記事一覧

『ジェリーフィッシュは凍らない』

ミステリのレジェンド『そして誰もいなくなった』『十角館の殺人』の系譜の作品は数多くあるが、中でも近年で特に高い評価を得ているのは『ジェリーフィッシュは凍らない』…

NEM様
8日前
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『双子連続消去事件』の真相について考えよう

『彩紋家事件』をメルカリで購入し、つい先日読了した。 これにより、トリビュート以外の既刊のJDCシリーズは全て読んだことになり、残すはもはや幻の作品となりつつある『…

NEM様
10日前

『カーニバル』を読もう!

清涼院流水といえば『コズミック』および『ジョーカー』のあまりのオチの内容に、手元の本を思わず壁に投げつけたとのことで「壁本」という新たなジャンルを切り拓いた偉人…

NEM様
2週間前
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【これこそあるべき実写化の姿】実写版『十角館の殺人』

角島へいらっしゃった皆さん、ご機嫌よう。 先日ついに配信が開始された、実写版『十角館の殺人』はすでにご覧になっただろうか? 原作の知名度は高いが、再現が難しいと…

NEM様
2か月前
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【月光ゲーム】感想と推理供養

有栖川有栖のデビュー作である月光ゲームを読みました。 同著者の作品は、双頭の悪魔だけ読んだことがありましたが、トリックの奇抜さや意外な真相よりも、論理的な解決に…

NEM様
4か月前
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第一回十角館の殺人の実写化方法予想会

2023年末、日本を震撼させる衝撃の情報が発表された。 まさかの十角館が実写化するとのことだ。 「映像化不可能」とされてきた小説が実写映画として公開された例は実は結…

NEM様
5か月前
2

鬱映画の金字塔「ウィッシュ」

世間では100周年記念アニメーションのおまけの90分扱いでお馴染みのウィッシュを、年も明けたということで映画館で見てきた。 ネガティブな感想がやたらと目立っており、…

NEM様
5か月前
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そろそろ2023年に読んだ本でランキングつけようか

2023年も最早虫の息だ。 この時期にやることといえば、『今年の○○ランキング』以外ないだろう。 レコード大賞しかり、流行語大賞しかり、この一年を振り返っていくという…

NEM様
6か月前
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Aqoursのオススメ楽曲で打線

異次元フェスを間近に控えor経て、初めてAqoursに触れる方もいるでしょう。(いてほしい) そこで、今回は私の独断と偏見でAqoursのオススメの曲を打線形式で紹介しますの…

NEM様
6か月前

2023年も終わりそうなので「コズミック・ジョーカー」を評価したい

私がミステリーを読み始めてからそろそろ一年くらいだろうか。 基本的に電車での移動中にしか本を読まないので読書量が少なく、現時点では有名作品でも未読のものが多い。…

NEM様
6か月前

映画「都会のトム&ソーヤ」の文句が言いたい

「実写化決定!」が原作ファンにとって死刑宣告も同然と認識されるのはもはや珍しいことではない。 その最たる原因の一つは、漫画の中の非現実的な世界を実写で再現するの…

NEM様
7か月前
2

【暫定今年一番面白かった】双頭の悪魔の感想

去年くらいに初めて十角館を読み、例の衝撃を受けて以来ミステリを読み漁るようになった。 その後に占星術で脳を揺さぶられてからは、物理・叙述を問わず、トリック重視の…

NEM様
7か月前
4

ドグラ・マグラとの闘い〜三度の敗北を越えて〜

諸君は『ドグラ・マグラ』なる奇怪なタイトルの文学作品をご存知だろうか。 俗に言う日本三大奇書の一つであり、「読むと精神に異常をきたす」と言う触れ込みで、そこそこ…

NEM様
10か月前
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我が生誕と暦の序列

3月15日 長い長い20世紀も着実に終わりへと近づきつつあったその日、私は誕生した。 普段の生活の中で誕生日として扱っているその日が、果たして正確に私の誕生日である…

NEM様
11か月前

『ジェリーフィッシュは凍らない』

ミステリのレジェンド『そして誰もいなくなった』『十角館の殺人』の系譜の作品は数多くあるが、中でも近年で特に高い評価を得ているのは『ジェリーフィッシュは凍らない』ではないだろうか。

この題材はもう食傷気味というか、タネやオチが半分見えていることもあり、中々本書に食指が動かなかった。

しかし、たまには趣向を変えて新しめの作品も読んでみようということで、職場近くの書店で手に取り、つい先日読み終えたの

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『双子連続消去事件』の真相について考えよう

『彩紋家事件』をメルカリで購入し、つい先日読了した。
これにより、トリビュート以外の既刊のJDCシリーズは全て読んだことになり、残すはもはや幻の作品となりつつある『双子連続消去事件』だけだ。

しかしながら、『彩紋家事件』の刊行は2004年ということで、すでに二十年もの歳月が経過してしまった。
それどころか著者の清涼院流水御大は近年は英語学習とビジネス書業界にどっぷりと浸かっている。
『双子連続消

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『カーニバル』を読もう!

清涼院流水といえば『コズミック』および『ジョーカー』のあまりのオチの内容に、手元の本を思わず壁に投げつけたとのことで「壁本」という新たなジャンルを切り拓いた偉人である。

そして『カーニバル』はそんな上記二作の待望の続編なのだが、大半の読者が密室卿と芸術家の正体に愛想をつかしたのか、ネット上でも感想の声は極端に少ない。
そもそも読んだ人間の絶対数が少ないのだろう。

しかし、敢えて私は言いたい。

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【これこそあるべき実写化の姿】実写版『十角館の殺人』

角島へいらっしゃった皆さん、ご機嫌よう。

先日ついに配信が開始された、実写版『十角館の殺人』はすでにご覧になっただろうか?

