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58 春はあけぼの家族にそれぞれの寝息

 句集「むずかしい平凡」自解その58。

 東日本大震災、福島第一原発の事故で自主避難した妻子。

 自主避難して二年目か三年目のころだろうか。

 当初は生活の変化についてゆくのが精いっぱい。とにかく初めてのことばかりだった。少し慣れてきて、いくらか不安はあるものの、我々はなんとか生き延びてきたんだなという思いがわいてきた。

 自分一人だけ早く目が覚めて、妻子はぐっすり寝入っている。妻子それぞれにかすかな寝息。

 自分の寝息は自分では聞こえない。けっこう大きないびきを立てているかもしれない。(たぶん立てている)

 それでもこうして家族が揃って朝を迎えることは幸せなことだと思いますね。この時期はこういう朝を迎えることは週に一度か二度しかなかったから。

 春はあけぼの。

 清少納言はよく言ったものだなあ、としみじみ。現代には現代の春のあけぼのがあっていいと思いますね。

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