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2020年9月22日 10:06
拙句集「むずかしい平凡」が、このたび第23回日本自費出版文化賞詩歌部門で入賞いたしました。報告いたします。全体では、7部門があり、603点の応募。その中で、最終審査に進んだのが70点。詩歌部門は、81点の応募中、10点の最終審査。拙著はこの最終10点の中に入れてもらえたという次第。最後の部門賞と特別賞には及びませんでしたが、あまたの著作の中から最終審査まで行けたこと、大変感謝しておりま
2020年9月22日 09:53
句集「むずかしい平凡」自解その62。 しばらくお休みしていました自句自解。ぼちぼち再開します。 この句は、句集第一章「むずかしい平凡」の最後の一句。この章には、震災関係の句を入れるつもりはなかったのですが、つい入ってしまいました。次の章「春の牛」が震災句を中心にするつもりだったので、その雰囲気を出したかったのか、自分でも定かじゃないのですが、なんとなくこの句を置きたかったんですね、要する
2020年7月31日 10:21
句集「むずかしい平凡」自解その60。 この句の読み方をまずは文法的に。 「鳥は卵」「石ころは影」はそれぞれ「抱いて」にかかってゆく文法構造です。散文的に言えば、「鳥は卵を抱いていて、いっぽう石ころは影を抱いていて」というふうに、「抱いて」にふたつの部分が同時につながっている、そういう形です。 鳥は卵を抱いているし、石ころは影を抱いているし、うん、なんだか春だなあ。 そんな読みです
2020年7月31日 10:07
句集「むずかしい平凡」自解その59。 ちょっとした遊歩道を子どもと一緒に散歩していた時の光景。先を歩いていた息子が木の上のほうを指さす。鳥の巣があるみたいだ。 こちらからはよく見えない。 どこ? ここ、ここ。 子どもがこちらにやってくる。遊歩道は木漏れ日が揺れていて、その木漏れ日の中をやってくる。 あっ、と思う。子ども自体がもう木漏れ日そのもの。 その木漏れ日が私の手
2020年7月30日 20:05
句集「むずかしい平凡」自解その58。 東日本大震災、福島第一原発の事故で自主避難した妻子。 自主避難して二年目か三年目のころだろうか。 当初は生活の変化についてゆくのが精いっぱい。とにかく初めてのことばかりだった。少し慣れてきて、いくらか不安はあるものの、我々はなんとか生き延びてきたんだなという思いがわいてきた。 自分一人だけ早く目が覚めて、妻子はぐっすり寝入っている。妻子それぞ
2020年7月30日 19:51
句集「むずかしい平凡」自解その57。 遠足風景。 春の山にみんなで登って、おーい、ここがいい景色だから、ここで昼飯にしよう、なんて先生がけっこう張り切りっている。 みんなも、いいねえ、いい景色だ、などとちょっとしたいい気分。 さて、おべんとうを取り出して、おにぎりをぱくり。 すると、どこかからおならの音。あれ、このおならはあんなに張り切っていた先生のおなら。張り切っていた緊張
2020年7月29日 21:38
句集「むずかしい平凡」自解その56。 鳥の中で一番好きなものは、と聞かれたら「燕」って答えるでしょうね。 なぜといわれてもうまく答えられないけれど。 小さくても力強く、自由自在に飛ぶ姿。気がついたら好きな鳥になっていました。 中学のころ、自宅に巣を作った燕の卵を蛇が狙っていた。その燕も危険を感じ、近くの仲間を呼び寄せ、必死に蛇の気をそらそうとしていた。人間もも蛇を追い払ったりして
2020年7月29日 21:25
句集「むずかしい平凡」自解その55。 口語俳句ですね。最近は口語文語にこだわらず、できるだけ自由に俳句を作りたいと思うようになってきた。 基本的な型というのはたしかにあるし、それに従っていけば打率も上がる。でも、それだけではなかなか自分自身の深い部分を書き留めきれない、そんな思いも出てきて、つねに試行錯誤ですね。 これは即興的な句です。 最近、必要に迫られて書道に親しむようになっ
2020年7月28日 07:40
句集「むずかしい平凡」自解その54。 近所の小さなお菓子屋さんや八百屋さん、洋服屋さんなどが次から次に店を畳んでいる。郊外に大きなスーパーマーケットができてしまった影響でもあるし、そもそももう店を継ぐ人がいないという事情もあるかもしれない。 ただ、ここ数年どっと店を畳む傾向が強くなっているのは、やっぱり大震災の影響もあるのかなと思う。私の住む近辺は避難者がそのまま生活の拠点にしているケー
2020年7月26日 19:45
句集「むずかしい平凡」自解その51。 前回に引き続き「花辛夷」。 べつに鬱じゃないんだけれど、なんだか涙が出てきてしまうんだよなあ。なんでなんだろうな。空が青いからかな。辛夷の花が咲いているからなあ。 涙腺というのは年齢を重ねると緩んでくるそうですね。映画なんか見ていても、何でもないような場面で、ううっときて、涙腺というか、鼻の奥というか、そのあたりが湿ってくることがあります。
2020年7月25日 10:56
句集「むずかしい平凡」自解その50。 「辛夷」は「こぶし」と読みます。「花辛夷」とは「こぶしの花」のこと。気候もだんだんに暖かかくなり、梢にぽっと点るように咲き出す春の木の花。好きだなあ、この花。なんともいえない楚々としたたたずまい。しかし、きっぱりとした意思のようなものを、あの白さの中にしっかり抱えている。 この花を見ると、自分自身の中で、しっかりしなくちゃ、って思ってしまう。 「
2020年7月25日 10:36
句集「むずかしい平凡」自解その49。 愚息が小学校へ入学するころの作。 福島から山形県南部の町に自主避難して、そこで小学校へ入学することになったため、夜仕事を終え、車に乗り込み、そのまま避難地へ。 そのとき、私自身もそこそこ重い仕事を任されていたため、すぐには帰れない。職場を出たときにはもう暗くなっていた。気を付けて、しかし早く帰らなくては。 約一時間半かけて山道を抜け、峠を越え
2020年7月25日 07:19
句集「むずかしい平凡」自解その48。 卒業式の朝の光景。 これでも高校の先生などという仕事をしているので、毎年、卒業式というものを体験するわけです。だんだん慣れてきてしまい、感動というものもあんまり感じられなくなっているのが情けないんですけれどね。 それでも、これはこちらの単なる感受性の鈍麻だけでないものもあるように思います。 形式を重視しすぎる教育現場。卒業生より来賓のほうを大
2020年7月24日 13:45
句集「むずかしい平凡」自解その47。 この句集「むずかしい平凡」というタイトルになった一句ですね。 よく聞かれるのが、この句ってどういう意味ですか、という質問。意味といわれても困ってしまいますけれどねえ。 俳句の場合、作るときに「取り合わせ」という技法があるんですね。 たとえば、この句の場合、「フリージア」と「けっこうむずかしい平凡」と、直接的には関係ないような言葉が取り合わせら