サラバ!を読んで。
西加奈子さんの「サラバ!」。
タクシーのお客さんに薦めてもらい、
手に取りました。
西加奈子さんはテレビで拝見して
知っていましたが、彼女の本を読むのは始めてでした。
すごく面白かったです。
「サラバ!」は、ざっくり言うと
一人の男性が、自分自身として生き始めるまでの半生を描いた物語です。
主人公の男性がイランで産まれた瞬間から大阪・エジプトで育ち大人になっていくまでの過程を丁寧に描いているので、読み応えがあり楽しいです。
主人公の体験・追憶が、一つ一つ匂いが感じとれるほどのリアルさで迫ってきます。
この濃くて色鮮やかな、生きている文章を読んでいると、私自身の記憶のフタが開き、懐かしい匂いや感情が蘇ってくることもあります。
自分の思い出じゃないのに、どうして昔の記憶が呼び起こされるんだろうと不思議ながら心地いい感覚です。
主人公の性格・価値観が作られていく過程が丁寧に説明されているのも面白いです。
彼に影響を及ぼした家族・友人・周囲の人々が、冷静な目で、愛情を持って描き出されているのです。
登場人物の中でも「姉」は主人公の人生に強く影響する人物として書かれ、私たち読者にも強烈な印象を与えます。
前半は嫌になるぐらいのアクの強さです。
しかし読み進めていくと主人公が迷い、停滞し、立ち止まった時に
「姉」は、主人公と私に重要な事を示唆してくれ、とっても爽やかな優しい印象を残してくれるんです。
「姉」が主人公にかけた言葉、
主人公が直面する人生のテーマが、
私が最近感じたり考えていた事と同じだったので
人生の流れ・出会いのタイミングってあるんだなと実感しました。
それは簡単に気付く人もいるかもしれないけれど、会得するまでに時間がかかることもあると思います。
私は時間がかかりました。
「あっ、こうすればいいのか!」
と見つけて息がしやすくなる悟りのようなもの。
それはめちゃくちゃシンプル。
自分を中心に据えればいい。
感情、感覚を大切にして、
自分を信じて全て決めればいい。
私はその事が腑に落ちた時、すごく楽になりました。
この本を読んで西さんに
「それでいいんやで!」と
背中を押してもらえてるような気になりました。
ありがとうございます。
この物語は、西加奈子さんの壮大な自己のネタバラシであり、力を注ぎ込んだ一冊であると思います。
この本を読むことができ、西加奈子さんという人に出会えた事を嬉しく思います。
「サラバ!」という魔法の言葉が、
私に向かって大きく手をひろげた何か、
または軽く微笑んで手をあげた何かから
大きな声と共に降り注いでくる気がします。
私も笑って、合言葉のように
「サラバ」と言いたいです。
とっても鮮やかで、爽やかな本です。
読んだことのない方は、一度読んでみてくださいね。
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