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心音 /COCONE
2021年8月12日 10:23
遠くにゆれる幾重もの稜線がおいでおいでと僕を呼ぶあの山の向こう淡い陽が洩れてさしこむ 道なき標今 惑いの空に映る魂は地上を離れすい込まれるようにあなたの元へ飛んでゆきあまりの美しさにはかなき明日はこの手をするりすべりおちていったやがてふもとの闇に浮かびあがるはあの日焦がれたとわのゆめの城跡光を求めさまよい続けるいつかの幻影
2021年5月17日 12:36
水の音が聴こえる風と共に揺れる緑や濡れたあじさいの花たちがいつもよりそばでささやきかける昨夜からの雨も上がって少し湿った土の感触を靴底に感じながらあなたにさそわれ歩き出す清々しく晴れたゆるやかな午後の公園いつもより水かさを増した流れる川を背にして近くのベンチに腰を降ろしてみるゆっくりと呼吸するように穏やかな風に吹かれる太陽と空と木々の緑は
2020年11月14日 17:48
目に見えない川が私たちの前をいつも流れているあなたは向こう岸に立ち西から日の光を浴びて眩しそうに目を細める私はそんな一枚の絵画をぼんやりと眺めているよう目の前に広がる景色は同じでも立っている場所が違うそれは近くて遠い永遠のような距離時々水面に降り注ぐ光の中にうっすらと映り込む美しい孤を描いた今にも消えそうなかけ橋こちらとあちら
2020年11月12日 11:57
朝起こされるまで寝ていること娘を起こし身支度をしてあげること夫が用意してくれた朝食を食べること三人であったかいお茶を飲むこと夫と娘を送り出したあと一人になって解放されること溢れた心を文章にすることわたしだけの楽園を創造することひと段落したら洗濯機を回すこと寝室とリビングを片して掃除機をかけること少し冷めたお茶の残りを飲むことさっきより少しだけ整っ
2020年10月31日 11:30
抵抗するものがなくなった途端身体に力が入らなくなったその時初めて抵抗出来ることの安心感に気が付いた自分を確認する自分を主張する自分を肯定するこうやって自分という個人を必死で守り続けてきたのだろうけれど抵抗しなくてよくなった途端自分がなくなった身体がふわふわするようなつかみどころのない感じ望んでいた世界だったはずなのに奇妙な感覚に徐々に不安が襲ってくる抵抗出来
2020年10月27日 18:42
黄金に染まる砂地の湿り気を足裏に帯びながら煌々と燃えるいのちを浴びておとずれる静寂の律動楕円の揺らぎそのためらいの虹彩は語り合う波間をすり抜けるいつかの記憶の戯れのようときに暗雲に招かれ虚ろな影に惑い馳せても光の記憶 その断片は見えない行路を滑り降りいつもその手を差し伸べている底の見えない黒怯えるあの夜の轟きに閉じこめられた涙の果てで
2020年10月8日 15:09
寒い。目が覚めると胸の真ん中が痛い。じわじわと寂しさに支配されてしまいそうなそんな痛みだ。“何が寂しいんだろう?なにが悲しいんだろう?”静かに身体の声に耳を傾けてみる。「寒い。冷たい。」両手でそっと肩を抱いてみる。あぁ、原因はこれだったのか、とわかる。“寒かったんだね。冷えちゃったんだね。”身体から温もりが奪われると胸の奥のみぞおち辺りが痛むようになって
2020年9月30日 20:25
艶やかな両腕を塀に預け豊かなその身を乗り出してこっちを見つめているつぶらなオレンジの瞳が透明な風に撒かれておかえりと今年も変わらず迎えてくれる声にならないただいまは祈りのように静かに水面にこだまして揺られる波紋を滑るようなあなたの羽に優しくからめとられていったいつからかあなたの姿はなくなってしまってかつて空き地だった居場所は白くて真新