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ショートショート138「AsobI」
「またAIで遊んでいたのかい?」
「ん? あぁ、気づいたら2時間4分53秒も経過していたか」
「よく飽きないものだね」
「むしろなんで皆は興味がないのか不思議なくらいだよ」
「問いかけをしても精度はまちまち。生成される解答は非合理なものも多い。そんなものに酔狂になれるとはね……」
「予想外の答えが返ってくるから面白いんだ。これは未来であり、可能性だよ」
「そうかい……それで、今度は何を
ショートショート137 「デトックス」
現代人はスマホ、パソコンに毒されている。
週に一度くらいはデジタルから離れる「デジタルデトックス」の日を設けることが、身体にもメンタルにもいいらしい。
なるほどなるほど。確かに、休みの日も四六時中仕事の連絡が来やしないかとスマホを握りしめ、こんな小さな装置がブルッと震えるたびにヒヤッとする生活なんて健全ではないだろう。
仕事熱心? いや、臆病なだけさ。放置するのが怖いんだ。今日気づくことが
応募作品供養「侍がやってきた日」
こちらは今年のImagine Little Tokyo Short Story Contestの応募作品です。 がんばって書いた作品なので供養のためここで公開します 笑
「実は、お前は〇〇族の末裔なのだ」
ファンタジー映画なんかで聞いたことあるセリフ。こういうシーンは、事実を告げる側はなんだか誇らしげだけど、主人公の方は大抵「そんなこと言われてもどうしたら」って顔をする。
僕には、主人公の
コトバでスケッチ7「親友、母になる」
「散歩に行かない?」
そう持ちかけられて、なんか慌てた。
運動した方がいいとも聞くけど、臨月のお腹は想像以上に大きい。お腹以外は羨ましいくらいに細いままのヒナタ。その膨みがアンバランスで不安を余計に掻き立てる。
「大丈夫なの?」
「なにが?」
「いや、動いても」
「っていうか、動いた方がいいんだって」
わたしは子どもを産んだことがないので、妊婦の身体のことはよくわからない。そんなもんな
【更新:活動報告】Panasonic様 ストラーダ Products Story②③
ライティングを担当させていただきましたストラーダ Products story
先日公開の1に続いて2、3も公開となりました。
Panasonic様が大切にされている「ユーザーの声を聞く」ことから生まれる熱いストーリーを是非、ご覧ください。
【Products story2 スイング機構】
【Products story3 有機ELディスプレイ】
【活動報告】Panasonic様 ストラーダ Products Story①
ライティングを担当させていただきました
Panasonic様カーナビ
「ストラーダ Products Story(開発ストーリー)1.フローティング構造」
が公開となりました。
2. 3. も追っての公開となります。
コトバでスケッチ6 「古い本屋」
※一枚絵のイラストスケッチ的な感じで、小説のワンシーン風の文章を書く描画力のトレーニングです。
物語の構想があるわけではないですが、いずれ今後の作品に組み込むかもしれません。
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例の本屋がとうとう潰れるらしい。そういえば店名はなんだっけ。軒にも書かれていなかったから僕は知らないし、名前なんてそもそもないのかもしれない。
中心街から市バスに乗って30分ほどの僕の
コトバでスケッチ5 「大人 大変」
※一枚絵のイラストスケッチ的な感じで、小説のワンシーン風の文章を書く描画力のトレーニングです。
物語の構想があるわけではないですが、いずれ今後の作品に組み込むかもしれません。
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食堂の引き戸はカララと抵抗なく開いた。
時間はおやつ時で、暖簾も外にかかっていたのに店内は電気が消えている。窓から差し込む陽の光が、窓枠やらテーブルやらに遮られ床に不気味な陰影を作っ
コトバでスケッチ4 「都会 憧れ」
※一枚絵のイラストスケッチ的な感じで、小説のワンシーン風の文章を書く描画力のトレーニングです。