原作の知名度は高いが、再現が難しいという事情から何十年も映像化を見送られ続けてきた本作が、満を持して実写ドラマ化するという事で一時期話題になったのは記憶に新しい。

実際に私も「あそことかどう再現するつもりなんだ?」と色々と適当な予想を並べ立てたりもした。
前回記事※ネタ

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【月光ゲーム】感想と推理供養

有栖川有栖のデビュー作である月光ゲームを読みました。

同著者の作品は、双頭の悪魔だけ読んだことがありましたが、トリックの奇抜さや意外な真相よりも、論理的な解決に重点を置いたクイーンリスペクトの作風が個人的に好みだったので、本作も期待を込めて手に取りました。

読んだ感想としては、期待通りに読みたいものが読めたという感じです。

ただ、正直なところ双頭の悪魔には及ばないなとも思いました。(まあデビ

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第一回十角館の殺人の実写化方法予想会

2023年末、日本を震撼させる衝撃の情報が発表された。

まさかの十角館が実写化するとのことだ。

「映像化不可能」とされてきた小説が実写映画として公開された例は実は結構ある。
※イニシエーションラブとかハサミ男とか

だが、その中でもある種の聖域と化していた十角館の殺人が満を辞して映像化とは、なんと感慨深いことだろうか。

とはいえ、このご時世に『実写化』というワードはどうしても身構えてしまう。

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鬱映画の金字塔「ウィッシュ」

世間では100周年記念アニメーションのおまけの90分扱いでお馴染みのウィッシュを、年も明けたということで映画館で見てきた。

ネガティブな感想がやたらと目立っており、私としてはもはやクソ映画を見に行く気持ちで映画館へと足を運んだわけだが、正直そこまで悪くなかった。むしろかなり良かった。

家族を失うという辛い過去さえ糧にして、血の滲むような努力の果てに身に付けた力でたった一代で多くの民に囲まれた豊

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そろそろ2023年に読んだ本でランキングつけようか

2023年も最早虫の息だ。
この時期にやることといえば、『今年の○○ランキング』以外ないだろう。
レコード大賞しかり、流行語大賞しかり、この一年を振り返っていくという意味でもランキング付けは欠かせない。

そこで私は「今年って何やったっけな」と思いを巡らせた結果、割と本読んだなと思ったので、ここに今年の名著ベスト10を発表しようと思う。

あらかじめ言っておくと、今年刊行された本はほぼ読んでない。

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Aqoursのオススメ楽曲で打線

異次元フェスを間近に控えor経て、初めてAqoursに触れる方もいるでしょう。(いてほしい)

そこで、今回は私の独断と偏見でAqoursのオススメの曲を打線形式で紹介しますので「曲がいっぱいあるんだけど何聞けばいい?」という方は参考にしてみてください。

このような紹介の場合ランキング形式が一般的ではありますが、数字による優劣をあまりつけたくないのと、そもそも自分の中で順位が明確に定まっていない

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2023年も終わりそうなので「コズミック・ジョーカー」を評価したい

私がミステリーを読み始めてからそろそろ一年くらいだろうか。
基本的に電車での移動中にしか本を読まないので読書量が少なく、現時点では有名作品でも未読のものが多い。クリスティは「アクロイド」と「そして誰もいなくなった」の二作しか手をつけていないし、三大奇書についても「黒死館殺人事件」は未通過だ。

そのため、識者からは「もっと他に読むべき作品があるだろう」とお叱りを受けてしまうかもしれないが、幼少期か

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映画「都会のトム&ソーヤ」の文句が言いたい

「実写化決定!」が原作ファンにとって死刑宣告も同然と認識されるのはもはや珍しいことではない。

その最たる原因の一つは、漫画の中の非現実的な世界を実写で再現するのが非常に困難だからだろう。

したがって、原作があまりにもファンタジーすぎなければ実写化でも大丈夫だろう、そう高を括っていた私の脳天に一撃を喰らわせたのが「都会のトム&ソーヤ」だ。

結論から言って、シンプルに面白くなかったので、上映時間

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【暫定今年一番面白かった】双頭の悪魔の感想

去年くらいに初めて十角館を読み、例の衝撃を受けて以来ミステリを読み漁るようになった。

その後に占星術で脳を揺さぶられてからは、物理・叙述を問わず、トリック重視の読者となっていた私を、ロジック重視派閥へと引き入れるきっかけとなった作品がこれだ。

本作の最大の特徴はなんと言っても、作中に合計で三回も挟まれる「読者への挑戦」である。
冷静に情報を処理し、演繹的思考を用いることで特定の人物を犯人として

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ドグラ・マグラとの闘い〜三度の敗北を越えて〜

諸君は『ドグラ・マグラ』なる奇怪なタイトルの文学作品をご存知だろうか。
俗に言う日本三大奇書の一つであり、「読むと精神に異常をきたす」と言う触れ込みで、そこそこ有名な小説である。

この作品が「読むと精神に異常をきたす」とまで言われている所以は、おそらくその圧倒的な読みにくさによるものではないかと思う。
途中で挿入される論文や、ある事件に関する供述調書などが約半分を占めるうえに、文体の古さもあって

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我が生誕と暦の序列

3月15日

長い長い20世紀も着実に終わりへと近づきつつあったその日、私は誕生した。

普段の生活の中で誕生日として扱っているその日が、果たして正確に私の誕生日であるかどうかについては諸説ある。

なぜそのような事が起こりうるのか?

答えは単純明快、おおよそ7時間の時差が発生しているためである。

取り立てて秘密にしていたわけではないが、実は私の出生地は日本ではなくドイツなのだ。ただし、滞在期

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