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2021年10月の記事一覧
毎日読書メモ(152)栗田有起『ハミザベス』、古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』
読みかけの本を読み終えられなかったので、過去日記から読書日記を拾う。この間触れたばかりの村上春樹Remixと、あんまり間があかずに読んでいたのか。
栗田有起『ハミザベス』(集英社)読了。中編2本、いずれも、特殊な境遇にありながら、その特殊さを特殊さとしてアピールすることのない、淡白な少女の物語、という感じ。表題作で母の更年期を扱っているのが、逆にわたし的には卑近であったが、もう一声欲しい感じだっ
毎日読書メモ(151)『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』(千葉雅也・二村ヒトシ・柴田英里)
哲学者千葉雅也・AV監督二村ヒトシ・彫刻家柴田英里の鼎談『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』(角川書店)を読んだ。2017年から2018年にかけて、5回にわたって、欲望(主に性的な欲望)と、主体的に生きることについて語り合っている。
欲望の様々な形とか、社会的なムーブメントについて語られていて、知らないことが多く、1ページずつ引っかかりながら読む。LGBTQ+の、Q+の部分とか、全然知らなかったな、
毎日読書メモ(149)村上春樹RMXシリーズ(ダ・ヴィンチ・ブックス)
昔の日記から読書記録を掘り返していて、古川日出男『ニ〇〇二年のスロウ・ボート』(文春文庫)の感想を発見。
電車の中で古川日出男『ニ〇〇ニ年のスロウ・ボート』(文春文庫)読了。かつて、村上春樹の小説のリミックス本が5冊位まとめて出たことがあったのだが、そのうち『中国行きのスロウ・ボートRMX』として刊行された本を改題したもの。あのシリーズの残りの小説はじゃあ誰が書いて、今はどうなっているんだろう?
毎日読書メモ(148)林雄司×岸政彦「聞いたそのままが面白い」
岸政彦編『東京の生活史』(筑摩書房)を買って(買った日記)半月たった。友達がコメントくれて、毎晩一人分ずつ読んで、150日で読了予定、とのことだった。なるほど! 日によって、読めないこともあるが、わたしも寝る前に一人分ずつ読むことにした。
えいやっと買うのが先で、結局これなんの本なん?、ってあんまり理解していなかった。本もちょっとだけ「凡例」が書いてあって、その後はいきなり、聞き取りがだーっと並
毎日読書メモ(147)『いやよいやよも旅のうち』(北大路公子)
『生きていてもいいかしら日記』を読んで抱腹絶倒した北大路公子、もっと読んでみようと思って、今度は『いやよいやよも旅のうち』(集英社文庫)を読んでみる。「小説すばる」に連載されていた紀行文らしい。『生きていてもいいかしら日記』を読む限り、自宅でビール飲んでいるのが一番幸せ、と思っているらしい作者がそんなに旅行好きとは思えない。と思って読み始めたら本当にその通りで、編集者に連れ出されて日本各地を旅して
もっとみる毎日読書メモ(146)桜庭一樹「キメラ―『少女を埋める』のそれから」(「文學界」2021年11月号)
「文學界」2021年9月号に掲載された『少女を埋める』については、まずは朝日新聞文芸時評(8月25日掲載)での取り扱われ方に、作者桜庭一樹がTwitter上で異を唱えた時点で書いてみて(ここ)、全文読まずには判断出来ないな、と、「文學界」を買ってきて読んだところでもう一度書いた(ここ)。その後、まずはネット上の文芸時評が改稿され(ここ)、新聞本紙(紙媒体)での説明を求めた桜庭さんの要請を受け入れた
もっとみる毎日読書メモ(145)アスペルガー症候群を考える2冊:『僕の妻はエイリアン』『地球生まれの異星人』
泉流星『僕の妻はエイリアン―「高機能自閉症」との不思議な結婚生活 』(新潮文庫)を読み、それから同じ作者の『地球生まれの異星人―自閉者として、日本に生きる』(花風社)を続けて読んだ。『僕の妻はエイリアン』は夫の立場から書かれた本だが、実際に執筆していたのは当事者である妻の方で、先行する『地球生まれの異星人』は自分の半世記として、アスペルガー症候群の認識及び対処の闘いを描いている。
どちらも版元品
毎日読書メモ(144)『リセット』(垣谷美雨)
現在天海祐希主演の映画「老後の資金がありません!」公開中だが、その原作を書いた垣谷美雨の初期の作品『リセット』(双葉社、現在は双葉文庫)を、刊行直後に読んだ時の短い記録。デビュー作『竜巻ガール』(双葉社、現在は双葉文庫)が超爽快で面白かったので、続けて読んだら大ヒットだった。当時は知る人ぞ知る、という感じだったが、『リセット』がドラマ化され、その後『夫の彼女』(双葉社、その後『夫のカノジョ』と改題
もっとみる毎日読書メモ(143)『ナオミとカナコ』(奥田英朗)
奥田英朗『オリンピックの身代金』(講談社文庫)の感想書いたら(ここ)、人に勧められたので『ナオミとカナコ』(幻冬舎、現在は幻冬舎文庫)を読んでみた。これも動機の弱い犯罪(いや、弱いかは判断難しいが、犯罪を犯した後のメンタルが不思議な犯人たち)。ナオミのデパート外商の仕事の部分が面白かった。お仕事小説好き。そして、この監視社会をこんなに認識しないでこの人たちは生きているのかという驚き。Nシステムとか
もっとみる毎日読書メモ(141)佳き少女小説:松田 瓊子『紫苑の園・香澄』
松田 瓊子(1916-1940)は夭折した日本の小説家。小説家野村胡堂の娘で、後の図書館情報大学学長松田智雄の妻(結婚して2年ちょっとで肺結核で亡くなっているが)。名前も知らなかったのだが、現在朝日新聞に連載されている、池澤夏樹「また会う日まで」の中で取り上げられていて、存在を知った。「また会う日まで」は、池澤の大伯父(福永武彦の母の兄)である、キリスト者である海軍軍人秋吉利雄の生涯を描く小説だが
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