晴れる

図書館員(司書資格あり)。 図書館業界、読書術、書評、仕事と生活のあれこれ。

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マガジン

  • 【小説】おいしいものを、すこしだけ

    現役図書館司書が書いた、図書館司書の登場する小説です。

  • 図書館

    図書館全般についての記事をまとめています。

  • 図書館のお仕事紹介

    あまり一般で紹介されないマニアックな業務を解説しています。

  • 「提案」シリーズ

    社会制度改革の提案集です

  • エッセイ

    ちょっとした思い出話など、とりとめのない雑文です。

最近の記事

  • 固定された記事

図書館のお仕事紹介(番外編) とある司書の一日

これまで図書館の各業務について個別にご紹介してきましたが、では具体的に私の一日のなかでどういう流れになっているのかを解説してみようと思います。 実際には時期によって業務は異なり、たとえば蔵書点検の時期は朝から晩までぜんぶ蔵書点検だったりしますので、比較的バランスの良い日を想定しています。 また、規模の大きな図書館では担当業務がもっと細分化されていることが多いのでここまであれこれやっていないでしょうし、逆にワンオペの図書室などではひとりですべての業務をこなさなければなりません

    • 検索の限界

      職業柄、学生の利用者さんと接する機会が多いです。 最初は「いやあイマドキの若者なんだし、みんなネット検索なんて慣れてるだろうから、教えることなんて何もないんじゃないの」と思っていました。 ところがだんだん「若い世代の検索能力というのは、こちらが予想したほど高くないらしい」と思い始めます。 そして最近思うのは「そもそも検索という行為は、ある程度人生経験がある人のほうが有利なのではないか」ということです。 これはネット検索だけでなく、カード目録や冊子体の検索でも同じことで

      • 【小説】おいしいものを、すこしだけ 第20話

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        • 図書館のお仕事紹介:所在変更

          所在変更とは、つまり本のお引越しです。 具体的な作業としては、現物(本)の移動、住所(配架場所や請求記号といった所蔵データ)の変更、必要に応じて背ラベルなどの装備もお召し替え、となります。 所在変更の理由理由はいろいろあり得ますが、私の勤務先の場合、まずは配架スペースの確保が目的です。 なにしろすでにある本で棚がいっぱいなところへ新着本がどんどん来るわけですから、所在変更しないことには新しい本が入りません。 自転車操業状態なので「このあいだ保存書庫Aで除籍作業をして〇段

        • 固定された記事

        図書館のお仕事紹介(番外編) とある司書の一日

        マガジン

        • 【小説】おいしいものを、すこしだけ
          20本
          ¥500
        • 図書館
          47本
        • 図書館のお仕事紹介
          21本
        • 「提案」シリーズ
          17本
        • エッセイ
          11本
        • 料理・食生活
          10本

        記事

          「20分で3品」司書

          よく料理で、「揚げ○○の××あんかけ」みたいな手のかかるレシピに挑戦したり、「フォアグラのトリュフソース添え」みたいな高級食材を使いたがる人がいます。 でも家庭で求められるのはそんなことではなく、「冷蔵庫にある賞味期限が迫っている食材を組み合わせて20分で3品作れ、しかもちゃんとおいしい」ことだったりしますね。おなかをすかせた家族を待たせないことのほうがたいせつです。 図書館でも同じようなことがあります。 視察や研修で意識が高くなったえらい人にありがちなのですが、海外の先

          「20分で3品」司書

          【小説】おいしいものを、すこしだけ 第19話

           最近は亜紀さんの髪にも何本か白いものが混じるようになっていて、本人もすこし気にしている。 「白髪のおばあさんというのは素敵ですけど、そこに至るまでの過程が悩みどころですね。美容院で染めたりしたらお金が大変ですし」 「まだそんなに目立たないから大丈夫ですよ」 「私もひなさんみたいに短くしようかな」 「まあそれもいいでしょうけど」  亜紀さんが髪をおろしているのはうちでくつろいでいるときだけなので、この姿を見るのは私だけだ。毛先を椅子の背に編みこんで遊んでいると、亜紀さんが「こ

          【小説】おいしいものを、すこしだけ 第19話

          小口研磨という本への暴力

          見出し画像を見ていただくと、縦方向に細かいスジが走っているのが見えますよね。 これが研磨された小口です。 書店で小口をキレイに見せる目的で行われるもののようですが、実はこれ、図書館としてはちょっと困るものでもあります。 小口研磨のデメリット資料の劣化を早める そもそも、本にとって小口のヤケやシミというのは単なる経年変化であり、衛生上の問題もなく、カビや害虫、紙の酸化のようにただちに対処しなければ本の寿命を縮める、というものではありません。 むしろ研磨によって本の寿命が縮

