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essay #13 忘却
忘れたくない、と思うことがある。
変わりたい、前に進みたい、と思うことも多々あるけれど、同じくらい、刻んでおきたい、無かったことにしたくない、と思うことの多い人生だ。
昔はひとからもらった愛を、忘れたくないと思っていたようだ。
思い出ボックスと呼ぶにふさわしい箱を持っていて、小学校の頃に友人からもらった手紙やプレゼントに入っていたカードなんかをぽんぽんと保管していたその箱は、今でも自室のクローゼ
essay#0 一節
いずれ死ぬのであれば、死後、美しい生き様だったと言われるような人でありたいと思ってきた。
立派でも、かっこいいでも、可愛いでも、綺麗でもなく、美しい、美しかった、と言われる人生がいい。
実際のところ、27年間の私の人生は美しく進んできたのかと聞かれたらうまく答えられない。
多分、もっと幼く、拙く、がむしゃらなようで実はゆるっとしていて、だらしないものな気がする。
そもそも美しいという価値観が
essay #9 血液
咄嗟に119番を押した。
いちいちきゅう、だよな、と一瞬手が止まりそうになったけれど、何とかスマホの画面を押し込むようにして救急車を呼んだ。
上級救命講習を受けたのは既に5年前だったけれど、人が横になっているのを見て、あ、安全体位にしなければ、と思った。
まず救急車を呼んで、後輩がAEDを探した。
できることありますかと近づいてきてくれた人がいたので、発煙筒で他の車を誘導してくださいと伝えた