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短歌

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短歌連作「夏、待望論」

短歌連作「夏、待望論」

夏、それは俺が生まれて祖母が死に
愛が生まれて消えた季節だ

ヘインズの白ティ買った
ボックスの 赤supreme すぐに剥がした

また春が過ぎてすぐまた夏がくる
去年のほてりも冷めてないのに

ペイデイにハメを外した米兵と
腕相撲して折れた中指

ベトナムに行ってしまった米兵が
サインしたまま褪せたドル札

アメスピの火はもう消えた
アメリカの火はまだ灯るフェンス越し夏

島唄をくちずさむとき

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三月自選短歌「春はここです」

三月自選短歌「春はここです」

くちびるに紅 まぶたには青
爪に花を咲かせて春はここです

洋服を脱ぎ捨てるように名言を
脱ぎ捨てていく着飾っていく

ニセモノは大抵キラキラまぶしくて
君の狡さも愛してくれる

手放したから手に入れる手のひらに
おさまるものは限られている

結末を選んだ順に春がくる。
別々に咲く花なのでしょう

振り切って駆け抜けて春とめないで、
もっと遠くの違う私へ

こんなはずじゃなかったはずのその先に

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短歌連作七首「卒業のうた」

短歌連作七首「卒業のうた」

もう少しあともう少し夢の中。
僕ら春待つ息吹のように

卒業の歌はいくつもあるけれど。
校歌はひとつしかないんだね

マーチングバンドのように肩並べ
踏み出したらもう、それぞれの春

君が君のやさしさで苦しまぬように、
君の味方でいたい春です

島を出ていく君たちがこの島の
宝なんだよ「行ってらっしゃい」

この曲を教えてくれた君の声
ばかりで再生されてる曲だ

大丈夫、それでも日々は続くから。

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短歌連作七首「サマー・ソルジャー」

短歌連作七首「サマー・ソルジャー」

カーラジオから響くサニーデイ・サービス
雨を弾いて窓に七色

焦げついた気持ち火照(ほて)った魂に
生温い風、君に会いたい

そっちはどう?って聞かずとも
知ってる君は君のまんまだ

炭酸のペットボトルを開けるとき
弾け飛ぶ泡くらいの青春

僕たちはサマー・ソルジャー
あの夏の心はいまも火照ったままさ

空はどこからどこまでが空色で
僕らいつまで若者なんだ

夏がくる。にはまだ早く春雨の
ペトリコ

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二〇二四年新春短歌 四首

二〇二四年新春短歌 四首

新年、あけましておめでとうございます。

被災、事故、事件。この国で、私たちの近くでも様々なことが起きています。どうか、皆様が穏やかに眠れる日が一日も早く訪れますように。

年明けからの連日の現象を目の当たりにして、
自分にできることなど、たかが知れているし、物品や金銭での支援など限界はあるので。短歌を詠みます。いまの私にできることはこれくらいです。

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【二〇二四新春 短歌 四首】

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今年の短歌2023

今年の短歌2023

大晦日ですね。
一年が早い、なんてのは毎年思うことですが。

今年の九月頃、かな。ふと、短歌を詠みはじめました。書くことで、日常に色を取り戻した。と言うと大袈裟に聞こえますが、事実、短歌を通じて自分と向き合う、内なる自分や対世界と会話している感覚になれました。

どんな仕事、環境でもそうですが、ストレスというものはあって。ときに自分自身と向き合う時間、休む時は休むことがとても大切なのに。去年から今

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自選短歌「深海の夢」

自選短歌「深海の夢」

君といた記憶に潜る深海で
溺れぬように泳がぬように

毎日が漂うだけの夜の海
夢の波間に星を仰いで

波風にさらされたのは息継ぎを
諦めらきれず手を伸ばすから

月明かり滲む海原に海月(くらげ)が
ゆらりゆれてるきらりとひかり

立ちどまり動けないまま若さだけ
絡めとられる浦島太郎

シーラカンス「本当」のこと
知り得たかい 心の海底遺跡で君は

ゆるやかに呼吸を止めておだやかに
泡(あぶく)とな

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自選短歌「はないちもんめ」

自選短歌「はないちもんめ」

みんな寝ている教室の窓辺から
見る夏雲とプールの匂い

ベランダに閉じ込められて笑ってる
十四の俺のあだ名〈スマイル〉

長過ぎた変声期まだ覚えてる
声にならない吾の悲鳴を

遊戯王カードだったら強いのに
俺のターンが来ないババ抜き

担任が仲良くしろと皆に言う
吾だけいないホームルームで

軟骨のピアスもパーマ金髪も
中二の俺を守るシールド

夏休み明けに刈られて丸坊主
ピアスの痕がやけにまぶし

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自選短歌・其の四 「月と蛇」

自選短歌・其の四 「月と蛇」

秋雨にけぶる十月胸中に君の面影探す新宿

背に咲いた百合のタトゥーに口付けを
今はどいつに愛でられている

憧れたヒーローよりも得意気に
仮面を被り生きてる日々だ

傷付かず傷付けぬようバランスを
取ろうとしててすべて失う

ワンカップ小銭で酔えるおいちゃんの
人生訓で胃もたれもする

うまいこと言ってやろうと意気込んで
考えている顔の悍(おぞ)まさ

「しんどいわ」つぶやきかけてすぐ消して
吾の

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自選短歌・其の三 「黄昏をとめたい」

自選短歌・其の三 「黄昏をとめたい」

月曜の朝からぜんぶやめちまえ
それができたら誰も死なない

朝晩と中島みゆきで励まされ
ユーミン聴いて泣いてる馬鹿だ

「難しい問題ですね」そうですね
予定調和が居心地いいね

チラシだけやたら過剰な映画見て
B級の意味噛み締めている

「ショーシャンクの空に」を見てから思うこと
ビールの美味さはロケーションだと

西洋人のフリした東洋人たちが
大口開けてチップをねだる

「正解」があちらこちらに

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自選短歌「アイラブユーを」

自選短歌「アイラブユーを」

東京は雨雲かかる中秋の月を濁して夜は深まる

ホッピーとハッピーが似てると笑う
君と飲んでる吾はハッピー

君のこと知ってるようで知らなくて
泣いてる君には月見だいふく

お互いの名前を足してキープした
ボトルのようにすぐにからっぽ

直感が冴える悲しみ夜の淵
届け届くな我がテレパシー

明日には変われるような気がしても
眠ずに迎えた同じような朝

似合うよと貴方が褒めたイヤリング
枕の下にひとつ

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自選短歌「あまりにも夏」

自選短歌「あまりにも夏」

空の青 海の蒼さに南風(ぱいかじ)は
僕の青さを撫でて吹きゆく

プリズムに抱かれて散る夏の午後
クリームソーダの泡(あぶく)のように

二人して飲んだオリオンビールから
君に見せたいブルーが香る

指笛に呼ばれるように手をかざし
潮風(うすかじ)撫でるエイサーの夜

中華街、キンパイビールに歓喜した
恋は夏色まるで台湾

出会う前からの約束 
ジャームッシュ映画で恋の付箋回収

煙に巻く 浮気心

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