そろそろ2023年に読んだ本でランキングつけようか

2023年も最早虫の息だ。
この時期にやることといえば、『今年の○○ランキング』以外ないだろう。
レコード大賞しかり、流行語大賞しかり、この一年を振り返っていくという意味でもランキング付けは欠かせない。

そこで私は「今年って何やったっけな」と思いを巡らせた結果、割と本読んだなと思ったので、ここに今年の名著ベスト10を発表しようと思う。

あらかじめ言っておくと、今年刊行された本はほぼ読んでない。
というのも、私がちゃんと本を読みはじめたのがまさに今年からだからだ。
そのため、ラインナップは誰もが知ってるメジャータイトルばかりになるだろうが、そこはご容赦いただきたい。

それでは、選手入場といこう。

・Xの悲劇
・ローマ帽子の秘密
・フランス白粉の秘密
・オランダ靴の秘密
・ギリシャ棺の秘密
・そして誰もいなくなった
・カササギ殺人事件
・双頭の悪魔
・虚無への供物
・ドグラ・マグラ
・屍人荘の殺人
・占星術殺人事件
・時計館の殺人
・黒猫館の殺人
・暗黒館の殺人
・びっくり館の殺人
・殺戮にいたる病
・アリバイ崩し承ります
・ロートレック荘事件
・すべてがFになる
・ハサミ男
・姑獲鳥の夏
・○○○○○○○○殺人事件
・虹の歯ブラシ
・誰も僕を裁けない
・キドナプキディング
・コズミック
・ジョーカー
・カーニバル

改めて見ると錚々たるメンツである。
作品の知名度的にミステリ頂上決戦みたいになりそうだが早速発表していこう。

第10位 殺戮にいたる病

10位には読後感最悪のこの本がランクイン。
殺人鬼の悍ましい心の内側や、凄惨な犯行の手口が味わえる一冊だ。

犯人を含む複数の視点から物語が描かれており、倒叙ミステリの性質も併せ持つ本作は、とにかく殺害シーンの描写が生々しく、気軽に人には勧められない。

この本が好きだと公言している人とは距離をとった方が良いだろう。

第9位 ハサミ男

9位はメフィスト賞を受賞した有名作。
こちらも殺人鬼の一人称視点で話が進んでいく作品という点では殺戮にいたる病と同じ趣向の作品である。
しかし、本作は「殺人鬼が自分の手口を模倣して殺人を行った真犯人を突き止める」という構成であり、本来は犯人の立場にある人物が探偵役として調査を行うという役割の逆転が面白い。

また、割と分厚めでページ数も多いが、文章が軽快で読みやすいのも良い。(一部の読書家様は目が滑ると酷評して悦に浸るかもしれないが)

安易にこの本についてWeb検索を行うと、最悪レベルのネタバレを喰らいかねないので、未読の諸氏は十分注意して欲しい。

第8位 屍人荘の殺人

8位は比較的新しいこの一冊。(新しいと言っても2017年なので6年前だが)
実写で映画化もされており、私は先に映画の方を見て「正直微妙な作品なのでは?」と思っていたが、原作は桁違いに面白かった。というか映画がダメだっただけでは?

この作品については、どこからがネタバレという境界線が見極めづらいところがあるので、内容にはあまり触れないようにしておく。

続編が二冊刊行されているが、私は圧倒的文庫派の人間なので、早急に兇人邸も文庫化してほしい。とりあえず魔眼の匣は年明けくらいには読むつもりだ。

第7位 時計館の殺人

7位は館シリーズでも一、二を争う傑作のこちら。
人形館までの四冊はすでに読了済だったので選外である。

冷静に考えるとバカミスに片足突っ込んでいそうなレベルのダイナミックなトリックと、それを支える細かな描写がとにかく魅力だ。
「面白けりゃ良い」を地で行くストロングスタイルで、個人的には十角館の正統進化版といった感じだ。

今年読んだ他の館では、黒猫もシリーズでは目立たないが面白かった。
暗黒館びっくり館に関しては、終始漂う不気味な雰囲気が味わい深かったものの、ミステリの評価軸としては微妙だったと言わざるを得ない。
ホラー小説として読むのであればかなり良い。

第6位 占星術殺人事件

6位は日本のミステリ作品でもトップクラスの存在感を放つこちら。

本作はとにかくトリックが抜きん出て秀逸なトリック一本勝負の作品だ。
正直言って解決編以外はつまらないが、とにかくトリックが圧倒的なのでこの要素だけで評価されている作品と言っても過言ではない。
この点に関しては、詳細な犯行方法については結構雑な十角館と似ている。

斜め屋敷異邦の騎士あたりも履修したいところではあるが、他にも読みたい本が多数あるので悩ましいところである。

第5位 Xの悲劇

TOP5にしてついにクイーン作品の登場である。
Yの方は去年読んだが、個人的にはXのトリックの方が好みだ。
Zと最後の事件は間に合えば今年中に読み終わるだろう。

本作は何より真犯人告発のシーンが、まさにミステリの解決編のお手本のような爽快感がある。
探偵役のドルリー・レーンが元舞台役者ということで、芝居がかったセリフがよく似合う。

というか、本作とYの悲劇ギリシャ棺エジプト十字架が刊行された1932年はどうかしてる。

第4位 カーニバル

流水大説がこの位置に入ってきたことにより、回れ右してこの記事を閉じる人もいるかもしれないが、最初から「ミステリランキング」と銘打っているわけでは無いのでセーフ。オススメのミステリランキングの場合は当然圏外である。

