晴れる

図書館司書。図書館業界、読書術、書評、仕事と生活のあれこれを書いてます。

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マガジン

  • 料理・食生活

    しがない図書館員の食生活術、効率よくおいしいものをつくる工夫です。

  • 「提案」シリーズ

    社会制度改革の提案集です

  • 図書館

    図書館全般についての記事をまとめています。

  • 【小説】おいしいものを、すこしだけ(無料版)

    図書館司書が書く、図書館司書の登場する小説です。 全23話(完結済)

  • 図書館のお仕事紹介

    あまり一般で紹介されないマニアックな業務を解説しています。

最近の記事

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図書館のお仕事紹介(番外編) とある司書の一日

これまで図書館の各業務について個別にご紹介してきましたが、では具体的に私の一日のなかでどういう流れになっているのかを解説してみようと思います。 実際には時期によって業務は異なり、たとえば蔵書点検の時期は朝から晩までぜんぶ蔵書点検だったりしますので、比較的バランスの良い日を想定しています。 また、規模の大きな図書館では担当業務がもっと細分化されていることが多いのでここまであれこれやっていないでしょうし、逆にワンオペの図書室などではひとりですべての業務をこなさなければなりません

    • 信用できない言葉・3選

      ①率直に批判してください賭けてもいいですが、そう言う人は率直に批判すると怒ります。 「率直に批判してください」と言われてわかることは「率直に批判していいんだな」ということではなく「この人は批判するのに自分の許可が必要だと思っているのだな」ということです。 「率直に批判してください」が意味するのはせいぜい「批判に見せかけて実はそれほど批判ではないことを言ってほしい」とか「自分の許容範囲内で批判してほしい」とかいったことです。 逆に「自分は弱メンタルなので批判しないでください

      • パンがないなら、ソーダブレッドを焼けばいいじゃない

        各種物価高騰に加え、追い打ちをかけるように米も高いとか、なんなら売ってないとかいう今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。 パン屋さんも大変だろうなと思うのですが、この価格だと私のような者にはたまのご褒美ならともかく、日々の食事としてベーカリーでパンを買うというのはちょっとためらってしまいます。 というわけで、ソーダブレッドを焼くことにしました。 ソーダブレッドのいいところ何と言っても簡単、そして失敗しないところです。 普通のパンと違ってイースト菌を発酵させるとか、寝かせ

        • 大河ドラマ『光る君へ』での武士批判について

          私は「信長・秀吉・家康」的な歴史ドラマはそんなに観ないのですが、今回の大河ドラマは初めて平安貴族を主人公にしたものとあって、初回から興味を持って観ています。 前回の放映でおっと思ったのは、武士の台頭を危惧するような台詞が出てきたことです。 (たしか「このままでは武力によって支配しようとする者たちがのさばってしまう…!」みたいな主旨だったと思います) 同時に朝廷が武力を持つことを促すような台詞も出てきます。 たしかに「征夷大将軍」という地位を設定してその後の武家政権の礎を準

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        図書館のお仕事紹介(番外編) とある司書の一日

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        記事

          配偶者控除で優遇されているのは主婦ではありません

          配偶者控除という制度をざっくり表現すると「妻の年収が低いと夫が税金をまけてもらえる」&「妻の年収が低いと妻の所得税や社会保険料がかからない」制度と言えるかと思います。 (妻が夫を扶養している世帯もあることは承知していますが、説明を簡単にするため、この文章では納税者=夫、被扶養者=妻と表現することをご容赦ください) この「年収が低い」認定のボーダーラインが103万とか130万とかなので、「103万の壁」「130万の壁」と言ったりしています。 この制度の廃止をめぐる議論で、よ

          配偶者控除で優遇されているのは主婦ではありません

          通勤中に音楽を聴かなくなったら、ディラン効果がひどくなった話

          「ディラン効果」をご存知でしょうか。 「ある瞬間から頭の中で同じ音楽が繰り返し再生されて止まらない」状態を指します(イヤーワームとも言うそうです)。 さて、私は電車通勤中に音楽を聴くのをやめて1年以上になります。 やめた理由は「人身事故による遅延」のような重要車内アナウンスを聞き逃したことがあって耳を塞いでいるのが不安になったのと、やはりイヤホンの長期使用は耳に悪いのではと思ったからです。 これはこれで軽快なので良かったのですが、最近ふと「もしかしてディラン効果が増えてな

          通勤中に音楽を聴かなくなったら、ディラン効果がひどくなった話

          書見台のすすめ

          本を読むとき、大活躍してくれるのが書見台です。 見出し画像の書見台はむかし実家の親をそそのかし、通販で買ってもらったものですが、もう20年くらい愛用しています。 書見台を使うメリット眼が疲れない 本を水平に置いて読むと、意外とページの上下で眼との距離に差があって、焦点を合わせるのに疲れます。 (下のほうが近く、上が遠くなるわけですね) 書見台に立てることによって眼との距離を適切に保つことができるので、眼の疲れ方が全然違います。 固定されているので、手で持ったときのようなブ

          書見台のすすめ

          図書館におけるブルシット・ワーカーの事例

          図書館に、こんな人がいます。 仮にXさんとします。 Xさんは職員として図書館に出勤しているので、傍目には「司書さん」に見えるかもしれませんが、まったく司書ではありません。 人事異動で図書館に配属された一般職員です。 貸出・返却やレファレンスなどの利用者対応、配架や書架整理、本の装備や分類・書誌データ作成、展示の企画、壊れた本の修理など、世間でイメージする図書館司書の仕事はいっさいやっていません。 私の見る限り本好きでもなく、まして図書館というものに何の愛着もなく、自身

