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読書感想

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読書記録や、大好きな一冊について 書いています。
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#読書

「精霊の守り人」感想文〜自分の中に息づく小説

小説は不思議だ。
架空の人物が私の中で息づく。
そして残り続ける。
でも全てがそうじゃない。
心に残る物は生きているものだと思う。
その人物が、作中でどれだけ生きざまを見せてくれたか。
感情を持ち、自分の心に従い行動し、懸命に生き抜く姿を見せてくれたかだ。
それがないと、人物はただの駒になってしまう。
私が「精霊の守り人」を好きなのは、登場人物が生きているからだ。
呼吸どころか、躍動して暴れ回って

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「鏡をみてはいけません」感想文〜※ネタバレあります。

美味しいご飯の出てくる小説が好きだ。
田辺聖子さんの小説
「鏡をみてはいけません」は、主人公・中川野百合(のゆり)が朝食を作っているシーンから始まる。
野百合は、小鳥の啼(な)き声の入ったテープをキッチンに流しながら、口笛を吹きつつトマトをむいてる。テレビのニュースはつけているけど、音声をほとんど絞っている。
そこへ十歳の男の子・宵太(しょうた)が降りてきて、まだよく知らない同士の二人は、礼儀正し

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とても自己満足よりの読書感想文〜ただ、「アンのゆりかご」は面白いです

夢やあこがれは青春時代に培われる。
その源は、永遠に尽きることのない泉のように、こんこんと湧き出て心を潤してくれるものだ。
夢を燃やし続ける人は強くやさしく、
自分の心に正直で、また周囲への思い遣りにも溢れている。
そんな人と人が出会い与え合い、作り出してきた時代の流れは、連綿と私達の住む「今」までつながっている。
私は先人の財産を知らないうちに譲り受け、享受している。
長々とすみません。この本を

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生きている言葉「赤毛のアン」

紙の本が好きだ。
年季が入り、少しくたびれて
茶色くなった裸の文庫本が手に馴染む。

ページを捲り、整列した文字に目を落とすと、
たちまち本の中に引き込まれる。
読むことはおもしろい。
少しずつ、確実に文字を追ってゆく。
「生きている」と感じる言葉に触れると心が踊る。

小さな頃から何度も開いた本は、
読むたび私に「生きている言葉」を
教えてくれる。
それは自分の大切な柱となっていく。

「赤毛の

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人を読む

NHKの「100分de名著」という番組で、三島由紀夫の『金閣寺』が紹介されていた。

『金閣寺』は半年ほど前に読み難しいと感じたが、そこに描かれている主人公・溝口の暗い内面には共感できる部分もあった。

理解できない部分は多かった。

ただ、何回も読み返すほどの熱意はなかったし、自分の周りにはもっと手軽な易しい本が溢れており、そちらの方が手っ取り早くワクワクできるのだった。
底知れない何かを持って

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「金閣寺」を読み、混乱する。

自分の生きている限り付いてまわり、
切り離すことのできない性質がある。

それを呪い、疎ましく思い
取返しのつかない引け目だと考えて
苦しみながら抱えているうちに、
その特質を持つ自分こそが
世界から切り離された、特別な存在だと
考えるようになる。

その性質こそが自分だと
自分には特別な役が与えられているのだと
それが唯一の存在証明だとでもいうように。

アイデンティティーといっても、
これは他

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サラバ!を読んで。

西加奈子さんの「サラバ!」。
タクシーのお客さんに薦めてもらい、
手に取りました。

西加奈子さんはテレビで拝見して
知っていましたが、彼女の本を読むのは始めてでした。

すごく面白かったです。

「サラバ!」は、ざっくり言うと
一人の男性が、自分自身として生き始めるまでの半生を描いた物語です。

主人公の男性がイランで産まれた瞬間から大阪・エジプトで育ち大人になっていくまでの過程を丁寧に描いてい

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