『カーニバル』を読もう!

清涼院流水といえば『コズミック』および『ジョーカー』のあまりのオチの内容に、手元の本を思わず壁に投げつけたとのことで「壁本」という新たなジャンルを切り拓いた偉人である。

そして『カーニバル』はそんな上記二作の待望の続編なのだが、大半の読者が密室卿と芸術家の正体に愛想をつかしたのか、ネット上でも感想の声は極端に少ない。
そもそも読んだ人間の絶対数が少ないのだろう。

しかし、敢えて私は言いたい。

本当にヤバいのは『コズミック』よりも『カーニバル』の方であると

だが残念ながら知名度の問題で槍玉に挙げられることすらほとんど無い。
そこで私は、清涼院流水の真骨頂『カーニバル』をより広く知らしめるべく、こうして筆をとるのであった。


……とまあ御託を並べたわけであるが、要は感想文である。
この文を読んで少しでも本作に興味を持っていただき、実際に手に取っていただけたなら幸いだ。(色んな意味で)
なお、ネタバレには配慮しているので未読の方も安心してほしい。

…仮にネタバレされても意味がわからない?
それはそう。

『カーニバル』のココがすごい!①超長い!

まず中身に触れる前に、この本はとにかく長い。
私が読んだのは文庫版だが、全五冊であることに加えて一冊がやたらと分厚い。
特に五巻目は魍魎の匣並に厚みがあり、一般的なサイズの文庫本七〜八冊くらいのボリュームがある。

今見返したら読了までに2ヶ月近くかかっていた。
読み終えるだけでも少なからず達成感が得られるだろう。

『カーニバル』のココがすごい!②事件のスケールがでかい!

とにかくこれに尽きる。
本作で主題となる一連の事件は、『コズミック』での1200人の密室殺人など比較にならない。1200人くらいなら1ページもあれば処理できるレベルだ。

最終的な死亡人数は一応ネタバレになりそうなので触れないが、「ビリオン・キラー」という登場人物が現れることから察してほしい。

そしてパワーアップしたのは被害人数だけではない、馬鹿馬鹿しさも数段上をいっている。
本作は『コズミック』の前半と同じような短編集に近い形でそれぞれの事件が描かれているのだが、鉄球をトッピングしたピザが凶器だとか階段が一段消失して足を滑らせるといったトンデモトリックがこれでもかというレベルで登場する。

その上で、これらの内容を一応解決しているので、少しでも気になったら読んでみてほしい。
まあ納得がいくかどうかは別の話だが。

『カーニバル』のココがすごい!③魅力的なキャラクターがたくさん!

作品全体が長大なこともあり、登場するキャラクターもかなりの人数が存在する。
お馴染みJDCの面々はもちろんのこと、世界規模の事件ということで、存在だけ触れられていたDOLLの人物も多数登場する。

ちなみにJDCは、Japan Detective Club(日本探偵倶楽部)という作中に存在する組織の通称であり、所属する探偵は「Dネーム」という奇抜な名前と必殺技のような推理法を持ち合わせている。

DOLLはJDCの上位組織にあたり、世界各国の探偵組織の元締めのようなものだ。
さらにDOLLでは探偵をA〜Kにランク付けしており、それらを超越した推理力を持つ者はS探偵に分類される。
そしてこのS探偵は、DOLL250年以上の歴史においても19人しかいない。

これらの設定からも何となく感じるだろうが、ミステリにしてはかなりキャラ要素が強い。
事件のインパクトも強いが、登場する探偵たちのキャラクターも個性が爆発している。

「事件そのものの構造と解決のロジック」よりも「事件を解決する探偵」そのものが好みならば、本シリーズはかなりオススメだ。
更にいうと、西尾維新の作品が好きなら絶対に読んだ方がいい。あの言葉遊びの源流を感じることができる。

さいごに

頑張って褒められるところを捻り出してはみたが、これ以上出そうに無いので諦めた。
正直この本のオチは酷い。
決して人に勧めるべき本ではないし、人格を疑われかねないので好きな作品として挙げるのも憚られる。
だが、誰かと内容について話したくなる不思議な魅力を兼ね備えているのも確かだ。

その点において、このシリーズは単なる駄作の「小説」には留まらない「大説」であると言える。

ここまでの拙い文章の中で少しでも興味を抱く要素があったなら、面白いかどうかは別として、ぜひ一度は手に取ってみてほしい。

ちなみに、これらJDCシリーズは少なくともあと一冊「双子連続消去事件」をテーマにした作品が刊行される予定らしいが、20年ほど音沙汰無い。
それどころか、既刊の作品も新品での入手はほぼ不可能で、書店でもまず見かけることはない。私は全部メルカリで買った。いずれプレミア化するかもしれない。

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