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自選短歌「あまりにも夏」

空の青 海の蒼さに南風(ぱいかじ)は
僕の青さを撫でて吹きゆく

プリズムに抱かれて散る夏の午後
クリームソーダの泡(あぶく)のように

二人して飲んだオリオンビールから
君に見せたいブルーが香る

指笛に呼ばれるように手をかざし
潮風(うすかじ)撫でるエイサーの夜

中華街、キンパイビールに歓喜した
恋は夏色まるで台湾

出会う前からの約束 
ジャームッシュ映画で恋の付箋回収

煙に巻く 浮気心は癖になる
夏はメンソール吸いたくなるの

ハイライト、ピース、マルメン、ウィンストン、
セッター、アメスピ、元彼の香

夕立を避けて並んで雨宿り
二人残して夏は過ぎゆく

履き込んだジーンズのよう人生は
褪せて破れてわたしの一部

河川敷、花火に浮かれる連中の
隣で交通整理をしてた

「ドラマよりドラマティックな人生を」
聞いてなかった我も脇役

なんかもうぜんぶがぜんぶ違ってて
軽率に消えたくもなる夏

あゝコーラ 泡となって弾けては
気の抜けた夢ぜんぶ呑み干す

悲しみを痛みをそれと知るまでに
あと何度夏、あまりにも夏

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