Cotyledon

Cotyledon(コチレドン)と読みます。 猫と本とチョコレートが好きです。

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Cotyledon(コチレドン)と読みます。 猫と本とチョコレートが好きです。

記事一覧

階段に腰掛けて

 小学生前に、私が住んでいた家はとても古かった。トイレは汲み取り式だし、家の中には土間があった。台所(キッチンと言えるようなものではなく…)も土間にあり、居間に…

Cotyledon
4時間前
9

熱と桃缶

 小学生の頃、私はやせっぽちで食も細く、偏食だった。それにもかかわらず、風邪もほとんどひかないし、熱も出さない元気な子どもだった。それでも、時々熱を出して学校を…

Cotyledon
9日前
35

このところ、ずっと不調で気分がすっきりしなかった。休みになると、ついベッドで読書して昼寝して…ということばかり。今日は平日の仕事休み。思い切って、1人で出かけた。きれいな景色を見て、あー、これが必要だったんだと思った。
夜は、大好きなそら豆を塩茹でして食べた。ビールが欲しい。

Cotyledon
13日前
27

分かち合う

 息子がまだ小さかった頃のこと。保育園から帰った息子は、 「オタガガムシの絵本をよんでもらった。」 と、保育園で読んでもらった絵本の話をはじめた。 オタガガムシ…

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2週間前
34

忌野清志郎さま

 あなたが旅立ってしまって、もう15年です。あなたの新しい歌が聴けなくなって、もうそんなにも経つのかと、改めて寂しさと驚きの気持ちです。  わたしがあなたの声を聞…

Cotyledon
2週間前
46

雨上がり

 子どもの頃、泥だんごを作るのが大好きだった。握るとぎゅっと硬くなる、泥だんごに向いている土がある。雨が上がり湿った土は作りやすかった。おにぎりみたいに、いや、…

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3週間前
35

白玉みたいに

 文章を書きたい気持ちはあって、でもなんだか頭の中がまとまらない。そんな感じだ。  このところ、自分の気持ちがトゲトゲしているのがわかる。疲れているんだろう。私…

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1か月前
28

大好きだよ

 先日、友人がこの世から旅立ってしまった。気持ちの整理ができず、感情がふわふわとしている。何かしているときはいいのだけれど、ふと空白になったとき、ブワッと感情の…

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1か月前
31

Sちゃんのこと

 何度かnoteに書いた私の友人(Sちゃんという)のことを書いてみたいと思った。私にとって、とてもとても大切な人だ。  Sちゃんと私は、幼稚園から高校までずっと一緒だ…

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1か月前
49

ピクミンと夜の散歩

 娘に誘われ、『Pikmin Bloom』というアプリを入れた。お散歩ゲームというのかしら、歩くとピクミンが育っていく。ピクミン、かわいいのだ。とても愛らしい。  今日は夜…

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1か月前
31

母のこと

 母のことは好きだし、尊敬している。けれど、今まで私が出会ってきた女性の中で、一番謎なのは母かもしれない。小さい頃は、それほど気にしていなかったが、自分が大きく…

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1か月前
28

春にまつわる思い出あれこれ

 春は好きだ。私の中での春の記憶は、子供の頃の記憶が一番濃い。大人になっても、車から春めいてきた景色を見るたびに、心が少し躍る。路肩に車を停めて、外に出たい衝動…

Cotyledon
1か月前
34

掃除の邪魔から火星まで

 食後、リビングに掃除機をかけていた。椅子に座ったままスマホをみて動かない娘が邪魔なので、 「ちょっと邪魔だからどいてよ。」 私が言うと、娘は椅子の上に立ち上が…

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2か月前
23

息子のホワイトデー

「ねえ母ちゃん、やっぱり手作りがいいかな?」  ホワイトデーの前、息子から相談があった。ホワイトデーのお返しは、手作りにするかどうかである。女子からもらってきた…

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2か月前
27

時々は真剣勝負で

 子どもたちが小学生の頃、わが家でオセロが流行ったときがあった。子どもたちが、私に勝負を挑んでくるたび、こちらも毎回本気で勝負に臨んでいた。手を抜いたことはなか…

Cotyledon
2か月前
26

I was born

 娘の高校の国語の教科書を読んでいた。 「I was born」  吉野弘さんの詩が目に入った。これは、私が高校1年生の時に教科書で読んで、いちばん印象に残っていた詩だ。…

