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雑記

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#経済学

社会的生産学の必要性

経済学が限界を迎えているのではないか、ということは縷々書いてきたが、ではそれを一体どのように再定義したら良いだろうか。

現代の経済学の問題点

いくつかの問題がある。一つには、当然の如く経済学が直面している最大の問題である利益を目標として設定した学問の有効性ということがある。ついで、貨幣価値で計測する計量制というのが社会の構成をどの程度反映しているものなのかという問題もある。また、近代経済学以降

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経済学の限界

何度か触れてきていることだが、経済学の理論にはいくつかの点で限界が見えているように感じる。主なものを挙げれば、これは既に問題として十分に認識されていることだろうが、完全情報の前提の問題、貨幣の稀少性を前提としたその最適配分を目的としていること、さらには市場均衡を作り出すために閉鎖的世界を作らないといけなくなること、そしてそのために全市場参加者の時空を統一して考える必要があることなどが挙げられそう。

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功利主義の経済学的適用の限界

個人の自由を重視した現代社会における社会制度や政策を評価する重要な基準となっているものに、功利主義がある。

では、その幸福とはいかに測られるべきなのだろうか。その経済学的な解決法が、貨幣によって定量化し、その貨幣の動きを記録することで功利主義的な満足度合(効用)を測るというものだ。近代経済学は、その手法を採用することによって定量化された経済を政策評価に応用し、幸福を貨幣評価するという現代経済社会

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余裕なき利益至上経済管理の限界

利益至上主義が経済のグローバルスタンダードとなって久しいが、本当に利益の極大化というのは経済にとってメリットをもたらすのだろうか?

事業評価手法としての会計

会計は15世紀くらいの成立と考えられるが、会計成立当時は、国によって通貨も違い、その交換比率も場所によってまちまちであるなどの複雑な経済状況の中、自国の貨幣価値でその事業内容を数字で把握するというのは画期的な手法であったと考えられ、それは

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新たな信用制度について

信用とは一体何か、と考えると、経済学的には債務の返済能力ということになり、そのために債務残高の逆数としてしか信用は定義し得ないことになる。現状、債務というのは現在支払いができないから金を借りてそれを返す、ということであり、そうなると支払いができない、という時点でもはや信用という言葉からは外れるような気がして、定義的にどうも整合性がないように感じる。

そこでどうすべきかを考えると、いわゆる契約と呼

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自然言語と付加価値の源泉

数学的記述が閉じた世界での完全論理性を求めるのに対して、自然言語はどんなに完全を求めようとしても、常にそこからこぼれ落ちるものがある。というのは、自然言語は基本的にコミュニケーションツールであり、何か完全なものを伝えるというよりも、違いを確認するために、あるいはその違いを埋めるために用いられることが多くあるからだ。

ここで、付加価値というものについて考えてみる。付加価値とは、原価に対して何か追加

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数学的世界の現実応用不可能性

数学的世界が成り立つためには、当然全ての人がその数学的世界のルールに従う必要がある。それは、単に計算ができる、ということではなく、全ての人が自分の考えることを全て数学的に記述でき、そして他者のそれも含めて全て知っている、という状態であることを意味する。そんなことはどう考えても不可能で、だから経済学でも、その中のたった一部である情報の完全性というものすら実現できないのに、それが成り立つとして、という

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社会を科学化するインセンティブチェーン

対話が駆け引き化すると、直接需給を調整するよりも、互いに相手に向けてなんらかのインセンティブを供給し、それによってゼロサムゲームを防ぐようになる。そのインセンティブは、仮の構造を作り、その中の一部をパーツとして相手に供給することで自分の構造の発展強化を図るというものであるといえる。それは、既に資産を持つものにとっては非常に有効な手法だが、自分に不足するものを得たいものにとっては、いつまで経っても自

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デリバティブの数理学上問題点

金融商品としてのデリバティブというのは、ある金融商品から派生して生まれるもので、例えば債権リスクをまとめて商品化してリスクヘッジを図る、といったことに用いられる。しかしながら、片方がリスクをヘッジすれば、当然もう片方がその負担をするわけで、それは数学的にアルゴリズムが組まれてもっともらしく商品化されるが、本当にその数学的考え方は信頼できるのか。

つまり、リスクを売るために商品化する側は、情報を持

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情報の完全性と経済学

情報の完全性と経済学

このところ経済学の理論と現実との乖離がどのあたりから現れているのかを追っているのだが、メンガーが効用の数学的分析の難しさを言い、マーシャルやケインズが一般均衡の成立について否定的だったのにも関わらず、新古典派経済学は、マクロ経済学との接続がなされぬままに無差別曲線によって効用の数学的分析がなされたかのように装った上で、ワルラス的な一般均衡に基づいたマクロ経済学が近代経済学の基本となっている。

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経済学的利益の源泉

経済学的利益の源泉

限界効用逓減の法則が、メンガーが労働価値説を批判して主観的価値理論を打ち立てたことから展開し始めたところまで見た。すでに見た通り、メンガーは主観的価値理論を数学的に処理することには否定的な見解であったが、にもかかわらず限界効用というものが数学的にモデル化され、それが近代経済学の基礎となってきた。その矛盾こそが、現代経済学の直面している問題として、昨今のさまざまな経済的諸問題として顕在化しているので

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市場・政府・組織・社会 経済学と経営学の境目

市場・政府・組織・社会 経済学と経営学の境目

経済学と経営学は一体どこで分かれるのか。現代において、ざっくりと言えば、経済学はマクロの社会的厚生のようなものを極大化するためにあり、一方経営学はミクロの経済主体の利益の最大化のためにあるのだと言えそう。そして、近代経済学は、ミクロの利益最大化行動が市場を通じてマクロの社会的厚生の最大化をもたらすのだと説明していると言えるのだろう。しかしながら、実際にはそこには、経済学において合成の誤謬として知ら

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