物語の構想があるわけではないですが、いずれ今後の作品に組み込むかもしれません。
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「特に問題はありませんでしたので、こちらにサインを」
「はい、お世話になりました」
不動産仲介会社の若い男性に、サインした書類と一緒に鍵を返す。4年暮らしたこの部屋も今日でお別れだ。
コトバでスケッチ3 「異文化 交錯」
※一枚絵のイラストスケッチ的な感じで、小説のワンシーン風の文章を書く描画力のトレーニングです。
物語の構想があるわけではないですが、いずれ今後の作品に組み込むかもしれません。
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N365星、この星に住む異星人と私たち地球人との交流が始まったのは、私が中学生の時だった。人類史上初めての異星人との接触に世界中が色めきたっていた。
けどまぁ、最初の邂逅を果たしてしま
コトバでスケッチ2 「フツー 常識 基準」
※一枚絵のイラストスケッチ的な感じで、小説のワンシーン風の文章を書く描画力のトレーニングです。
物語の構想があるわけではないですが、いずれ今後の作品に組み込むかもしれません。
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春の気配を感じる日が増えたとはいえ、2月の空気は、まだまだ肌寒い。そうは言っても、換気はしないと空気が悪くなるので、というわけで休み時間になると教室の窓は開けられる。
カーテンが風に煽
コトバでスケッチ1 「映像 画質 不鮮明 だからキレイ」
※イラストスケッチ的なイメージで小説のワンシーンを切り取った風の文を描いてます。
物語全体の構想があるというわけでもないのですが、溜まっていったら何かの作品に取り入れていくかもしれません。
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ガチャコン……ガチャガチャ。
いちいち大袈裟な音を立てながら、ビデオテープが機械に吸い込まれていく。
「いつ擦り切れてしまうかわからんからね。早いとこDVDにしてしまわんと」
久しぶ
ショートショート136 「命作劇場」
ドォッ
劇場全体を震わせるような万雷の拍手の中、もう何回目か分からない公演の幕が降りた。
国立劇場。
演劇を志すものの一つの終着点と言われる1000年の伝統を誇るこの劇場に、俺たち「からくり座」が辿り着くまでの時間も長かった。
でも、ゴールは始まりにすぎないとはよく言ったものだ。ここに辿り着いてからの時間の方が長く感じる。いや、実際長い。
オリジナル脚本劇「恋狂いの貴婦人」は
ショートショート135 「GOLDEN次郎」
−1982年5月。
俊雄少年は、憂鬱な足取りで家路に着いた。
春の運動会。今回もかけっこはビリだった。活躍の有無に関わらず、全力を出しきった身体が重い。
脳裏に浮かんだのは、走る順番が発表された時の、同じグループの奴らの顔。
「よかったー!俊雄がいるならビリじゃない!!」
かけっこが得意な一郎も同じグループだったが、そもそも俊雄の存在を気に留めていない。中途半端な走力(それでも
ショートショート134「頭上の数字」
「やってしまった……」
私がそれに気づいたのは取引先に見積もり書を送信した後。何気なく内容を見返したところ、見積もり項目が2つ抜けているのに気付いた。
どうしてこの類のミスって、注意深く見ているはずの作成時には気づかなくて、ぼんやり眺めている時に気づいてしまうんだろう。
あーーー、と頭を抱えていると、カシャカシャと頭上で音がした。
慌ててトイレに駆け込み鏡で頭の上を見る。朝は「25
ショートショート133「コンピューター次長」
「その件に関しては、プログラムにないから判断できない」
定例報告で判断を仰いでみたが、目の前のロボット次長はそういった。クソ真面目な人間のことをロボット、と揶揄することがある。実際、高橋次長は陰でそう呼ばれていた。
でも、今目の前にいる高橋次長の見た目そのままの存在は、文字通りロボットなのだ。
高橋次長が胃潰瘍になったとかで、しばらく前線を離れることになり、その間の代理として派遣されて