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2か月前
28
階段に腰掛けて

階段に腰掛けて

 小学生前に、私が住んでいた家はとても古かった。トイレは汲み取り式だし、家の中には土間があった。台所(キッチンと言えるようなものではなく…)も土間にあり、居間に行くには、スリッパを履いて、土間を渡らなければいけなかった。とにかく、古い家だった。当時は、ネズミが出ていて、土間にはパチンと挟む金属の鼠取りを置いてあった。夜になると、天井裏をネズミが走る音がしたり、昼間には、裏口からヘビが入ってくること

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熱と桃缶

熱と桃缶

 小学生の頃、私はやせっぽちで食も細く、偏食だった。それにもかかわらず、風邪もほとんどひかないし、熱も出さない元気な子どもだった。それでも、時々熱を出して学校を休む時があった。そんな日の特別な思い出。

 思い出は断片的だ。それぞれが繋がっていたのか、それともまた違う時なのか。

 学校を休む日の朝は、心許ない。家の前の道路をワイワイ言いながら、小学生たちが登校していく。その波に乗れず、布団の中で

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このところ、ずっと不調で気分がすっきりしなかった。休みになると、ついベッドで読書して昼寝して…ということばかり。今日は平日の仕事休み。思い切って、1人で出かけた。きれいな景色を見て、あー、これが必要だったんだと思った。
夜は、大好きなそら豆を塩茹でして食べた。ビールが欲しい。

分かち合う

分かち合う

 息子がまだ小さかった頃のこと。保育園から帰った息子は、

「オタガガムシの絵本をよんでもらった。」

と、保育園で読んでもらった絵本の話をはじめた。

オタガガムシ…聞いたことのない虫の名前だ。なんだろうと思いながら、息子との会話を進めていくと、正体がわかった。

「オタマジャクシ」だった。

 オタマジャクシ→オタガガムシとなってしまったようだ。わからなくもない。かわいらしい間違いだ。オタマジ

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忌野清志郎さま

忌野清志郎さま

 あなたが旅立ってしまって、もう15年です。あなたの新しい歌が聴けなくなって、もうそんなにも経つのかと、改めて寂しさと驚きの気持ちです。
 わたしがあなたの声を聞いた、一番古くて鮮明な記憶は、中学生のころだったと思います。テレビで流れていたパパの歌です。リビングのテレビから流れる、のほほんとした曲調と歌詞に心奪われました。のんびりとした出だしから、ハイテンポになり、働くパパを讃える歌詞に胸が熱くな

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雨上がり

雨上がり

 子どもの頃、泥だんごを作るのが大好きだった。握るとぎゅっと硬くなる、泥だんごに向いている土がある。雨が上がり湿った土は作りやすかった。おにぎりみたいに、いや、おにぎりよりももっと力を入れて、ギュッギュッと握る。綺麗な丸い形になるように、少し手の中で転がしながら握っていく。形ができたら、さらに手の中でコロコロと転がして、まんまるにする。
 次は、まんまるになった泥だんごに、サラサラとした粒子の細か

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白玉みたいに

白玉みたいに

 文章を書きたい気持ちはあって、でもなんだか頭の中がまとまらない。そんな感じだ。

 このところ、自分の気持ちがトゲトゲしているのがわかる。疲れているんだろう。私のトゲトゲがなんとなく子どもたちにも伝染している気がする。ごめんね。子どもたちも新学期、環境の変化で疲れているはず。今ここで止めておかないと、と思うのだが、なかなかこれが難しい…。

 それでも、書き始めると少し気分が落ち着いてくる。不思

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大好きだよ

大好きだよ

 先日、友人がこの世から旅立ってしまった。気持ちの整理ができず、感情がふわふわとしている。何かしているときはいいのだけれど、ふと空白になったとき、ブワッと感情の波が押し寄せてくる。

 彼女との付き合いは、それほど長くはないけれど、大切に思っていた友人だ。子どもが小学生の頃、地区の子ども会の活動を通して知り合った。子どもの学年は違ったけれど、いつもにこにこ話しかけてくれる彼女に、わたしはほんわかと

