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雨粒

 葉っぱについた水滴が好きだ。葉っぱの上で丸まって、キラキラとした水滴は宝石のようだ。子どもの頃は、どうにかあの形のまま家に持って帰れないかと思案していた。葉っぱからわたしの手に乗せた途端、水滴は崩れてしまい、さっきまでの宝石のような丸みも輝きも無くなってしまう。べちゃっとわたしの手に広がる、ただのお水になってしまう。葉っぱの上だからこそ、キラキラ、コロコロとなるのだ。


 小さい頃は、雨の日が好きだった。お気に入りの傘と長靴があった。白地に赤いラインが2本入ったシンプルな傘と、紺地にチロリアンテープで縁取りされた少しレトロな長靴だった。お気に入りの傘と長靴で、裏の空き地に行き、葉っぱに落ちた雨粒を見るのが楽しかったのを覚えている。クワズイモに落ちる雨粒が特にお気に入りだった。(サトイモの葉っぱに似た大きな葉っぱだ。)クワズイモに落ちた雨粒は、コロコロと玉になり、葉っぱの真ん中の窪みへと集まっていく。葉っぱの真ん中には、雨水が溜まり、キラキラとしている。表面張力で丸みを帯びて、オパールのようだった。ずっと見ていても飽きなかった。

 もうすぐ梅雨が明けそうだ。雨の時期も終わりに近い。大人になって、「雨いやだなあ。」と思っていたけれど、子どもの頃は好きだったのになあ。それでも、やっぱり葉っぱの上の雨粒を見ると、わくわくする気持ちが残っていることに安心する。わたしの中の子ども、まだちゃんといたんだね。

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