          図書館におけるブルシット・ワーカーの事例

          シフト制育児という提案

          要するに「たとえばお父さんが月・水・金で働き、お母さんが火・木・土で働く。仕事に行かない側が交互に家で子どもの面倒を見る」という制度です。 (この曜日でなくてもかまわないでしょうが、隔日のほうが「その件でしたら明日には担当者が出勤して処理しますので」という対応ができますから職場でフォローしやすいのではないかと思います) この制度のメリットは以下のとおりです。 保育園に預けなくていい保育料もかからず、送り迎えもいりません。子どもが急に発熱して預けられないとか、早退して迎え

          シフト制育児という提案

          図書館リサイクル本の転売について

          私の勤めている図書館では、定期的に除籍本を利用者に無料配布しています。 対象となるのは置き場のなくなった複本や、古くなって資料価値がなくなったもの(ソフトウェアのマニュアル本とか)です。 ただこの無料配布本、「もしかして転売されているのでは…?」という疑惑を感じることがあります。 とくに事前予告したわけでもないのに初日からごっそりほぼ全部なくなっていたり、上下巻の下巻だけとか、スーツケースでないと持って帰れないような大型本で「どうせ誰ももらわないだろうけど一応置いておこう

          図書館リサイクル本の転売について

          小説完結と、無料版公開のお知らせ

          半年前からえんえんと連載していた小説が完結しましたのでお知らせです。 有料マガジンで公開していたのですが、この機会に無料公開します。 無料にした理由は「ほとんど売れず、あまりにも読まれなくて悲しくなったから」です。 もともと収益化などを目指していたわけではなく、自分としては「お店屋さんごっこ」のようなつもりでした。 とは言え物価高騰の折でもあり「もしかしてお米代くらいにはなるかも」という下心があったことも否定できませんが、蓋を開けてみると「一日分のお米代」くらいにしかな

          小説完結と、無料版公開のお知らせ

          おいしいものを、すこしだけ 最終話

           いろいろなことがあってから、まだほんのすこししか経っていないようでもあり、すべてがずいぶん昔のことのようでもある。  亜紀さんはお母さんの年齢を越えられなかった。告知を受けてから一年くらい時間があったので、初めて二人で一緒に旅行にも行ったし、亜紀さんがこれだけはと望んだ公正証書の手続きを取ることもできた。  告知を受けたときの亜紀さんは落ち着いていた。あきらめとも絶望とも違う、ほとんど安堵の表情と言っていいようなものを浮かべていた。そのとき、私がこの世で見捨てられてしまっ

          おいしいものを、すこしだけ 最終話

          「結婚したい」のではなく「好きな人と結婚したい」

          まず最初に、私は少子化が悪いとはまったく思っていません。 さらに、社会が悪いから少子化になったとも思っていません。 むしろ、少子化の原因は「好きではない人としかたなく結婚し、しかたなく子どもを産む人が減ったから」だと思っています。 この「しかたなく」というのもポイントで、銃で脅されたわけではなく、たしかに本人の意思ではあるのでしょうが、他の選択肢をすべて奪われた状態なので、いわば「背後から火の手が迫って来て目の前は崖、という状態で海に飛び込む選択をする」ようなものです。

          「結婚したい」のではなく「好きな人と結婚したい」

          おいしいものを、すこしだけ 第22話

           三十六回目ともなると、もう誕生日がそれほどめでたいということもないけれど、亜紀さんが何か欲しいものはないかと聞く。今年は想定外に指輪をもらってしまったのでさすがに亜紀さんの懐具合も心配で、これ以上何もいらないと言ったのだけれど亜紀さんはそれとこれとは別だと言い張り、結局夏用のストールをくれた。レモンイエローとターコイズブルーの綺麗なぼかし染めになっている。 「ひまわりの迷路に行ってみますか」  出不精の亜紀さんが誘ってくれるのも珍しい。今まで休みが合わなかったので、誕生日

          おいしいものを、すこしだけ 第22話

          本の書誌データをヒントに、人間の戸籍を「個籍」にしてみました

          じつは本にも「親子関係」があるものが存在しますたとえばこんな本です。 この場合『岩波講座 世界歴史』が「親」です。 書誌データはこのようになります(依拠する目録規則によって記述方法は異なりますので一例です)。 NII書誌ID(NCID):BC10314546 出版国コード:ja タイトル言語コード:jpn 本文言語コード:und 岩波講座世界歴史 荒川正晴 [ほか] 編集委員 岩波書店, 2021.10-2023.11 タイトル別名 世界歴史 : 岩波講座 タイトル読み 

          本の書誌データをヒントに、人間の戸籍を「個籍」にしてみました

          おいしいものを、すこしだけ 第21話

          写真館で一緒に写真を撮りませんか、と言い出したのは亜紀さんだ。梅雨の合間、何日かいい天気が続いたころの日曜日だった。 「珍しいことを言いますね」  亜紀さんは撮られるのが苦手で、レンズを向けただけで顔がこわばるのでろくなものが撮れない。今まででまともに写っているのは私が盗撮同然の手法で撮ったものが一枚あるだけで、画像の亜紀さんはすこし不思議そうな、問いかけるような表情をしている。 「記念になるかなと思って。今まで日向子さんと一緒に写ったものが一枚もないですし」  何の記

          おいしいものを、すこしだけ 第21話