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毎日読書メモ

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2021年11月の記事一覧

毎日読書メモ(180)『凍』(沢木耕太郎)

毎日読書メモ(180)『凍』(沢木耕太郎)

今日のNHK「ニュースウォッチ9」で山野井泰史さんのインタビューが放映されていた。今年、ピオレドール生涯功労賞というフランスの賞を受賞した、というのを何日か前の報道で聞いていたが、それにちなんでのインタビュー。

この記事によると、「生涯功労賞(The Lifetime Achievement)とは、長年にわたりアルパインクライミング界で目覚ましい活躍を見せ、その業績が後世のアルピニストたちに多大

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毎日読書メモ(179)『私の中の男の子』(山崎ナオコーラ)

毎日読書メモ(179)『私の中の男の子』(山崎ナオコーラ)

まだ11月で、今年の総括をするにはちょっと早いけれど、今年のわたしのエポックメーキングだった出来事のひとつは山崎ナオコーラの再発見であった、と言える。『肉体のジェンダーを笑うな』(2020年発表)に驚愕し、『鞠子はすてきな役立たず』(2019年)でダメ押しをされた感じ(発表順は逆だが)。作者プロフィールに「性別非公表」と書いてあり、ジェンダーへの違和感が上記2作にもあらわれているが、2010-20

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毎日読書メモ(178)『団体旅行の文化史』(山本志乃)

毎日読書メモ(178)『団体旅行の文化史』(山本志乃)

しばらく前の朝日新聞の書評欄の情報コーナーに山本志乃『団体旅行の文化史 旅の大衆化とその系譜』(創元社)という本が紹介されていて、文化史の本好きなので、早速読んでみた。作者は神奈川大学教授だが、長く、旅の文化研究所(近畿日本ツーリストが運営している研究機関)で研究活動をしていた人で、その前は千葉の館山市立博物館で学芸員をされていたということで、ご本人のこれまでの研究成果を踏まえ、更に多くの資料にあ

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毎日読書メモ(177)『風味絶佳』(山田詠美)

毎日読書メモ(177)『風味絶佳』(山田詠美)

2005年12月の日記より、山田詠美『風味絶佳』(文藝春秋、現在は文春文庫)の感想。

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わたしは山田詠美のそんなにいい読者ではない。

デビュー作『ベッドタイムアイズ』 から、芥川賞候補になっていた時代には何冊か続けて読んだが、自分と価値観が違うものを受容する力の小さい時代に読んだせいか、今ひとつ入り込めず。一時すごく人気のあった『ぼくは勉強ができない』 や『放課後の音符(キイノート) 』

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毎日読書メモ(176)『三月は深き紅の淵を』(恩田陸)

毎日読書メモ(176)『三月は深き紅の淵を』(恩田陸)

恩田陸の「水野理瀬」シリーズ第一作。『三月は深き紅の淵を』(1997年、短編)の後、
『麦の海に沈む果実』(2000年、長編)
『黒と茶の幻想』(2001年、長編上下巻)
『黄昏の百合の骨』(2004年、長編)と続き、今年、
『薔薇のなかの蛇』(2021/5/26)が刊行されたらしい。読まねば!

2001年7月の日記より。

恩田陸『三月は深き紅の淵を』(講談社文庫)。理瀬シリーズ第一作。

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毎日読書メモ(175)『嫌われ松子の一生』(山田宗樹)

毎日読書メモ(175)『嫌われ松子の一生』(山田宗樹)

過去日記より。単行本の装丁の美しさで読んだ、ジャケ買い読書。

山田宗樹『嫌われ松子の一生』(幻冬舎、現在は幻冬舎文庫で上下巻)を読む。本屋の店頭で、本の表紙を見たときから気になっていた本だが(赤い鹿の子模様の千代紙の表紙で、なんだか心に残るのだ。それに「嫌われ」ってなんだよ、と、タイトルも面白い)、単行本で見たときも、最近文庫に落ちたときも、もう一歩のところで買えず、そうしたら図書館で発見したの

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毎日読書メモ(174)『海は涸いていた』(白川道)

毎日読書メモ(174)『海は涸いていた』(白川道)

2002年2月の日記より。白川道『海は涸いていた』(新潮文庫)は1996年に刊行され、1998年に文庫になり、この年に「絆」というタイトルの映画にもなっているようだが、今も、この映画の画像の表紙なんだろうか??