          小口研磨という本への暴力

          【小説】おいしいものを、すこしだけ 第18話

           最初は私も腹を立てていたけれど、二、三日すると、何もあんなにむきになることもなかったような気持ちになってきた。てっきり亜紀さんも喜んでくれるとばかり思っていたところを否定されたのでがっかりしただけだ。しょせん私は図書館の仕事で生計を立てているわけではないのだし、ただでさえ契約更新年数の上限が近づいて雇い止めの不安におびえている亜紀さんの神経を逆撫でする行為だったかもしれない。何より亜紀さんの給料をボランティアと大差ない、と言ってしまったのはどう考えても私が悪い。その給料で生

          【小説】おいしいものを、すこしだけ 第18話

          男性に「女性アシストポイント」をつける、という提案

          高校時代、文化系の部活にいて経験したことなのですが、たまたま部長以下執行部が全員女子、ということになったのですね。 すると、男子部員が幽霊化しました。 べつに表立って異議を表明したわけではないのです。ただ出席率が悪くなり、出てきてもなんとなくやる気がないというか、主体的に活動に参加しなくなりました。 このままでは演劇部だと宝塚状態になってしまいます。合唱部なら女声合唱になります。 そうなる前に、そもそも新入部員がほとんど女子だったりすると、男の先輩が危機感を覚えるのか「まず

          男性に「女性アシストポイント」をつける、という提案

          おなじ本?ちがう本?:図書館における「書誌の同定」というお仕事

          図書館では「これとこれは同じ本なのか」という判断を迫られる場面がけっこうあります。 「これとこれ」は本と本のこともありますが、多いのは書誌データと本、または書誌データと書誌データです。 いちばん関係あるのは目録担当者ですが、レファレンスや相互利用、選書、除籍などでも避けて通れません。この判断を誤ると、求める本と違う本を利用者に提供してしまったり、すでに所蔵していることに気づかず重複発注してしまったり、複本があると思って1冊しかない本を捨ててしまうことにもなります。 私はよく

          おなじ本?ちがう本?:図書館における「書誌の同定」というお仕事

          広告嫌いふたたび

          母の日のPRで「ずっと小児」という表現が使われた切符モチーフのポスターが批判を浴びて撤去された、というニュースがありましたね。 個人的には「なんか引っかかるけど、もっと悪質なものはいっぱいあるのでは」という程度の感想ですが、気になるのはこれが広告であるところです。 もしこれが文学作品だとか、美術館で展示されているアートなら、まったく表現の自由であって何の問題もないですし、嫌なら見るな、という話ですが、広告には「見ない自由」がありません。 まして駅という公共の場にでかでかと

          広告嫌いふたたび

          【小説】おいしいものを、すこしだけ 第17話

           休日に図書館でボランティア活動をしてみようかと思う、と言ったところ、亜紀さんはいい顔をしなかった。 「何をするんですか」 「何って、配架とか、いろいろ」 「その図書館は問題があると思います。図書館祭りとか、一時的なイベントでボランティアを募集するならともかく、配架のような通常業務で人を頼むというのは、あきらかにその図書館は恒常的な人手不足ということなのに、どうして職員を雇わないんですか。配架は誰にでもできると思われがちですが、職員が蔵書の動きを知るうえで重要な仕事です。職員

          【小説】おいしいものを、すこしだけ 第17話

          叱られたくない

          世の中では「『叱る』と『怒る』は違います!教育として適切に叱ることは必要です」と言われることもよくありますし、あまりにも叱られないと逆に「叱られたい願望」を持つ人もいます。 私は「なるべく叱られたくない派」なので「叱ってほしい」という気持ちはどうもわかりませんし、子どもの頃から誰かに叱られると「普通に言ってくれればわかるのになあ」と思っていました。 もちろん、私が何か間違ったことをしていたら、ぜひ指摘していただきたくはあるのですが、その場合「叱る」という伝達方法でなくてもよ

          叱られたくない

          【小説】おいしいものを、すこしだけ 第16話

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          【小説】おいしいものを、すこしだけ 第16話

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          ひとり1言語&1楽器主義の国

          「あったらいいな、こんな国」というお話です。 この国では赤ちゃんが生まれると、出生届と同時に「言語」と「楽器」が指定されます。 たとえば「ケチュア語」と「フルート」を指定されたとします。 指定方法はただのくじ引きです。 (ただし公平を期するため、英語や中国語などのビジネスに役立つメジャー言語は除外されています。またピアノやパイプオルガンなどの自力で運べない楽器も除外でしょう) 指定されてどうなるかというと、ただ「あなたは運命によって、ケチュア語とフルートに選ばれました!」

          ひとり1言語&1楽器主義の国

          アイデンティティ崩壊した図書館の末路

          よくビールの新商品PRで「ふだんビールを飲まない方や、苦手な方にも楽しんでいただけるよう、ビール独特の香りや苦みを抑え、すっきりと飲みやすく仕上げました!」と謳っていることがあります。 私などはビール好きで、それもベルギービールのような個性的で味の濃いビールが大好きなので「だったらビールなんか飲むなよ!そんなにすっきりがいいなら水を飲め!」とつい思ってしまいます。 実際に飲んでみても、どうもビールとしてもビールでない飲み物としても今ひとつで、結局定番化しないことが多いですし

          アイデンティティ崩壊した図書館の末路