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Sちゃんのこと

Sちゃんのこと

 何度かnoteに書いた私の友人(Sちゃんという)のことを書いてみたいと思った。私にとって、とてもとても大切な人だ。

 Sちゃんと私は、幼稚園から高校までずっと一緒だった。小学校の時は、何度か同じクラスになったこともある。中学校では同じ部活で、高校では3年間同じクラスだった。こうして書くと、幼い頃から、仲良しだったように思えるが、全く違う。Sちゃんと私が仲良くなったのは、高校に入ってからだ。仲が

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ピクミンと夜の散歩

ピクミンと夜の散歩

 娘に誘われ、『Pikmin Bloom』というアプリを入れた。お散歩ゲームというのかしら、歩くとピクミンが育っていく。ピクミン、かわいいのだ。とても愛らしい。

 今日は夜少しだけ、時間があった。天気も良かったので、なんとなく気持ちが良い。散歩に行こうかな、と思った。夜8時頃、スマホを持って家の周辺を歩くことにした。
 玄関から出ると、春の気配がした。春らしいにおいがする。いつのまにか虫の鳴く声

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母のこと

母のこと

 母のことは好きだし、尊敬している。けれど、今まで私が出会ってきた女性の中で、一番謎なのは母かもしれない。小さい頃は、それほど気にしていなかったが、自分が大きくなるにつれ、母のことがわからなくなった。何を思ったり、感じたりしているのか、わかりにくい。愛情は深い人だとは思う。私のことを心配したり、大切に思ってくれているのはわかる。でも、母のことがわからない。

 うちは商売をしていたので、母は一見人

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春にまつわる思い出あれこれ

春にまつわる思い出あれこれ

 春は好きだ。私の中での春の記憶は、子供の頃の記憶が一番濃い。大人になっても、車から春めいてきた景色を見るたびに、心が少し躍る。路肩に車を停めて、外に出たい衝動に駆られる。

①おままごと
 幼い頃、おままごとが好きだった。母からもらった赤い小さなトランクに、いらなくなった食器を詰めたものが、私のおままごとセットだった。私の家の裏には、空き地や畑があったので、そこから春の草花を摘んできて、お皿に並

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掃除の邪魔から火星まで

掃除の邪魔から火星まで

 食後、リビングに掃除機をかけていた。椅子に座ったままスマホをみて動かない娘が邪魔なので、

「ちょっと邪魔だからどいてよ。」

私が言うと、娘は椅子の上に立ち上がり、私を見おろしている。そうじゃない、椅子からどいてほしいのに。足元は掃除機かけられるけど、そういうことじゃないんだよ、と伝えると、

「そういう人が宇宙に行くんだからね!」

と、訳のわからない返答。人にない発想っていうのが大事なんだ

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息子のホワイトデー

息子のホワイトデー

「ねえ母ちゃん、やっぱり手作りがいいかな?」

 ホワイトデーの前、息子から相談があった。ホワイトデーのお返しは、手作りにするかどうかである。女子からもらってきた様子はない。返すとしたら、ばあちゃん、ひいばあちゃん、お姉ちゃん、私である。ばあちゃんたちは、孫が作ってくれたとなると、とても喜ぶだろう。

「手作り、いいんじゃない?」

と、私は返事をした。

 ホワイトデーの前日の夜、息子はせっせと

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時々は真剣勝負で

時々は真剣勝負で

 子どもたちが小学生の頃、わが家でオセロが流行ったときがあった。子どもたちが、私に勝負を挑んでくるたび、こちらも毎回本気で勝負に臨んでいた。手を抜いたことはなかったと思う。小学生相手に大人げないかもしれないが、ほとんど私が勝っていた。それでも、子どもたちは何度でもチャレンジしてきた。

 オセロでは勝てる私だが、神経衰弱などは苦手だ。覚えられない。若い脳には勝つ気がしない。毎回負けるのは私だった。

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I was born

I was born

 娘の高校の国語の教科書を読んでいた。

「I was born」

 吉野弘さんの詩が目に入った。これは、私が高校1年生の時に教科書で読んで、いちばん印象に残っていた詩だ。高校生の時、何度も繰り返し読んだ。30年近くたったのに、まだ変わらず、ここにあった。

 当時16歳の私は、この詩を読んだ時、表現の仕方に驚くと共に、鳥肌が立つような感覚をおぼえた。授業もしたのだろうが、先生の解説は全く覚えて

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