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何度も読み返したい素敵な文章の数々 vol.3

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2018年1月の記事一覧

「あなたのことばはデリカシーがない」

「あなたのことばはデリカシーがない」

昨日夜、「人に向けることばにデリカシーがない」と言われてしまった。

そこまで深い意味はなく返したことに対して言ってくれたのだと思うのだけど、そんなふうに言われるとは思ってもみなくて、あまりのことにびっくりしてしまった。そして、「そう感じたのは初めてのことではない」とも、そのツイートには書かれていた。

それを見たのが、ちょうどお風呂に入る直前。ゆぶねに浸かりながら、水の音だけがする無音の中で、そ

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自分の書くものにはなくて本にはあるもの

自分の書くものにはなくて本にはあるもの

小説を読んでいると、気付くことがあります。それは、「情景」が自分の書くものにはあまりに少ないということ、それに、固有名詞ばかり使っているということ。

ここ最近読んだ作家さんで言うと、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」はすごかった。個性ということばを説明するのに、こんなに情緒たっぷりに語れるというのが、とてもすごいなぁと思う。

しかも、凄いのは、やっぱりどんな道具を使っても、マーくんの演奏にはマーくんの

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だって人間はそういう風にできているんだ

だって人間はそういう風にできているんだ

・タクロコマさんが、日々「君のいまがより良くなるように。」というマガジンを書いているのを、タイムラインに流れてきたときにふらっと読む。

未来のこどものためにタクロコマさんがどんなことを考えているのかが書かれている。自分が何をしたのかを誰か(読者)に向けて書くのはよくあることだけど、未来の自分のこどもに向けて書く形式はこれまでに見たことがなかったので、なんだか新しいなぁと思って眺めている。

個人

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本当にまずいのは休む元気すらないとき

本当にまずいのは休む元気すらないとき

私は普段、好きな時間に好きな場所で自由にできる仕事をしている。

少し前はその自由を生かして、すきま時間を見つければ映画館に通いたくさんの映画を見て、本屋でぷらぷらと歩いて面白そうな本を探して、新しく入荷した服を買いに行き、それでもちゃんと仕事はまわっていた。

まあ普段気ままに過ごしているので、疲れにも鈍いのだが、どうやら私は疲れていたらしい。疲れていることに気づいたのは、昨日今日の話。

数日

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下を向いて歩こう。

下を向いて歩こう。

自分という人間が、そのダメダメさが、思わぬかたちで露呈した。

豪雪の夜、渋谷駅に向かって、傘もささずにぼくは歩いた。降り積もった雪にざくざくと傘を突き刺しながら、下を向いて、雪を睨んで、ぼくは歩いた。どうしてこんなことになってしまったのだろう。自分のどこが間違っていたのだろう。考えながら、渋谷をめざした。

英語ではそれをビッグスノーと言うのだろうか。きのうの東京地方は、何年かぶりの大雪だった。

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紙の編集をナメるな

紙の編集をナメるな

 書籍編集者はみんな悩んでいる。いい本をつくっても届かない。前ほど売れない。ため息をつきながらパソコンを覗きこむとWEBはなにやら楽しそうだ。仮想通貨にコミュニティ、AI、VR、ARにドローン……。ああ、もう紙の時代も終わりかなあなんて頬杖ついて窓の外を見る。

 どんなにおもしろいものであっても、それが魅力的なものであっても、届かなければ意味がない。営業部からは「初速が出てないんで…」と申し訳な

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満たされすぎて困っていた、と思っていた

満たされすぎて困っていた、と思っていた

私はひとりっこだ。
親がそこそこの年齢になってから産まれたからなのか、ただただ中途半端な成金だったからなのか、はたまた私自身がカワイイからなのか(すみません)、私はけっこう甘やかされて育った気がする。

小学校に入った頃から不足なくお小遣いを貰っていたし、習い事もやりたいと言ったこと全部しっかりやったし、そのために引っ越しまでしたりしたし、物心ついた頃から遠慮しいだった私がひとたび「あれがほしい」

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「知りたい」を追い求める美しい生き方

「知りたい」を追い求める美しい生き方

「美しい生き方」というと、僕はこれまで2通りのイメージしかなかった。一つは自分のことより他人を優先するような生き方で、いわばマザー・テレサのような生涯を送る人だ。もう一つは、自分の筋や美学を貫く生き方であり、俳優の高倉健さんや岡本太郎氏などが思い浮かぶ。

それが『喜嶋先生の静かな世界』という小説を読んで、それらとは異なる「美しい生き方」を知ることとなった。小説の舞台は理系の大学と大学院。子どもの

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マーケティングとデザインの噛み合わなさ

前から思っていたことなのですが、うーん、デザインって「消費財」なのかなぁ、と。マーケティングの賢い人に訊くとだいたいそういう答えです。「単なるコストでしかない」ということです。意思決定の基準は、数値化し、より高いものを選ぶ、ということで、極論をいうと「造形的にいい悪いなんて、知らん」ということです。まあ、それはそれで正しいです。すごく頭を使って施策を考えるマーケッターがそういうと「なるほど」と思う

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飛び降り自殺をするということ。

飛び降り自殺をするということ。

子供は何を見ても全部が初めてだから、目が輝いている。毎日のすべてが発見と冒険に満ちあふれている。

慣れていくことは「上手になる」以外に、怠惰になっていくことにも繋がり、いつも同じモノを見続ける大人の目は、何も見ないようになっていく。

喫茶店でスポーツ新聞から目を離さずに店員に「ホット」と言うオッサン。生まれて初めて喫茶店に入った瞬間にそんな態度を取っただろうか。毎日同じことをして、慣れて、雑に

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写真をするということ 1

写真がこれほど撮られている時代はかつてなかった。

スマートフォンにこれほど高性能なカメラがデフォルトでついているから、もはや誰でもカメラを持っているしいつでも写真を撮っている。
一眼レフも少し余裕があれば誰でも手に入れられるような嗜好品になった。

インスタグラムなど、SNSに日々世界中の写真がインターネット上に集積されてどこからでもアクセスできる。
膨大すぎるイメージの氾濫具合を見れば、もうす

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ストーリーの文章、ストラクチャーの文章

ストーリーの文章、ストラクチャーの文章

起業家のけんすうさんが、ブログの書き方についてとても興味深いツイートをされていた。

これでハッと書きかけのnoteの下書きを思い出したので、急いでまとめておく。

◇         ◇

編集者がライターを選んだり文章のディレクションをするとき、あるいはライターになろうとする人にも役に立つんじゃないかと思う考え方がある。

それは、文章を
◎ストーリーの文章 
◎ストラクチャーの文章
の2種類

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無数の当事者

無数の当事者

一昨日まで3日間栃木にいましたが、時間と主に気力がなく更新できませんでした。

3年間毎日更新する。といいながら新年始まって一ヶ月目でこの調子だから先が危ぶまれますが、こういう時はもう極力気にしないことにしている。

もちろん自分に「毎日続けるということ」をやるべきこととして設定して、毎日のモチベーションや心の支えになるようなことを一つでも持っておこうという防衛線を張っている部分はあるのだけど、

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過去を引きづって

過去を引きづって

「過去は変えられない」

よく耳にします。
過去起こった事実は、単なる情報として(出来事として)それは確かに変えられないし、その瞬間に戻ることはできないでしょう。

しかし、自分自身が経験した「過去」っていう時間や事実は、
現在の自分が認識して解釈した「過去」っていう思考の片隅みたいな空間だと思っている。

「現在」っていうのは過去の積み重ねでしかない。
当たり前すぎる動かせない事実。

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