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コトバでスケッチ3 「異文化 交錯」

※一枚絵のイラストスケッチ的な感じで、小説のワンシーン風の文章を書く描画力のトレーニングです。

 物語の構想があるわけではないですが、いずれ今後の作品に組み込むかもしれません。

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 N365星、この星に住む異星人と私たち地球人との交流が始まったのは、私が中学生の時だった。人類史上初めての異星人との接触に世界中が色めきたっていた。

 けどまぁ、最初の邂逅を果たしてしまえば、それ以降は平坦なもので、私が高校生になったときには街中でN365星人を見かけることも珍しくなくなった。

 彼らは昔のSF映画よろしく、頭に二本の触角が生えているので、非常にわかりやすい。触角をアクセサリーでいかに飾るか、が彼らの美貌や権力の指標なんだそうだ。ちなみに、恋人・パートナー以外が触角に触るのはとても失礼にあたるらしい。

 そんなこんなで私は今、N365星に来ている。

 特に目標もない人生だったので、何か聞こえのいいことに流されてみようと、文字通り「新天地」を目指すべく大学で「N365星語」を専攻した。カリキュラムの中に「N365星」への短期留学が含まれていて、いい思い出になりそうだな、という下心にも後押しされた進路だった。

 そうして全部で半年間の短期留学も四ヶ月目に差し掛かり、こっちの言葉に若干、耳が慣れてきた。

 わたしは、ちょっと気分が落ちている。

 なんというか、言葉が分かってくるにつれ、彼がけっこう悪態をつくタイプの人類だと分かってきたからだ。

 地球にやってきた人たちは、紳士的で優しくて、フレンドリーだったのになぁ。

 彼らの母星ではそうでもないらしい。言葉がわかるようになればなるほど、そういう部分にも目がいってしまう。

 けど、これは自分にとっての新天地が清い場所であって欲しいというただのエゴ。わざわざ目指してやってきたんだから、素敵な場所であって欲しいという勝手な期待だ。

 窓から見える夜景の美しさが、かえって胸の奥をカリカリ削り取ってくるような心地がする。

 ガラスに反射して、勝手に世界に期待し、絶望している世間知らずの姿が映っていた。

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