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#読書感想文
『ウィトゲンシュタインの愛人』 デイヴィッド・マークソン
謎めいた題名の本書は、一人の女性がタイプライターで書き綴る手記、という体裁の小説だ。
何が起きたのかは明かされないが、世界から人間と動物が消滅し、この女性は、唯一の生き残りのようである。
最初は他の生き残りを探し、やがて諦め、何年もただ一人世界中を移動しながら生きてきた彼女が、その孤独な移動生活や、事が起こるより前の生活について、と同時に、ランダムに頭の中に浮かんでくる様々な文化的知識を正誤ない
『壁の向こうへ続く道』 シャーリイ・ジャクスン
ごく平凡に見える世界が、近寄ってよく見てみたら、とんでもなく異常な世界だった。
そんな、「ほんとは怖い普通の世界」を描いて異彩を放つ、じんわりホラーの旗手シャーリイ・ジャクスンの長編小説。
長編小説、しかも群像劇ということで、シンプルな構成の短編小説が多いジャクスンにしては珍しいタイプの作品だ。
時は1930年台。カリフォルニア州郊外の小規模な住宅地が物語の舞台であり、そこに住む人々が登場人物で