映画「都会のトム&ソーヤ」の文句が言いたい

「実写化決定!」が原作ファンにとって死刑宣告も同然と認識されるのはもはや珍しいことではない。

その最たる原因の一つは、漫画の中の非現実的な世界を実写で再現するのが非常に困難だからだろう。

したがって、原作があまりにもファンタジーすぎなければ実写化でも大丈夫だろう、そう高を括っていた私の脳天に一撃を喰らわせたのが「都会のトム&ソーヤ」だ。

結論から言って、シンプルに面白くなかったので、上映時間の90分ちょいで代わりに原作を読むべきだ。

個人的に納得がいかなかった点としては、大して頼りにならない内人、運動神経が並以上あり、猪突猛進ですらない創也、明らかにカタギではない神宮寺さん、何もかもが別人の麗亜さん、普通の好青年の柳川さん、どうみても日本人のジュリアス、大してモテなさそうな達夫……などの似てない登場人物たちだ。

もちろん、原作に完全に寄せなければならない、とまでは思わない。
実写で再現するにあたって、あまり現実的ではない要素をオミットしてリアリティを持たせる、という手法は歓迎されるべきだ。

しかし、本作に関していえば、原作からオミットして代わりに与えられたキャラクター性がイマイチな上、そもそもそこまで無理ある設定でも無かったはずだ。
なぜこの映画の麗亜さんは赤い服を纏っていなかったのか、甚だ疑問である。

というか、この作品自体「実写化」には適していても「映画」には向いていなかったと思う。
序盤の1〜4巻が短編集みたいなものなので、映画の尺で二人の出会いから描くのは流石に無理がありすぎた。

1時間1クールのドラマで4巻までの短編を映像化しつつ主要な登場人物の描写を済ませた上で5巻を映画にする、このルートならもう少し良いものが見れたのではないだろうか。

年齢設定についても、実際の中学生は思ったよりも幼いので、ここは高校生に改変しても良いように思った。

色々言ったが、何より私は原作が好きだ。だからこそ貴重な映像化のカードをこのような悲惨な形でズタズタに引き裂かれてしまったことが悲しい。
願わくば、Netflixあたりに拾ってもらってアニメとして作り直して欲しい。


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