌データと本、または書誌データと書誌データです。
いちばん関係あるのは目録担当者ですが、レファレンスや相互利用、選書、除籍などでも避けて通れません。この判断を誤ると、求める本と違う本を利用者に提供してしまったり、すでに所蔵していることに気づかず重複発注してしまった

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アイデンティティ崩壊した図書館の末路

アイデンティティ崩壊した図書館の末路

よくビールの新商品PRで「ふだんビールを飲まない方や、苦手な方にも楽しんでいただけるよう、ビール独特の香りや苦みを抑え、すっきりと飲みやすく仕上げました!」と謳っていることがあります。

私などはビール好きで、それもベルギービールのような個性的で味の濃いビールが大好きなので「だったらビールなんか飲むなよ!そんなにすっきりがいいなら水を飲め!」とつい思ってしまいます。
実際に飲んでみても、どうもビー

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図書館のお仕事紹介(18)予算折衝

図書館のお仕事紹介(18)予算折衝

世の中のたいていのものと同じく、図書館も運営するにはお金が必要です。

ただ違うのは図書館には無料の原則というものがあり、どんなにがんばって入館者数や貸出冊数やレファレンス件数を増やしても、それで儲かるわけではありません。
(※館種によっては利用料を徴収するところもあります)

そこで、財源としての所属組織から予算を獲得する、というのが重要な仕事になります。

もちろん私のような下っ端が予算折衝に

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図書館のお仕事紹介(17)貸出・返却

図書館のお仕事紹介(17)貸出・返却

「図書館の仕事って、カウンターで貸出返却してるだけでしょ?誰にでもできるんじゃないの?」
これは図書館に対するありがち誤解ナンバーワンですが、それに対して反論すると「いや貸出返却は仕事全体のごく一部で、ほかにもレファレンスとか受入・分類・目録・装備とか蔵書点検とか除籍とか展示とか修理とか…」と長くなるので、それがこの「図書館のお仕事紹介」シリーズを始めた動機にもなっています。
しかし、シリーズ17

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「歴史」というキーワードで歴史の本を探すとどうなるか

「歴史」というキーワードで歴史の本を探すとどうなるか

図書館内には蔵書検索用のPCが何台かありますが、ときどき利用者が検索結果表示画面を開きっぱなしで行ってしまうことがあります。
見つけしだい画面をクリアしていますが、図書館員としては、利用者さんがどういうキーワードで検索したのか気になって、つい見てしまいますよね。

ある日、学生さんと思しき人が例によって画面を放置したまま本を取りに行ってしまったので、見ると「歴史」というキーワードで検索していました

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図書館のお仕事紹介(15)巡回

図書館のお仕事紹介(15)巡回

半端な時間にちょっと手が空いたな、というときは、館内を巡回することにしています。

警備上の巡回は警備員さんがしてくれているのですが、図書館員の巡回は別の目的があります。

「巡回している自分の姿を利用者に見せる」ことです。

「図書館員だけど質問ある?」みたいな顔で、ゲーム画面のモブキャラ的に館内をうろうろしつつ、書架の乱れを直したり、困っていそうな人にお声がけしたり、問い合わせを受けたりするわ

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図書館のお仕事紹介(14)利用案内・利用者教育

図書館のお仕事紹介(14)利用案内・利用者教育

利用案内と利用者教育は、広い意味ではレファレンスサービスの一種かと思いますが、単独で紹介されることがあまりないので、項目を立ててみました。

図書館員の使命として「利用者の時間を節約する」ということがあります。
「この本が見つかりません」「探し方がわからない」といった問い合わせについては、こちらが探して本を持ってきたほうが早いので、そうすることも多いです。

ただあえて「利用者が次から自分で見つけ

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翼のあるものは飛びたがる

翼のあるものは飛びたがる

よく求人広告で「誰にでもできる簡単なお仕事です♪」みたいなものがあって、見ると今働いている図書館より時給が良かったりします。
もちろん広告が大噓で、実際は超過酷な仕事、という可能性もありますが、仮に広告どおりだったとして、じゃあ転職しようか、とはなりません。
「誰にでもできる簡単な仕事」というのはかえって拷問じゃないかと思うからです。
むしろ「そこそこの知能が前提で、それなりの努力と研鑽が不可欠、

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図書館のお仕事紹介(13)修理製本

図書館のお仕事紹介(13)修理製本

昔から書籍修理には興味があり、製本教室に通ってみたことがあるのですが、そこでわかったのは「自分は不器用過ぎて製本家になれない」ということでした。
専門知識以前に「定規にカッターをあててまっすぐ切る」「紙に糊を塗って貼り付ける」といった工作の基本がまともにできないのですね。もともとモノはつくるより壊すほうが得意で、家電なども触っただけで壊すので「手から破壊のビームが出ている」疑惑もあり、家人からデス

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図書館のお仕事紹介(12)展示

図書館のお仕事紹介(12)展示

今回は、図書館業務にしては華やかな部類と言える展示についてご紹介します。

ふだんの業務で一番多いのは「新着展示」ですね。新しく入った本をすぐに配架せず、新着本コーナーに展示します。

もうひとつは「テーマ展示」です。よくあるテーマは季節行事(ひな祭りとかクリスマスとか)、推薦図書、人物関連、時事問題、貴重書や郷土資料の紹介などでしょうか。

作業の流れとしては「展示テーマを決める」→「資料の調査

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人にはどれだけの蔵書がいるか

人にはどれだけの蔵書がいるか

「図書館の人って、自宅にもさぞたくさん本があるんでしょうね?」と言われることがあります。

もちろん人によります。本の山に埋もれて暮らしている人もいれば、そもそも本好きではなく自宅に本などない、という人もいます。

ちなみに私は、自宅の蔵書を数えてみたところ、漫画や雑誌を入れても、430冊くらいでした。日本人の平均値より多いかもしれませんが、本好きとしては少ないのではないでしょうか。

自室に天井

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図書館のお仕事紹介(11)相互利用

図書館のお仕事紹介(11)相互利用

相互利用とは、要するに図書館同士でやる本の貸し借りです。
(Inter Library Loan、略してILLともいいます)
「自館に登録している利用者からの依頼で、他館の所蔵資料を利用させてもらう」業務と「他館からの依頼で、自館の所蔵資料を提供する」業務になります。

さらにそのなかで、本そのものを貸し借りする「現物貸借」と必要なページだけコピーして送ってもらう「文献複写」に分かれます。

さら

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図書館のお仕事紹介(10)レファレンス

図書館のお仕事紹介(10)レファレンス

今回はいよいよ図書館の花形業務、レファレンスのご紹介です。

今頃になってしまったのは、そもそも私はレファレンス専門の担当者でもなく、例によって「何でも屋」として他業務の合間にバタバタとレファレンスもやっているだけなので、私ごときに語れることがあるのか不安だったからです。
(実際世の中には「レファレンスの鬼」みたいなすごい専門の司書がいて、事例集などもいろいろと発信されています)
とは言え最近はレ

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