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妄想ショートショート部

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妄想好きなオトナ達が同じテーマでショートショートを書きます。
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#ショートショート

限定ポテトとタカシ

限定ポテトとタカシ

 マジ最悪。またあの店員、ニヤニヤしながらこっち見てるし。デートが毎度この店ってどうなの?バイト先好きすぎでしょ。しんどいわ。

「お待たせ~。あ、お金店出てからもらうわ。こないださ、カナさん、あ、あの髪の毛ながい細い人に奢ったげなよ、とか言われてさ、見られててさ」

 ハンバーガーセットが乗ったトレーをテーブルに置きながら、息つく間もなく話し続けるのが私の彼氏。この店で土日バイトしているけど、バ

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猫の恩返し(クリスティーナの場合)

猫の恩返し(クリスティーナの場合)

 その猫は、怒っているようだった。

「ちょっと、『その猫』なんて言わないでくださる?私にはクリスティーナっていう素敵な名前があるんですから」

− おっと、それは失礼しましたクリスティーナ。……君、僕の声が聞こえるの?

「ある程度生きてると、人間や動物の言葉だけじゃ物足りなくなるのよ。ナレーションも聞こえてくるわ」

− まるで「くまのプーさん」のアニメーションのようだね。

「知らないわ」

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おじさんとパンケーキと若者

おじさんとパンケーキと若者

 「良いっすよね♪朝からパンケーキ。糖分とると幸せな気分になるし」

グイグイと俺の前に相席してきたのは、スーツをしっかりと着ている割には髪はロングヘアーを一括りにした、サラリーマン風の若い男だった。

「にしても、朝は混むってわかってんだから相席が嫌なやつは来なきゃいいのに!」

先ほどの女性客に聞こえる程度のボリュームで言い放つ。

「ま、あの人たちが待つっていったから俺が今パンケーキにありつ

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ご来店、お待ちしてます。

ご来店、お待ちしてます。

5月25日
 今日は久しぶりのバイト。コロナからの緊急事態宣言、やっと解除〜バイトもずっと休みで干上がるかと思った。社員さんたちはずっと出てるんだもんな、社会人って感じ。新宿駅のホームは人だらけで、店にもひっきりなしにお客さん。皆マスクでいつも以上に無口。ロボットみたいだ。そんなこと思いながら接客してたから、一度だけお釣りを間違う。もう、みんなSuica使えよ。

5月26日
 暑い。蒸し暑い。も

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たかみーが朝食を。

たかみーが朝食を。

え…あれ…たかみーじゃない?

いつからいた?なんで気付かなかったんだろう。こんな見える位置に…いや、本物かどうかわかんないけど。偽物?え?でもあんなに色白いおじさんいる?髪が綺麗なおじさんいる?窓際で朝の光が差し込んでキラキラしてるんだけど。あんなキラキラしてるおじさんいる?

周りの人は気付かないの?気付いてて知らないフリしてるの?となりの席の女の子たちはなぜ普通に座ってるの?たかみー知らない

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こんな海じゃ溺れない

こんな海じゃ溺れない

「ねえ運転手さん。この人降りたら、海に行ってください。近くでいいからお願いします」

 ベロベロに酔いつぶれた挙句、私に寄りかかって爆睡している同僚をすみに追いやりながら、そう告げたところまでは覚えてる。

 今、国道沿いを歩きながら、波の音を聴いているのはそのせいだ。こんな夜更けに、湘南にいるのはそのせいだ。

 全然近くはなかったけど、確かに、この上なく海らしい海にいる。

 でも、あそこで降

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砂を掘るということは

砂を掘るということは

ザクッ、グッ、ドサッ

ザクッ、グッ、ドサッ

ザクッ、グッ、ドサッ

なるほどね、砂を掘るのはたぶん幼稚園以来だけどなんとなくコツ掴んできたわ。スコップの角度と勢いとどの位置でテコするか、ね。いけるいける。

つーか、どこまで掘ればいいんだ?足曲げれば見えなくなるくらい?全身?もっと深く?ネットで調べておくんだったな。ネットにあるか?「砂浜 深さ 人」みたいな?ああ、こんなざるみたいな計画、うま

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断崖絶壁

断崖絶壁

   梅雨が明けて久しぶりの晴れ間、暇すぎて昼で仕事場を追い出され半休になった。溜めていた録画でも見ようかと思ったら、電話が鳴る。

「アオイ、私、結婚することになったの。隠してたけど、お腹に赤ちゃんが居てね、もう3か月も過ぎてて、いつ言おうか悩んでたんだけどね、今日彼と一緒に籍を入れてきたの。」

と言い出した。

「……おめでとう。ちょっと驚きすぎて、そうなんだ。良かったね」

「母子手帳って

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カメラマン(仮)

カメラマン(仮)

 ずっと馬鹿みたいに晴れてたのに、今日は朝から雨だった。日頃のおこないか?今日、姉は嫁に行く。

 こういう堅っ苦しい式みたいなのは苦手だけど、まあ、家族のだし。タダ飯食えるからいっか、くらいに思ってたのに。2年前から趣味で始めた一眼レフ。こいつのせいで、今日は一日カメラマンだ。

 ちゃんとプロに頼めばいいのに。こだわりはないのかね、そこに。「あんたに撮ってもらいたい」とか、なんだそれ。こういう

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ふじいろ

ふじいろ

 結婚式が嫌いだ。お金を払ってまで、どうでもいい話を延々聞かされるだけ。本当に祝いたい夫婦には、個別でなにか送ればいいでしょう? 自分が結婚した時に呼べばいいじゃないと言われても、こっちは結婚する相手も予定もない30歳なのよ。

 薄紫のふんわりとしたギリギリ膝下のドレスは、妹が自分のお色直しのドレスが紫だからと無理やり合わせた。わざわざ何店舗も回って、渋る私と一緒に購入したのだ。本来なら、花嫁が

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はっきりと見える

はっきりと見える

 柴田美優は、少し疲れていた。

 今は夏休み。中学三年、受験生である美優にとって、さほど楽しくない勉強の夏。周りもみんな、なんとなく緊張したような、憂鬱な空気を溜め込んでいるように見えた。

 「受験勉強は楽しくないけど、塾は嫌いじゃない」

 エアコンの効いた教室で、問題を解きながら美優は思う。他校の生徒も集まる駅前のこの塾は、志望校と成績別にクラスが分かれている。それは少し嫌だけど、同じクラ

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6月は出会いの季節かもしれない

6月は出会いの季節かもしれない

 僕は今、23年間生きてきた人生で初めての経験をしている。

「あの、これと同じようなのか私に似合いそうなのありませんか?」

そう言って割れた眼鏡を差し出してきたのは、小柄でフェミニンなワンピースを着た女性だ。フェミニンの意味はあまりわからないが、梅雨時の6月にピッタリな白地に紫陽花のような模様が入っている。多分これがフェミニンだ。

 コロナ自粛が終わって眼鏡を作りに来た僕は、検査が混んでいて

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素顔とコンビニ

素顔とコンビニ

マスクの下の、顔が見たいと思った。

そのコンビニは、駅までの途中にある。

引っ越したばかりの自宅から、駅までの10分間にコンビニは4軒。

1つは駅の中。

駅と自宅近くばかり使うから、そこに立ち寄ったのはたまたまだった。

4月なのに汗ばむほど暑い日で、アイスコーヒーのPOPに惹かれて入っただけ。

そこで私は、彼をみた。

レジで聞かれた「袋に入れますか」の一言。

マスク越しにしてはよく

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