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ながいまえがみ

ながいまえがみ

眠りすぎたなきょうは
目を逸らしたい色んなことが
身体に巻き付いて
いたずらっぽく顔を覗き込む

どこかの国の先住民は
わざと髪を切らないって
それは歩みや歴史や考えを
失わないためだって

長い前髪で前が見えないや
これで太陽から隠れられた
いつかはカーテンを開けて空の下
歩き出さなきゃいけないよなあ

動かなきゃ
重たい腕で布団を押して
笑わなきゃ
嫌いにならないように
動かなきゃ
逃げる場所

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Pretending

Pretending

恩師じゃないあの人
わたしの笑顔を褒めた
「みんなを幸せにします」
少し信じてて
ほとんど疑ってる

親友じゃないその子
わたしの笑顔を信じた
「楽しそうで良かった」
もちろん信じて
そうしてほしかった

関係ない気にしない
なんてことない平凡な日
痛くもないつらくもない
要らなくないけど必須じゃない

ほらね平気だよ今日だって
ご飯も美味しい

家族じゃないその人
わたしの幸せを案じた
「あなた

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たられば

たられば

大雨の公園で20:30
君が来てくれてたら
訃報を聞いたの18:30
君に電話ができてれば

真っ赤なお風呂場 14:10
君が
あの時
見つけてくれたら

わたしたちまだ若いけど
10年はそんなに短くないです
もしかしてを繰り返して
もしかしなかった10年です

待てないことは待てないです
無口でシャイで臆病だから
もしかしない君を許すけど
わたしはそんな甘くないです

スマホを置いたら洪水20

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木漏れ陽

木漏れ陽

見たまま映せるらしい
話題のカメラで撮ったって
この揺らぎは
この煌めきは
残せやしないから

この瞳がレンズで
瞼がシャッターならって
その横顔や
その指先を
何度も捉えて目を伏せた

陽の当たる縁側がすきだった
ざらついた木目をなぞって
別に可愛がってなかった
猫の背中、撫でたりして

夏の間、蝉の音
秋はオレンジの金木犀
冬はストーブの香り
春になれば紋白蝶

本当にシャッターを切ってたから

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フライト

フライト

約束はきらい
階段のてっぺんから
緩やかに地下へゆく
赤色のスイッチ
押したくないの

一緒に行こうと言った国
これでもう叶わないね
いつにしようかあたしが聞いて
きみがほら濁したんだよ

真っ暗な要塞にひとり
蝋燭に 照らされて
包むのはあたしの荷物だけ
もう行くの、新しい空へ

指切りはしない
買えなくて縫った靴底
じんわりと雨滲む
青色の信号
見えてもないの

まっ黒な前髪の裏で
白の砂浜 

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Invisible.

Invisible.

言葉にしなかったこと
言葉になったこと
どちらかでしか
褒めてあげられない

言葉にできなかったこと
言葉にできたこと
どちらかでしか
何も伝えられない

誰かの心に響くなにかを
伝えられたことなんて
ほんとにあっただろうか

ひとつひとつを数えては
あまりにも思い出せなくて
その人に心 使えたか
今となってはわからない
そっと 噛み締めて
もしかして 読み返して

言葉にしなかったこと
言葉にな

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MINE

MINE

誰かのいちばんに
なりたいんだって

そろそろどうだい
誰かに夢中になれたかい

誰のいちばんにも
なれないから閉じた
氷の心 また
みんなを好きなふり
ばかだね

こっちを向いてみ
ほら ぼくのものだよ
全部置いて笑ってみ
ほら ひとりじゃないよ

誰かのありがとう
浴びるほどほしいって

そろそろどうだい
あの子はそっちを向いたかい

誰のありがとうを
届けても満たないみたい
底無しのポスト 

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線路

線路

銀色の龍に跨って
ビルの間をすり抜ける朝
黄色い模様が近づいて
時速90kmで追い越す

車窓に額近づけて
ガラス越しの肖像
勝手に鑑賞して分析中

分かった気になって
また分からなくなりそうで
人のこと考える暇あるなら
参考書でも開こうか

もしも人生が物語なら
始まりはいつも勘違いで
届けられなかった呟きが
頭の中でカッコ書きになって

もしも私が主人公なら
ヒーローがきっと助けそびれて
吐き

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此岸の人だから

此岸の人だから

君の痛みを
知ってる気がする
僕もむかしね
なんて言わないけど
鼓膜から剥がせない
セリフがあるんだ

君の笑顔が
引き攣ってるから
行ったり来たり
定まらないから
きっと見えてるのは
机だけだよね

要らない
役に立たない
ろくでもない
必要ない
聞こえない
そうじゃない

君はさ
望遠鏡で見えた星しか
信じられないんだろう
届きやしない空の向こう
掴もうとしてるんだろう

僕はさ
君の手を取り

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空腹

空腹

柿の種みたいな下瞼
泣いたからじゃない
ヨモギ花粉の季節なの
だから目を擦っちゃったわけ

昨日チャージしたモバイルSuica
電池切れで通せんぼ 後退り
冷ましたはずの麦茶熱いまま
吐き出せなくて痺れた舌

もう日が傾いてるのに
胃が音を上げる午後3時
絡まった糸解けないし
脳働かす糖も足りない

頭のなか日本語でいっぱい
捨てても戻ってくるゴミみたい
ちょっと退いて1時間だけ
わたしそのソファ

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唄えない

唄えない

わがままを言って
好き勝手にして
くるくる回る目輝かせ
気ままに愛して
やがて捨て去る
自由なマリーに見えるのね

今日だって無表情
枕に頬押し付けて
笑顔の絵文字つきで
実と嘘の労い送る

唄えない夜
肋骨が心臓を刺す
ひとりにしないでここにいて
うまく息が吸えないから

誰かが笑って
相手も笑って
キラキラ揺れる目が眩しい
望んだもの全部
手に入れ安堵する
強かな人ほど繊細

今日だって無表情

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Enough

Enough

ここはまるでニューヨーク
おそらく夢が叶う場所
すれ違うひとを品定め
あの子はきっと花開く

歩いてみても走っても
辿り着く場所ひとつだけ
追い抜いてきたひと横目に
息をついても続く道

毎日がメリーゴーランド
交わらない円周は平行線
私の馬車には乗らないで
あのひとは薔薇で
あのひとは雑草だって
関係ない
うるさくて
もう充分だよ

ここはまるでラスベガス
おそらく星が変わる場所

勝ち続けるひ

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Anymore

Anymore

もう痛くないよ
もう思い出さないし
もうこれ以上
きっと悩まないよ

日曜の昼にテレビから
流れる甲高い声が
100年変わらない味だって
嬉しそうに言ってる
1ヶ月後の僕でさえ
僕はわからないのに

きみに出会ってから知った
心臓に入ったヒビの痛み
誰にも教えられないから
きみにぶつけていたけれど

もう良いかなって思うんだ
今送ったらきみは読むかな

もう話さないよ
もう思い出せないよ
もうこれ

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春を待つ

春を待つ

白い息
凍える爪先
ポケットの中
空っぽの手
濡れた黒を
踏みしめて
街路樹の先へ

明日のこと
明日の自分に
任せて今日は
あの歌を
口ずさむの

冷たい風
頬を掠める
2月の東京
まだ春は来ない

黒い渦
心に広がる
開いた口塞いで
飲み込む声
光る画面
また閉じて
人波を泳ぐ

今日この日を
どう生きても
日はまた昇る
この歌に
救われるから

月の明かり
夜を照らす
2月の東京
まだ春は来

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