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書評

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終わりなき積ん読との戦い 穿った見方、奇を衒った文章、絶え間ない邪推、無意識高い系書評
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東浩紀「訂正可能性の哲学」書評〜生きづらさと訂正可能性

東浩紀「訂正可能性の哲学」書評〜生きづらさと訂正可能性

簡単に言えば、現代社会は訂正可能性をどんどん排除していっているが、それは大丈夫なのか?という話。
一番わかりやすい例は、AIを利用した人工知能民主主義への批判である。
人工知能民主主義は、グーグルが広告へ誘引するようにある個人を様々な日常生活の情報からあるカテゴリへと選別していくような評価社会=監視社会をいう。
そういった社会では、寝てばかりいる人間の政治家よりはマシであろうと、何でも「統計上の正

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今年読んで何かしら刺さった本

今年読んで何かしら刺さった本

今年一番のぶっ刺さり本「万物の黎明」世界の「働きたくないでござる症候群」の皆様の教祖デビッド・グレーバーの最後の著作。
惜しくも亡くなってしまったデヴィッド・グレーバーといえば「ブルシットジョブ」に代表される反社会的著作でおなじみ。
文化人類学を土台に現代社会への鋭い批判、というか抜本的ジャーマンスープレックスをかます雄姿はウォールストリートでも炸裂させていた。
文化人類学から見た現代社会は、非人

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「82年生まれ、キム・ジヨン」非フェミニズム感想

「82年生まれ、キム・ジヨン」非フェミニズム感想

「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んだ。
男性諸兄には耳に千枚通しをゆっくりねっとり突き通される感覚で脇汗じっとりものの韓国のフェミニズム文学。
この本は#MeToo運動なんかでも取り立てられた女性差別に反対するフェミニズム文学として世界中で読まれているが、今回は非フェミニズムな感想を書いてみようと思う。

もちろん女性差別は韓国も日本も変わらないくらい深刻であるのは言うまでもない。
だがこの本が

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誰が発達障害者を生きづらい社会にしたのか?を探る『デカルトからベイトソンへ』②

誰が発達障害者を生きづらい社会にしたのか?を探る『デカルトからベイトソンへ』②

前回の記事にて、近代化により世界は「たしかなもの」が失われ、人間は社会が規定したシステムに最適化することが求められる排他的な世界観の中で生きているということを提示した。
発達障害とは、この根拠のない社会が自立するためだけの本末転倒システムを維持するために「排除された」存在のことをいう。
だから『自己責任』なのね。

今回は引き続き『デカルトからベイトソンへ』から引用し、そんな近代社会システムがそも

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2021年に読んだ本でおもろかったやつ〜ゴイスー本

2021年に読んだ本でおもろかったやつ〜ゴイスー本

ブルシットジョブ
新年早々このブルシットでファ○クな絵本を読んだのは、結局おいらがブルシットに勤しんでいるから。

ブルシットジョブとはクソみたいな仕事、不要不急なのに仕事している感だけがやたら醸し出される上質な納豆みたいな噴飯ショットガン嘔吐ジョブ。
結局、自殺しちゃった著者のデヴィット・グレーバーはアナキズムや官僚制度に糞塗りたくるような本を書きまくっていたが、ブルシットジョブが生まれたのは資

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誰が発達障害者を生きづらい社会にしたのか?を探る『デカルトからベイトソンへ』①

誰が発達障害者を生きづらい社会にしたのか?を探る『デカルトからベイトソンへ』①

なぜ我々は生きづらいのか?

空気が読めないから?馬鹿だから?電話が取れないから?

違う違う、そうじゃない。社会が勝手に規定した枠からはみ出しているからだ。でも俺たちは抵抗し続ける。なぜなら去勢された「社会人」なんて生き方はまっぴらだからだ。

しかし、我々は図らずもこのクソ社会に生きる羽目になっているのは紛れもない事実。ああ、赤いカプセルをよこせ。

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」って中

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意識高い系のやりがい搾取共同体マーケティングとその不幸

意識高い系のやりがい搾取共同体マーケティングとその不幸

昨今、昭和型生産至上主義的企業はどんどん潰れていき、若者の就職先としての人気は皆無となっている。

現在、若者の就職先としての人気とされているのは、ウェルビーイング的なセカイ系スタートアップ企業だ。

「されている」と書いたのは、雑誌やインターネットの著名人がそう言っているからだ。

やりがい搾取による空虚なブルシットジョブではなく、利益の追求一辺倒ではない社会や環境のためになる利他的なやりがいの

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YouTubeで子どもを育てている親御さんたちへ

YouTubeで子どもを育てている親御さんたちへ

我が子(4歳)は今日もYouTubeに夢中。

起きている時間はほぼYouTubeを食い入るように眺めている。

我が子が特に好きなのは、いい年したおっさんが子ども用おもちゃで遊んでいるクソ情弱ゴミ動画。

あからさまな資本主義迎合態度によって生み出されたこのクソ情弱ゴミ動画だが、子どもには受けが良い。

アンパンマンやプリキュアの最新おもちゃが、甲高いおっさんの声で紹介されているだけのクソ情弱ゴ

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新書『独ソ戦』に見る意識高い系にありそうな失敗の本質

新書『独ソ戦』に見る意識高い系にありそうな失敗の本質

重篤中二病患者はみんな大好き『独ソ戦』、歴史上最も胸糞かつ近代社会が生んだ狂人が入り乱れるバーリトゥード。

そんな非大衆的胸糞本がよりによって売れに売れたのが2020年、新書大賞第一位『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』である。

我々(連帯無き中二病クランケ)にとって独ソ戦といえば、ハンス・ウルリッヒ・ルーデル閣下ですね。くわしくは公式サイトであるアンサイクロペディアを御覧ください。

かく言う僕も、独

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