白川道は中瀬ゆかりと事実婚状態にあって、西原理恵子の漫画とかにも登場していたのは知っていたが、横森理香『ぼぎちん』のモデルだったのか! 今Wikipedia読んで知った。そして、亡くなっ

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毎日読書メモ(173)英国中上流階級と多産

毎日読書メモ(173)英国中上流階級と多産

2006年3月、映画「ナルニア国物語」を見てきた直後の日記。

映画「ナルニア国物語」を見て来ました。
原作に忠実に作られていて、よくも映像化したものだと、感心しながら見ました。

原作ものなので、ネタを割りますが、この物語の主要なテーマのひとつはきょうだいの相克です。
長男風を吹かす兄ピーターへの、次男エドマンドの憎悪心が、ナルニア国の中で、悪につけ入られる隙となり、ナルニア解放への道を困難なも

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毎日読書メモ(172)山本文緒追悼:『シュガーレス・ラヴ』

毎日読書メモ(172)山本文緒追悼:『シュガーレス・ラヴ』

山本文緒追悼その2で『シュガーレス・ラヴ』(集英社)を読んだ。「小説すばる」の連載だったので、集英社から単行本が出て、集英社文庫になったが、現在は角川文庫。ぱっと見たところ、多くの山本文緒作品が角川文庫に集約されているようだ(一部ドル箱的な作品が文藝春秋と新潮社に残っている)。

主に女性が苦しむ病気をテーマとした短編集。扱われているのは骨粗鬆症、アトピー性皮膚炎、便秘、突発性難聴、睡眠障害、生理

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毎日読書メモ(171)『シーソーモンスター』(伊坂幸太郎)

毎日読書メモ(171)『シーソーモンスター』(伊坂幸太郎)

伊坂幸太郎を新刊で追い続けるのは結構大変なので(図書館で予約して待っているといつまでも順番が回ってこず、他の本の予約が出来なくなる)、あんまり新刊情報に敏感になりすぎないように気を付けているのだが(と言いつつ今日の新聞に『ペッパーズ・ゴースト』の書評が出てきたのが気になる、すごく気になる)、一昨年刊行された『シーソーモンスター』(中央公論新社)が図書館の棚にあるのを見て、うわ、存在すら気づいていな

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毎日読書メモ(170)『太陽を曳く馬』(高村薫)

毎日読書メモ(170)『太陽を曳く馬』(高村薫)

昨日、高村薫『新リア王』(新潮社)の感想を掘り起こしたので、更に探してみたら『太陽を曳く馬』(上下、新潮社)の感想文も発見。転載。読書メーターは字数制限があることもあり、あっさりとした感想しか残っていないが、すごく重たい読書だった。『晴子情歌』の表紙は青木繁『海の幸』、『新リア王』の表紙はレンブラント、『太陽を曳く馬』の表紙はマーク・ロスコ、不思議なとりとめのなさ。

2011年8月の記録より

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毎日読書メモ(169)『新リア王』(高村薫)

毎日読書メモ(169)『新リア王』(高村薫)

過去日記より高村薫『新リア王』(上下・新潮社)の感想を拾ってきた。

福澤彰之シリーズ、と呼ばれる『晴子情歌』、『新リア王』、『太陽を曳く馬』の第2作目。高村薫の読書は全力格闘という感じ。どの本も1回ずつしか読めていないので、消化不良な部分があって悔やまれる。もう一度読めるかな。

2006.3.2の日記より:今日から高村薫『新リア王・上』(新潮社)読みはじめる。愛ルケ(渡辺淳一『愛の流刑地』)の

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毎日読書メモ(168)『倒れるときは前のめり』(有川浩)

毎日読書メモ(168)『倒れるときは前のめり』(有川浩)

有川浩のエッセイ集『倒れるときは前のめり』(角川書店、現在は角川文庫)を読んだ。土佐旅福という高知みやげのショップのデザインを元にした柑橘類の絵の表紙が美しい。

稀代のストーリーテラーが、自分自身のことを語ると妙に生硬だったりする場合がある、というのを、かつて、恩田陸の『小説以外』を読んだときに思ったのだが、有川浩の『倒れるときは前のめり』もまた、自分自身の話をするとなんだか気負ってしまうのだろ

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毎日読書メモ(167)『屋上のウインドノーツ』(額賀澪)

毎日読書メモ(167)『屋上のウインドノーツ』(額賀澪)

額賀澪『屋上のウインドノーツ』(文藝春秋)を読んだ。2015年に『ウインドノーツ』というタイトルで、第22回松本清張賞を受賞した、デビュー作に近い作品(ほぼ同時に『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞していて、両作は同日に単行本として発売された)。

わたしが初めて読んだ額賀澪作品が『風に恋う』(文藝春秋)で、これと同様、高校の吹奏楽部を舞台とした作品。自分がずっとアマチュアオーケストラで楽器を演

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