厳密にはカーニバル単体というよりは、コズミックジョーカーを含めたJDCシリーズでのランクインである。
作中でひたすらに「探偵」「謎」をプッシュしてくるので、ついミステリという分類に当てはめて『駄作』の烙印を押してしまいがちになるが、私は最近になって戯言シリーズあたりと同類のキャラクター小説の類であると気づいたので、あえて高評価していきたい。

このシリーズに関しては、とにかく言葉遊びへの飽くなき執着と突飛な展開、そしてアクの強い登場人物たち、これが全てだ。ロジカルな犯人当てなんて一切期待してはいけない。
本シリーズを『日本語』で書かれた『推理小説』と勘違いして批判する獣人がよく見受けられる。だが、あくまでこれらは『日本語によく似たR言語』で書かれた『流水大説』である。

今となっては基本中古でしか手に入らない本シリーズだが、サブカル漬けのオタクならきっと刺さる人もいることだろう。だからこそ、わざわざこの順位に持ってきてまでオススメしたいのだ。

第3位 誰も僕を裁けない

援交探偵シリーズの暫定最高傑作が見事3位にランクイン。
本シリーズは他にも双蛇密室メーラーデーモンの戦慄が刊行されているが、未読なので暫定。

題名からは社会派ミステリの香りが漂ってくるが、中身はしっかりトリックで殺してロジックで解決しているので安心して欲しい。
とはいえ、社会派としての要素も含んでおり、まさに本格派と社会派とエロを融合したある種のミステリの完成系でもある。

このシリーズはエロミスという新たなジャンルを切り開いており、その特異性ゆえに本作が成立したといっても過言では無い。

途中でダレることなく物語が進行していくので、とにかく読みやすい。オススメ度で言えば本シリーズが一位だろう。

第2位 オランダ靴の秘密

ここに来て国名シリーズがランクイン。ちなみに今年読んだローマ〜ギリシャまとめてこの順位である。
国名シリーズといえば何といっても読者への挑戦状とエラリーによる鮮やかな解決篇が魅力だ。

とにかく犯人を特定するに至るまでの推理の納得感が圧倒的で、クイーンの影響を受けたことを公言する作家が多いのも頷ける。

どれも圧倒的傑作ではあるが、あえて四作の中で順位づけするなら、

オランダ≧ギリシャ>フランス>ローマ だろうか。

ギリシャは最高傑作として挙げられることも多いだけありトップクラスに面白いのは確かだが、個人的にはオランダが好みだ。
複雑に絡み合った事件を靴の手がかり一つで一気に氷解させていくロジックが美しい。

そして探偵のエラリーも魅力あふれるキャラクターとして描かれており、世が世なら夢女子量産間違い無いだろう。

第1位 双頭の悪魔

ということで栄えある第1位はこちら。
月光ゲーム孤島パズルをすっ飛ばして手を出してしまった学生アリスシリーズの三作目。
田舎の山村を舞台に二つの視点で語られる別々の殺人事件のお話。

三回出てくる読者への挑戦状がそもそも贅沢すぎるし、収まるべきところに全てが収まっていくロジカルな謎解きが心地良い。

なかなか分厚い一冊ではあるが、事件が二つで実質二冊分の内容であることを考えると妥当だろう。

クイーンリスペクトの作風がとにかく好みに合うので、2024年は氏の作品を中心に読んでいこうと思う。

おまけ

ここでは上のランキングで触れなかった作品館について軽く触れていこうと思う。

そして誰もいなくなった

世界で最も売れた本にランクインするレベルの超絶レジェンド。
間違いなく面白くはあったが、個人的には犯人特定のロジックがイマイチ。
クイーン作品や十角館より先に読んでいたら感想が変わったかもしれない。

カササギ殺人事件

いわゆる作中作をメインに据えた作品。ここ数年の海外ミステリではトップクラスの知名度ではないだろうか。
この本に関しては作中作は抜群に面白かったのに対して、作中世界の事件の真相がイマイチだった。作中作の使い方では、迷路館に軍配が上がる。

すべてがFになる/姑獲鳥の夏

メフィスト賞作品なのでまとめさせてもらう。
あまり触れられないが、割とどっちもバカミス寄りでは?
コズミックとの違いは作中の蘊蓄や自説が地に足ついているかどうかくらいで、大まかな内容はそこまで大差無いような気もする。
まあ続編は読むつもりだが。

ドグラ・マグラ/虚無への供物

奇書コンビ。ドグラ・マグラに関しては挫折しまくった。本編の部分は良いんだけれどねえ。
虚無への供物はオチへの持っていき方が秀逸だったが、推理合戦のところで頭の中をジョーカーがよぎっていった。こっちを先に読むべきであった。
屈指の挫折率を誇る黒死館殺人事件とも近いうちに向き合うことになるだろう。

最後に所信表明と備忘録の意味も込めて2024年に読みたい本リストを載せて終わりにしようと思う。

・月光ゲーム
・孤島パズル
・女王国の城
・斜め屋敷の犯罪
・異邦の騎士
・黒死館殺人事件
・匣の中の失落
・彩紋家事件
・魔眼の匣の殺人
・兇人邸の殺人
・エジプト十字架の秘密
・アメリカ銃の秘密
・シャム双子の秘密
・チャイナ橙の秘密
・スペイン岬の秘密
・中途の家
・災厄の町
・九尾の猫
・ダブル・ダブル
・翼ある闇
・体育館の殺人
・アリス殺し
・奇面館の殺人
・双蛇密室
・メーラーデーモンの戦慄
・首無の如き祟るもの
・魍魎の匣
・冷たい密室と博士たち……etc

終わり

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