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線路

銀色の龍に跨って
ビルの間をすり抜ける朝
黄色い模様が近づいて
時速90kmで追い越す

車窓に額近づけて
ガラス越しの肖像
勝手に鑑賞して分析中

分かった気になって
また分からなくなりそうで
人のこと考える暇あるなら
参考書でも開こうか

もしも人生が物語なら
始まりはいつも勘違いで
届けられなかった呟きが
頭の中でカッコ書きになって

もしも私が主人公なら
ヒーローがきっと助けそびれて
吐き出せなかった言い訳で
後書きばかり長くなって

ああ いやだ
もう追い越された電車
きみが乗ってたかもしれないのに

一両編成 路面電車
定期券 期限切れの朝
切符を買いに始発駅まで
時速15kmでさえ息切れ

ベンチにかける膝が鳴る
青色の塗装が光ってる
ひとつ前に乗ったのかな、きみは

そうよ人生は物語なの
始まりはいつも緩やかで
見えていなかった小さな棘が
心を抉り抜けなくなるの

もしもきみが主人公なら
わたしヒロインになりそびれて
最後の台詞咳き込んじゃって
歯切れの悪いお別れだねって

ああ いやだ
私の前から離れるとき
きみは一度も振り返らないよね

ああ やだよ
いつも見えなくなるまで
私 きみの背中を見送ってる

気がついて

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